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2016年03月09日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2016年2月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2016年2月号必須脂肪酸とGLA

今月の話題
◆必須脂肪酸とGLA
◆アトピー性皮膚炎に役立つGLA
◆EPA・DHAとGLAがにきび患者にもたらす効果
◆ドライアイ症候群に対するEPA・DHAとGLAの効果
◆背痛と神経障害に対するGLA+ALAの効果
◆葉野菜は緑内障のリスクを下げる






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必須脂肪酸とGLA

食事性脂肪には、飽和脂肪と不飽和脂肪があります。不飽和脂肪は概して液状(油)であり、飽和脂肪は固形です。一価不飽和脂肪(オリーブオイルなど)は、保管温度によって液状の場合も固形の場合もあります。人工的に飽和させた脂肪(半硬化植物油)には、自然に発生することのない「トランス」脂肪という有害物質が含まれています。

一部の脂肪は、健康に不可欠でありながら体内では作られないため、食事で摂る必要があります。そうした脂肪は、髪や皮膚の生育を促し、骨の健康維持に重要であり、代謝をコントロールし、生殖機能を支えます。ほとんどの人は脂肪の摂り過ぎですが、カロリーの過剰摂取による健康リスクに加え、残念なことに、こうした脂肪は高度に加工されていて十分な量の必須脂肪酸が含まれていないことが多いのです。

食事性の必須脂肪には、オメガ3とオメガ6と呼ばれるものがあり、これは多価不飽和脂肪酸(PUFA)としても知られています。亜麻の実、クルミ、大豆には、オメガ3の油である「α-リノレン酸」(ALA)が豊富に含まれています。ALAは、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の前駆体です。EPAとDHAは、イワシやサケなど、脂分の多い魚に自然に含まれていますが、人間の体内でも、酵素が活発に働いていればALAから作られます。こうしたオメガ3の副生成物は、炎症の軽減をもたらす可能性があります。

オメガ6脂肪酸(シス-リノレン酸、cLA)は、トウモロコシや大豆のほか、多くのナッツ類と種子類(亜麻、ヒマワリ、ゴマの実など)に含まれています。この場合も、市販の油の多くは高度に加工されていて、栄養価が低下しています。cLAは、体内でγ-リノレン酸(GLA)に変換されます。この変換プロセスは、(EPAやDHAの変換と同じく)酵素の状態に左右されますが、酵素の活性は、加齢や疾患、栄養欠乏などの状態によって低下することがあります。そうすると、上記の物質(EPA、DHA、GLA)はすべて生成量が低下し、こうした物質によって作られる調節分子の生成量も低下します。

GLAは、抗炎症作用のあるプロスタグランジン(PGE1など)の前駆体であり、そのサプリメント摂取による特定の効果を示した以前の研究結果のいくつかが、最近行われた研究で裏付けられました。GLAは、月見草オイル、ボラージシードオイル、ブラックカラントシードオイルに含まれています。こうしたオイルはすべて、サプリメントとして入手でき、慢性炎症、湿疹、ドライアイ症候群、喘息、糖尿病および関節炎の治療と予防に役立つ可能性があります。慢性炎症そのものは、アテローム性動脈硬化症、認知症、糖尿病、パーキンソン病、ガンなどの疾患を引き起こす一因となる疑いがあります。

GLAサプリメントの抗炎症作用は、関節リウマチ、乾癬および湿疹の予防と治療に役立ちます。また、関連効果として、血管を拡張して、血行を良くし、血小板の粘着を減らすのに役立ちます(そのためにアスピリンなどの薬を使っている人もいます)。GLAはまた、糖尿病患者の神経伝導に改善をもたらし、感覚異常(しびれやうずき)を軽減する可能性もあります。(Kapoor R, Huang YS, Gamma linolenic acid: an antiinflammatory omega-6 fatty acid. Curr Pharm Biotechnol. 2006 Dec;7(6):531-4.) GLAのサプリメントが喘息と関節リウマチにもたらす効果については、以前の研究ですでに示されています。

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アトピー性皮膚炎に役立つGLA

月見草オイルのサプリメントでは、500 mgのカプセル1個に約40 mgのGLAが含まれています。アトピー性皮膚炎(別名イクジーマ)に関するある研究では、21人の被験者に対し、4,000~6,000 mgの月見草オイルという形で320~480 mg のGLAを与える処置を12週間続けました。被験者の症状の評価は、試験の開始時点、ならびに4週後と12週後の時点で、SCORADと呼ばれる評価スケールを用いて行われました。また、この研究では、GLAと、その代謝産物の一つであるDGLAの血漿中濃度も測定しました。

4週後と12週後のいずれの時点でも、血漿中のGLA値とDGLA値が増えていました。この2つの値は、症状スコアの有意な低下と相関していました。対照グループがなかったため、これは試験的研究に過ぎませんでしたが、以前に発見されたものとよく似た結果が得られました(それを初めて知ったのは1982年でした)。しかし、すべての研究がこうした結果を裏付けているわけではありません。GLAに対する反応が人によって異なるとも考えられ、これは各研究結果にばらつきがあることの説明となります。皮膚細胞を含め、細胞膜の健康維持には必須脂肪酸が必要です。(Simon D, et al., Gamma-linolenic acid levels correlate with clinical efficacy of evening primrose oil in patients with atopic dermatitis. Adv Ther. 2014 Feb;31(2):180-8.)

実践的ガイドライン

GLAのサプリメントは、何由来であれ有益であり、とくに、種々の慢性疾患がある人に役立ちます。必須脂肪酸が欠乏していると、アトピー性皮膚炎の症状を繰り返します。私は、1日当たり240~360 mgのGLAを摂るよう勧めており、これはボラージオイルのサプリメントから摂るのが最も一般的です。ボラージオイルは月見草オイルよりGLAを高濃度で含んでいるため、月見草オイルのサプリメント6カプセル分の量を1カプセルで摂ることができます。

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EPA・DHAとGLAがにきび患者にもたらす効果

韓国の研究グループが立案した研究で、EPAとDHAという組み合わせやGLAがにきび治療にもたらす効果を調べたものがあります。この研究では、軽度~中程度の尋常性座瘡(にきび)がある患者45人を、オメガ3脂肪酸(EPAとDHAの組み合わせ2,000 mg)を摂るグループ、γ-リノレン酸(GLA)(400 mgのGLAを含むボラージオイル)を摂るグループ、もしくは対照グループのいずれかに無作為に分け、10週間追跡しました。

10週後の時点で、EPA・DHAのグループとGLAのグループの両方で、炎症性ならびに非炎症性のにきび病変に有意な減少が見られました。患者自身による改善評価でも、対照グループとの比較で、類似した結果が見られました。こうした主観的評価だけでなく、細胞染色による組織検査でも、炎症の軽減ならびに炎症性化学物質の減少が見られました。どの被験者にも副作用は見られませんでした。(Jung JY, et al., Effect of dietary supplementation with omega-3 fatty acid and gamma-linolenic acid on acne vulgaris: a randomised, double-blind, controlled trial. Acta Derm Venereol. 2014 Sep;94(5):521-5.)

実践的ガイドライン

炎症性疾患には、GLAならびにEPA・DHAを、一般的に上記の用量で摂ると役立つと思われます。動物性食品を摂りたくない人は、亜麻仁油やクルミからもオメガ3の油を多少は摂ることができますが、EPA・DHAへの変換が十分になされず望ましい効果が得られない場合もあるのでご注意ください。にきびは、とくに若者には悩ましいものですが、大抵の場合、不十分な栄養摂取が一因となっています。1999年に初めて日本を訪れたとき、にきびやにきび痕がある人をほとんど見かけませんでした。その後の訪日時、とくにその10年後の最終訪日時には、ファストフードチェーンの劇的な拡大とともに、にきび率の増加を目の当たりにしました。

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ドライアイ症候群に対するEPA・DHAとGLAの効果

GLAにEPAとDHAを組み合わせた別の研究で、ドライアイ症候群(乾性角結膜炎)である閉経後の患者への効果を示したものがあります。ドライアイは、加齢や、一部の炎症性自己免疫状態によっても見られます。この研究では、導涙機能障害がある患者38人を、GLAとEPA・DHAの組み合わせを与えるグループ(サプリメントグループ)と、プラセボを与えるグループのいずれかに無作為に分け、6カ月追跡しました。試験の開始時における被験者の評価では、眼表面疾患指数(OSDI)、(涙の生成量を調べる)シルマー検査、角膜の平滑度検査など、いくつかの検査を行いました。そして4週後、12週後、24週後に再評価を行いました。

24週後の時点で、サプリメントグループには、眼表面疾患指数のスコアに改善(低下)が見られ、プラセボグループのスコアが34であったのに対し、21となっていました。また、表面の非対称性指数も、サプリメントグループのほうが有意に低くなっていました(0.37対0.51)。いずれの処置によっても、涙の生成量と、角膜・結膜の染色検査結果に対する影響は見られませんでした。(Sheppard JD Jr, et al., Long-term supplementation with n-6 and n-3 PUFAs improves moderate-to-severe keratoconjunctivitis sicca: a randomized double-blind clinical trial. Cornea. 2013 Oct;32(10):1297-304.)

実践的ガイドライン

ドライアイは、自己免疫疾患であるシェーグレン症候群という病気に見られるものですが、独立した問題としても見られます。上記の必須脂肪酸のサプリメントは、その抗炎症作用によって症状軽減に役立つことがあります。GLAは、プロスタグランジンに作用することから、免疫機能にも役立ちます。繰り返しになりますが、GLAの通常用量は1日当たり240~360 mgで、オメガ3脂肪酸の一般的な用量は1日1,000~2,000 mgです。

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背痛と神経障害に対するGLA+ALAの効果

椎間板が壊れて脊髄神経が圧迫されると、背痛や神経障害を生じることがあります。突発的な事故の後に、炎症が慢性症候群に至り、障害を引き起こすこともあります。ある研究で、203人の患者について、その全員に身体のリハビリテーションプログラムを施し、半数の人にはそれに加えて600 mgのα-リノレン酸(ALA)と360 mgのγ-リノレン酸(GLA)を経口投与する試験が行われました。被験者の評価は、試験の開始時、ならびに2週後、4週後、6週後の時点で行われました。

評価にあたっては、腰痛障害調査表、アバディーン腰痛スケール、生活の質に関する調査表(SF36)、その他の障害調査票が用いられました。また、被験者の感覚異常(しびれとうずき)、刺痛、灼熱痛のレベル評価もなされました。試験の終了時点では、特定の測定尺度についてだけでなく、症状にも有意な改善が見られました。リハビリテーションプログラムのみの場合よりも、GLA+ALAの投与を組み合わせた療法のほうが、有意な差をもって良い結果をもたらしました。(Ranieri M, et al., The use of alpha-lipoic acid (ALA), gamma linolenic acid (GLA) and rehabilitation in the treatment of back pain: effect on health-related quality of life. Int J Immunopathol Pharmacol. 2009 Jul-Sep;22(3 Suppl):45-50.)

実践的ガイドライン

α-リポ酸は、糖尿病性末梢神経障害に役立つことがわかっており、その場合の用量は通常、1日当たり1,000~1,200 mgです。その療法にGLAを加えれば、神経伝達速度を改善し、抗炎症物質として作用することにより、役立つ可能性があります。GLAの通常用量は1日当たり240~480 mgです。

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葉野菜は緑内障のリスクを下げる

あらゆる野菜をたくさん食べることは、とても健康に良く、新しいエビデンスによると、食事で葉野菜を多く摂ると、他の効果に加えて、緑内障のリスク低下をもたらす可能性があります。緑内障は、目の中の圧力が高い状態であり、視神経の損傷や視力の喪失、とくに周辺視野の欠損につながります。これは一般に、加齢に伴って見られますが、初期の段階では無症状のため、視力の喪失が生じる前に早期発見するためには、定期的に目の検査を受け、眼圧を調べてもらう必要があります。治療では通常、目薬という形で薬剤の局所投与を行いますが、この薬剤は副作用をもたらすことがあります。他の多くの病気と同様、予防のほうが望ましいのです。

一酸化窒素は、血液内および組織内にある化学物質で、血管の弛緩を助けます。これは、動脈の内側を覆う内皮細胞によって、硝酸塩から産生されます。一酸化窒素は、網膜血管を弛緩させるだけでなく、目の中の液体の流出にも影響を及ぼして内圧を下げる効果があるようです。食事から摂る硝酸塩は、組織内でこうした弛緩因子を増やす助けとなり得ます。葉野菜は、食事性の硝酸塩の摂取源となります。

この新しい研究は、看護師保健調査から得られた女性63,893人のデータと、医療従事者追跡研究から得られた男性41,094人のデータを調べたものです。研究の対象者は、調査の開始時点で40歳以上で緑内障のなかった人々で、2年ごとに評価を行い、26~28年間追跡しました。食事に関する情報は、有効な調査票に基づくものでした。

主に葉野菜による硝酸塩の摂取量が最も少なかったグループと比較して、その摂取量が最も多かったグループでは、緑内障の発症リスクが21%低くなっていました。周辺視野欠損のリスク低下は、中心視野欠損のリスク低下よりさらに顕著で、44%もの低下が見られました。緑の葉物野菜の摂取量は、硝酸塩摂取における変量の57%を占めていました。(Kang JH, et al., Association of dietary nitrate intake with primary open-angle glaucoma: a prospective analysis from the Nurses' Health Study and Health Professionals Follow-up Study. JAMA Ophthalmol. 2016 Jan 14:1-11.)

実践的ガイドライン

食事についていかなる信念を持っていようと、医療従事者なら誰でも、葉野菜を含む青野菜が健康に良い食材であることを認めているでしょう。上記の研究結果は(因果関係を証明したものではありませんが)、青野菜が視力の維持に有益であることの証拠となります。緑の葉野菜には、ホウレンソウ、ケール、コラード、カラシ菜、濃い緑色のレタス、スイスチャード、ブロッコリー、クレソンなどがあります。硝酸塩の含有に加え、青菜が貴重なのは、視力の維持にも重要な役割を果たすルテインとゼアキサンチンというカロテノイドが含まれているためです。ルテインとゼアキサンチンは、目の網膜と水晶体に見られる唯一のカロテノイドであり、黄斑変性と白内障の予防に役立つ可能性があります。

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