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2007年01月08日

ドクターからの『毎月健康ニュース』2003年4月号

ヘルシーリビング


ドクタージャンスンから毎月届くニュースレター。
話題になっている医療ニュースからビタミン療法、ヘルシーレシピまで、幅広いトピックでお送りします。
ドクタージャンスンは、サプリメントだけでなく、食生活、運動、ストレス緩和の最新の情報から、みなさんがヘルシーなライフスタイルをご自分で築いていくことを、願っています。

2003年4月号高価な尿?

目次
読者の皆さま:医師が薬を出さない理由
高価な尿??
尿に含まれるサプリメント
Dr. Jに聞く:手術の時のサプリメント
最近のニュースから
食事と病気
カレー風味のポテト(卵添え)
参考文献

読者の皆さま:医師が薬を出さない理由

最近のウォールストリートジャーナルに、くすりを処方したがらない医師が増えている、という記事が載りました。処方薬もOTC(一般用医薬品)も、いいことが少ないし、リスクもあるし、抗生物質が効きにくくなってしまいかねないから、と。どうやら医師側の意向とは反して、患者はTVや雑誌で見聞きしているような治療を受けたいと考えているようです。でも、日常的な病気や特に幼児期の軽い病気に対して、患者の期待に反して医師があえてくすりを処方しないのには、それなりの理由があるのです。

この記事は、咳やうっ血、頭痛、便秘、感染症などの患者に対して、医師はくすり以外のものを出している、と指摘しています。代替医療に対する関心が高まっている中、現代医療のドクターたちがくすりを敬遠し始めているという報告は、うれしい驚きだったのですが、くすりの「代わり」になっているのが、痛み止め、うっ血除去薬、鎮咳薬などと読んで、がっかりしました。

他にもくすりの代わりとして、うっ血には「暖かいシャワーと充分な水分」、咳には「熱いお茶にレモンとハチミツ」、頭痛には「カフェインやチョコレートを食べるのを控える」、便秘には「食物繊維と水分をたっぷり」、感染症などには「しばらく様子を見る・・・」などが挙げられていました。決してどれも悪くはないのですが、充分ではありませんし(食物繊維と水分をとるというのは別として)、他にもたくさんある自然な治療方法をないがしろにしています。(感染症の多くはウィルス性ではありますが、「しばらく様子を見る」というのでは患者は納得しませんし、感染症に効く自然な治療方法を無視しています。)

自然な治療方法にはいろいろなものがあります。例えばN-アセチルシステイン(NAC)。これはうっ血に効きます。分泌物をさらさらにし、肺、耳、副鼻腔などの粘液を出しやすくします。また、ビタミンCは免疫力を助けますし、抗炎症作用もあります。エキナセア、ビタミンE、β-1,3グルカン、エルダーベリー・エキスなどはインフルエンザも含め、ウィルスと戦ってくれます。亜鉛トローチはウィルス性ののどの痛みに効くし、感染症を早く治す、ということは前にもレポートしましたね。

頭痛の時は、カフェインやチョコレートをやめるのが健全なアドバイスですが、それ以外にも食べ物のアレルギーやアルコールが偏頭痛の症状を引き起こしていることが考えられます。そして食事に含まれる砂糖も「共犯者」かもしれません。

リボフラビンのサプリメントや、フィーバーフューの標準化エキスは偏頭痛を防いでくれます。イチョウ葉や、5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)、ストレスマネジメント、バイオフィードバック(訳注:普段知ることができないからだ内部の状態を、機器などで検知し、その状態を意図的に変化できるようにして症状を改善させる方法。例として、肩こりや偏頭痛の原因の1つに慢性的な肩の筋肉の緊張がありますが、機器で筋肉の緊張を感知して、不必要な筋肉の緊張を避けられるようにします。)なども効果的です。

今まで積極的に推奨されていた高額なくすりや、アスピリンのように昔からある手ごろな値段のくすりの価値が見直されているのはいいことです。新しい薬というのは、効果がそれほどないことがよくありますし、同じ症状に対して働く古くからある安価な薬よりもいいということもほとんどありません。それに、よく効くナチュラルな治療薬があれば、くすりはほとんど必要ないのです。現代の治療方法の欠点に気づき始めたドクターたちが代替医療についてもっと調べるようになり、この分野の勉強をACAM(米国栄養療法振興学会)などのコースを通じて知っていただけるよう、願ってやみません。


高価な尿??

「栄養サプリメントを飲んでも意味がないし、お金もかかる。なんていったって高価なおしっこになるだけだ」。ビタミンなどの栄養サプリメントをとることに対するこのような批判は、実によく耳にします。科学的な見地から言えば、まったく意味のないコメントです。どういうことか説明しましょう。

このような発言の背景には、「ほんの少量しかからだが必要としていない栄養素のサプリメントをとっても、どうせほとんど排泄されるのだから、健康づくりに役立ったり、病気を予防し、治療するような効果は期待できない」という考えがあるのでしょう。考えが甘い、だけではすまされません。サプリメントの価値を記した医学文献を完全に無視しています。サプリメント反対派の偏った見方です。

確かに、サプリメントをたくさんとると、その一部は尿から排泄されます。また、ビタミンが全て血液に取り込まれるわけでもありません。でもだからといってとる意味がないということは決してないのです。栄養素の一部が排泄されてしまうこと自体はたいしたことではありません。栄養素がからだの中を通りながら何をするか(体内に取り込まれないならば、消化管までの道で何をするか)、なのです。

水を飲むことと比べて考えてみましょう。飲んだ水はすべて排泄されますね(そうでなければ身体は風船のように膨らんでしまいます)。尿からの排泄、腸からの排泄、汗、吐く息に含まれる蒸気としても排出されます。でも、排泄しているからといって水は飲む必要がないわけではありませんよね!

栄養素は、細胞の代謝、抗酸化作用、有害な化学物質の解毒と代謝に必要な物質として大切な働きをしているのです。細胞を通過しているだけかもしれませんが、通過しながら細胞を助けているのです。

ビタミンCがいい例です。一日200mg以上とれば、尿から排泄されるのは少しでしょう。

でも、だからといって必要量の上限が200mgというわけではないのです。ライナス・ポーリングは次のように解釈しています:

からだは、ビタミンCを腎臓に貯蔵するためにエネルギーを使います。ビタミンCが必要ないならば、エネルギーの無駄遣いです(そしてエネルギーの無駄な消費は、種の進化の衰退へと導いてしまいます)。200mg以上とると、一日の最低必要量を満たした、とからだは認識します。その後、一部が尿となって出て行ってしまっても、さほど重要ではありません。

つまりポーリングは、からだが必要としている最低限のビタミンC量は200mgであって、身体が活用できる最大量ではないと結論付けています。からだの中で消化できる上限ではなく。


尿に含まれるサプリメント

理論的な分析はさておき、200mg以上のビタミンCサプリメントが病気の予防や治療に効くとする研究はいくつも出ています。例えば、ビタミンC2000mgで、10代の若者の運動による喘息発作を防ぐことが示されています(20人の患者を対象とし、9人で症状が大幅に改善されています)。ビタミンCは、肺の内層の主要な抗酸化物質なのです。

同じくらいの量のビタミンCは、風邪をひきにくくしたり、病気にかかった時の症状を緩和することが示されています。研究では、1000mgをとった被験者の方が、プラセボをとった人よりも早く回復しています。

1977年に行われた試験では、毎週500mgのビタミンCをとり、風邪のひき始めに1500mgをとることで、病気の悪化が防げ、早く治ることが示されましたが、風邪をひく頻度までは影響が見られませんでした。この研究者たちは、症状を改善するにはそれほど多量のビタミンCを必要としないと言っています。彼らは、もっとたくさんとれば風邪をひきにくくし、さらに症状を緩和することまでは考えつかなったようです。

ビタミンB2(リボフラビン)もまたたくさんとると効果があるビタミンです。たとえ尿に排泄されても、です。偏頭痛もち55人を対象とした無作為の二盲検で、リボフラビンを一日400mg飲ませたところ、頭痛が大幅に減った、と報告されています。これだけの量をとると、B2はいくらか排泄されます(尿が明るい黄色になります)。それでも治療効果があるのです。

排泄されてしまう栄養素でも、腎臓や膀胱、尿道を通りながら価値ある働きをしてくれているのです。例えばマグネシウムやビタミンB6は腎臓結石を防ぎますし、ビタミンCは炎症、感染、ガンなどを防ぎます。ある調査で、高用量のビタミンA、C、E、そしてB6は、膀胱がんの再発率を半分に低下させる、としています。

サプリメントをとっていた人は、平均生存期間が倍だったのです。

偏った、非科学的なコメントは気にしないで、とるべき栄養素をとりましょう。「高価な尿」は身体にいいのです!


Dr. Jに聞く:手術の時のサプリメント

Q: 肝臓のためにずっとシリマリンをとり続けても大丈夫ですか?それとも他のハーブのように、時々休みを入れる必要がありますか?(EJN、イギリス、e-メール)

A: シリマリンは、ミルクシスルの抽出物で、肝臓がアルコールでダメージを受けたり、肝炎をわずらったり、あるいは有害な化学物質を取り込んでしまった場合に、肝臓を保護する働きをします。数種類の有効な抗酸化フラボノイドを含んでおり、サプリメントでとることでダメージを受けた肝臓の細胞が再生するのを助けるのです。(病気のときに肝臓にダメージがあるのは、酸化されやすい状態にあるためだと考えられます。)

シリマリンはまた、有害物質から白血球(リンパ球)を守り、白血球をたくさんつくることで、免疫機能も助けます。肝硬変の患者は免疫機能に異常があることも考えられますので、免疫力を改善するというシリマリンの働きは、作用機序のひとつとして挙げられます。また、シリマリンを塗布することでも抗酸化作用をもつようで、UVや酸化によるダメージから守ってくれるという働きをします(ビタミンCやE、セレニウム、亜鉛その他の抗酸化物質も肌に塗っても効果があります)。

シリマリンを日常的に使うことで副作用があるとか、利かなくなるというような論文は、私は見たことがありません。たとえ長期間、常用してもです。むしろ、肝炎の方、肝硬変の方、あるいは有害物質にさらされている方などは、シリマリンを取り続けたほうがいいくらいです。ミルクシスル標準化エキス(シリマリンエキス80%配合)の一般的な用量は、500~1000mgです。


Q: 手術を受けることになっています。どのようなサプリメントをとればいいでしょうか。(JM、レキシントン、MA、E-メール)

A: 外傷や手術から回復する上で効果的な栄養素について先月号でお話しました。それに対して、手術前と後にどのようなサプリメントをどれだけとればいいか具体的に示してもらいたい、という読者の方からのお便りがいくつか寄せられました。(ハーブも効きますよ)

手術の7~10日前からイチョウ葉、ニンニク、そして400IU以上のビタミンEはとらないようにしましょう。抗血小板作用がありますので、手術中の出血量を多くしてしまいます。手術後に控えていたビタミンE量を元に戻しましょう。

治癒を促すために何が効くかは手術の内容や手術した臓器によって多少変わりますが、手術前1週間ほどはビタミンCを一日8~10グラムに増やし、混合バイオフラボノイド2~3グラム加えます。L-アルギニンとL-グルタミン(それぞれ4~8グラム)は、組織の修復や治癒を促します。手術後数週間続けましょう。大きな手術だった場合はもう少し長くとり続けます。

コエンザイム(補酵素)Q10も抗酸化作用と免疫力を助ける作用があります。たいてい200mgで充分ですが、手術にもよります。クルクミン(600~1200mg)とシリマリン(500mg)は抗酸化作用・抗炎症作用をもっています(シリマリンは肝臓で麻酔を解毒する働きがあります)。ブロメライン(パイナップルから取れる酵素。10,000~20,000MCU*)は手術前と後にとると、組織の修復を早めます。

マルチビタミンに亜鉛(30~50mg)、セレニウム(200mcg)、マンガン(10~20mg)その他の微量元素が含まれていることを確認してください。抗酸化補因子として、また免疫力や組織の修復のために大切です。

*MCU:milk clotting unit、牛乳を凝固させるのに、どれだけの酵素が必要かで、ブロメラインの効力をあらわす単位。

大きな手術(例えば心臓)の前や後には、コエンザイムQ10を400~800mgに増やしたり、L-カルニチン(3~6グラム)、N-アセチルシステイン(1~2グラム)、リポ酸(300~600mg)、プロアントシアニジン(100~200mg)など増やしてください。どれも心臓や脳を保護してくれます。また、D-リボース(10~30グラム)という、小さな糖分子も、心筋の手術には重要です。


最近のニュースから

・最新の研究は、更年期の女性でタバコを吸う、あるいは肥満(体格指数(BMI)が30以上)の人は、中度ないしは重症のホットフラッシュ(ほてり)がある、と指摘しています。普通のBMI(25以下)で、タバコを吸わない人より症状が重い、ということです(Whiteman MK, et al., Smoking, body mass, and hot flashes in midlife women. Obstet Gynecol 2003 Feb;101(2):264-72.)。一度もタバコを吸ったことのない女性がホットフラッシュを経験するリスクは、喫煙している女性の半分程度だったとしています。肥満についても似たような統計が出ています。BMI値が高いと、ホットフラッシュのリスクは倍増します。サプリメントをとることで、ホットフラッシュを軽減することができますし、天然由来のホルモンが必要な女性もいますが、減量して、タバコをやめることは、リスクもありませんし、安上がり、それでいて大きな効果が期待できますよ。


食事と病気

・哀しいことに、フルーツや野菜を、推奨される一日500~900g食べるというアメリカ人は、わずか16%にとどまります。ミネソタ州で行われた調査(DeBoer SW, et al., Dietary intake of fruits, vegetables, and fat in Olmsted County, Minnesota. Mayo Clin Proc 2003 Feb;78(2):161-6.)は、圧倒的多数の人が脂肪を取りすぎ、ヘルシーなフルーツや野菜がまったく足りないことを示しています。教育をすること-特にいい手本を示すことが、人々の健康を促すために医学界が役に立てるひとつの方法です。

・野菜、フルーツ、全粒粉、豆類、種実類、フラックスシードオイル、オリーブオイルなどのフィトケミカルの重要性を説いた最近の報告を読むと、上で紹介した統計はとても重要だと改めて感じます。フィトケミカルはからだにいい複合物で、心臓病やガンなどを予防する重要な働きをします。血液が固まるのを防ぎますし、炎症も予防します。そして他の病気にもかかりにくくしてくれるのです。


カレー風味のポテト(卵添え)

カレー味の食事は大好きです。香りもいいですし、健康にもいい。手早くできて、食事にもスナックにもなるものをご紹介しましょう。

① ポテトを食べたいだけゆでるか、焼くか、電子レンジでチンします。

② 真ん中に十文字の切込みを入れ、フラックスシードオイルまたはオリーブオイルを切り込みに流し入れます。

③ カレー粉とタイムで香り付けをします。(私の場合、たっくさん使います。カイエンペッパーも私は加えます)

④ 刻んだコリアンダーやその他のハーブをお好みで上にふりかけましょう。(フレッシュなディルは最高ですよ)

スライスしたトマトやキュウリとあわせて食べてもいいですし、有機卵の落とし卵(放し飼いの鶏の卵というだけでなく、「有機」です。放し飼いといいながら、一日10分しか太陽に当たっていない場合もありますから!)をポテトの上に乗せて、一緒に混ぜで食べてもおいしいですよ。


参考文献

医師が薬を出さない理由
・Reichenberger F, Tamm M, N-acetylcystein in the therapy of chronic bronchitis. Pneumologie 2002 Dec;56(12):793-7.

・Titus F, et al., 5-Hydroxytryptophan...in the prophylaxis of migraine. Randomized clinical trial. Eur Neurol 1986;25(5):327-9.

高価な尿?
・Cohen HA, et al., Blocking effect of vitamin C in exercise-induced asthma. Arch Pediatr Adolesc Med 1997 Apr;151(4):367-70.
M
・ohsenin V, et al., Effect of ascorbic acid...in asthmatic subjects. Am Rev Respir Dis 1983 Feb;127(2):143-7.

・Anah CO, et al., High dose ascorbic acid in Nigerian asthmatics. Trop Geogr Med 1980 Jun;32(2):132-7.

・Van Straten M, Josling P, Preventing the common cold with a vitamin C supplement: ... Adv Ther 2002 May-Jun;19(3):151-9.

・Anderson TW, et al., Winter illness and vitamin C: the effect of relatively low doses. Can Med Assoc J 1975 Apr 5;112(7):823-6.

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・Lamm DL, et al., Megadose vitamins in bladder cancer. J Urol 1994 Jan;151(1):21-6.

・Curhan GC, Intake of vitamins B6 and C and the risk of kidney stones in women. J Am Soc Nephrol 1999 Apr;10(4):840-5.

・Johansson G, et al., Effects of magnesium hydroxide in renal stone disease. J Am Coll Nutr 1982;1(2):179-85.

手術の時のサプリメント
・Feher J,et al., Oxidative stress in the liver and biliary tract diseases. Scand J Gastroenterol Suppl 1998;228:38-46.

・Lang I, et al., Hepatoprotective and immunomodulatory effects of antioxidant therapy. Acta Med Hung 1988;45(3-4):287-95.

・Pinnell SR, Cutaneous photodamage, oxidative stress, and topical antioxidant protection. J Am Acad Dermatol 2003 Jan;48(1):1-19.

・Pauly DF, Pepine CJ, D-Ribose as a supplement for cardiac energy metabolism. J Cardiovasc Pharmacol Ther 2000 Oct;5(4):249-58.

・Williams JZ, et al., Effect of a specialized amino acid mixture... Ann Surg 2002 Sep;236(3):369-74; discussion 374-5.


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