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2016年06月08日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2016年6月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2016年6月号クルクミンを不当に批評した新聞記事

今月の話題
◆クルクミンを不当に批評した新聞記事
◆アルコール、加工肉とガンとの関係
◆黄斑変性症を防ぐルテイン
◆ストレスの軽減による心臓リハビリへの効果


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クルクミンを不当に批評した新聞記事

4月22日付のニューヨーク・タイムズ紙に、クルクミンのサプリメントを批評した記事がありました。クルクミンはフィトケミカルの一種で、ターメリックの明るいオレンジイエローの色素です。その記事の冒頭では、クルクミンに抗酸化特性・抗炎症特性・抗ガン特性ならびに神経保護特性があることが実際に述べられていました。その次には、取材したライナス・ポーリング研究所の科学者の発言として、クルクミンが人にとって有益であると主張できるほど現在のエビデンスは十分でない、という言葉が載っていました。これに続けて記者は、「クルクミンの生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)は極めて低く、これは、人の体内にあまり長く留まらないという意味である…」と書いていました。しかし、「生物学的利用能が低い」とは、こうした意味ではありません(腸管からの吸収率が低い、または、効果的に細胞に取り込まれない、または、機能を抑制する他の分子と結合するという意味です。) 吸収率が悪いにもかかわらず、動物実験ではクルクミンを餌に混ぜて投与していました。

この記事によると、動物実験の場合、クルクミンは「大腸炎を緩和し、関節リウマチの過剰な免疫反応を抑え、外傷性脳損傷における神経炎症を軽減する」可能性があり、「小規模な臨床試験の結果、関節リウマチの硬直と腫脹の軽減において非ステロイド性抗炎症薬と同等の効果があることがわかっており、潰瘍性大腸炎の軽症化および突然の再発の低減に用いられる一部の標準薬よりも効果があった」ということです。

私は、発行されたこのニューヨーク・タイムズ紙について、以下の内容のコメントを送りました。
「生物学的利用能の問題は、他の場合なら重要ですが、クルクミンが少量で効果があるなら、ほとんど重要ではありません。多数の臨床試験や動物実験の結果から見て、少量で効果があるようです。仮に、1%しか利用されないとしても、1 mgで効果がある場合、100 mg摂れば臨床効果が得られることになります。一般的な用量は、標準エキスの形で300~500 mgです。こうした半科学的な見解からは、クルクミンがどのような方法で動物に投与されたのかわかりません。注射によってではなく、餌や水に混ぜて与えたとすれば、生物学的利用能が低くても生理学的効果が妨げられなかったことの証明となるでしょう。誰もが規模の大きい研究を好みますが、その資金を出そうとするのは誰でしょうか? そうでなくても、リスクがないのなら、なぜ治療や予防に利用しないのでしょうか? 食事でよくカレーを食べる所ではアルツハイマー病の発症率が低く、クルクミンがその原因の一つとなっているとも考えられます。関節リウマチの薬は、重篤な副作用を引き起こし、多数の死者をもたらします。安全な代替策があるのなら、少なくとも試す価値はあります。しきたりにとらわれない療法を進んで取り入れている医師として、私は、マスコミ界や医学界で非薬物療法への反感がはびこっていることを知っています。」
2006年に、ある研究グループが、潰瘍性大腸炎患者89人を対象とした臨床研究について発表しました。被験者は、試験の開始時点でこの病気が鎮静期にあった患者で、その半分にクルクミン1,000 mgが1日2回与えられ、残りの半分にはプラセボが与えられました。6カ月後の時点で、プラセボグループでは20%に再発が見られましたが、クルクミンを与えたグループでは4.6%にしか見られませんでした。(Hanai H, et al., Curcumin maintenance therapy for ulcerative colitis: randomized, multicenter, double-blind, placebo-controlled trial. Clin Gastroenterol Hepatol. 2006 Dec;4(12):1502-6.)

別の研究で、クルクミンが豊富に含まれているカレー食による肺機能の改善効果を調べたものがあり、習慣的な喫煙者と喫煙経験者では改善が見られました。ただ、非喫煙者にて見られた改善はごくわずかでした。(Ng TP, et al., Curcumin-rich curry diet and pulmonary function in Asian older adults. PLoS One. 2012;7(12):e51753. doi: 10.1371/journal.pone.0051753. 電子出版:12月26日)

クルクミンには、抗炎症特性と抗関節炎特性(関節炎の緩和効果)があることがわかっています。関節リウマチ患者45人を対象とした無作為化試験にて、クルクミン(500 mg)を投与するグループ、ジクロフェナク(非ステロイド抗炎症薬)を投与するグループ、および、その2つを併用するグループに分類して試験を行った結果、最も改善率が高かったのは、クルクミンを投与したグループでした。(Chandran B, Goel A, A randomized, pilot study to assess the efficacy and safety of curcumin in patients with active rheumatoid arthritis. Phytother Res. 2012 Nov;26(11):1719-25.)

その他にも、クルクミンには、慢性歯肉炎の治療において殺菌性洗口液のクロルヘキシジンと同程度の効果をもたらす可能性があること、また、乳ガン患者の放射線皮膚炎を軽減する可能性があることや、大うつ病の症状を軽減する可能性があることが他の研究で示されています。大うつ病への効果を示した研究については、以前に紹介しています。

実践的ガイドライン
私はカレー料理を食べる他にクルクミンのサプリメントも摂ることを、新聞記事によって思いとどまることはありません。クルクミンによるこうした実際の効果や潜在的な効果は本当であり、1日6,000 mgまで摂っても副作用はありません(ただし一部の研究では、ごく一部の被験者が消化器の不調を報告しています)。ニューヨーク・タイムズの記事で明確にしているのは、クルクミンの効果を得るには比較的大量に摂らなければならない、ということだけであり、その理由として彼らは確かに、吸収が悪いため、と指摘しています。私は、クルクミンを500 mgずつ1日2回摂っていますが、それならもっと摂らなければ、と思ってしまいます。


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アルコール、加工肉とガンとの関係

米国ガン研究協会と世界ガン研究基金が4月に発表したレポートによると、アルコールの摂取、体重過多、および加工肉(ベーコン、ホットドッグ、ハムなど)の摂取は、胃ガンのリスクを高める可能性があります。このレポートによると、胃ガンは世界で5番目に多く見られるガンで、2012年には世界で約952,000例が記録されており、それを発症する可能性は男性が女性の2倍となっています。

このレポートは、上記の団体による継続的更新プロジェクトの一環であり、食事・体重・身体活動度と胃ガンのリスクとの関係を調べた世界的な科学研究を集めた上で、国際的な第一級の科学者から成る審査団が、その情報の独立評価を行って結論を引き出しました。それによると、胃ガンの誘因には、その他に、喫煙、ピロリ菌感染、工業化学物質への暴露、多塵環境や高温環境への職業暴露、ゴム製造・採炭・金属加工・クロム製造の職業暴露が含まれるということですが、上記のレポートでは、こうした問題は扱われていませんでした。

上記の研究結果によると、アルコールを1日当たり約3杯以上飲むと胃ガンのリスクが高くなるという強力なエビデンスがあり、塩蔵食品および加工肉(ハム、ベーコン、パストラミ、サラミ、ホットドッグ、一部のソーセージなど)の摂取についても同様のエビデンスがあるということです。また、BMI(体格指数)による評価基準で過体重または肥満である場合、胃の上部の食道近くにガンが発生するリスクが高くなるという強力なエビデンスも見られました。また、それほど強力なものではありませんが、獣肉や魚をグリルやバーベキューで焼いて食べると胃ガンのリスクが高くなる、果物をほとんど食べないと胃ガンのリスクが高くなる、というエビデンスもいくつか見られました。(World Cancer Research Fund International/American Institute for Cancer Research. Continuous Update Project Report: Diet, Nutrition, Physical Activity and Stomach Cancer. 2016. Available at: wcrf.org/stomach-cancer-2016.)

実践的ガイドライン
世界ガン研究基金・米国ガン研究協会が推奨しているのは、自分の健康範囲内で体重をできるだけ低く保ち、体をよく動かし、高カロリー食品や砂糖分の多い飲料を避け、全粒穀物・野菜・果物・豆類をもっと食べ、赤肉、とくに加工肉の摂取量を制限し(私はゼロにするのが良いと思います)、アルコールはほとんど摂らないようにし、塩分摂取量を減らすことです。こうしたことは私もお勧めしますが、彼らはどうした訳か、サプリメントに頼るまではない、と言っており、詳しい説明もありません。サプリメントが健康的な食事に代わることはできないということは私も認めますが、有益な栄養素を取り損なわないことを確実にするため、サプリメントで効果的に補うこともできます。また、栄養素の中には、効果が得らえるだけの量を摂るのに食事だけでは難しいものもあります。


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黄斑変性症を防ぐルテイン

カロテノイドは、黄色やオレンジ色、赤色の色素群で多くの種類があり、この栄養素は、オレンジ色・黄色・緑色の果物や野菜に含まれています。最も広く知られているのは、おそらくβ-カロテンで、これはニンジン、サツマイモ、冬カボチャ、ホウレンソウその他の葉野菜、およびカンタロープ(赤肉種のマスクメロン)に含まれています。カルテノイド群には、その他、α-カロテン、ルテイン、リコピン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチンなどがあります。α-カロテンとβ-カロテンは、体内でビタミンAに変換することができ、β-クリプトキサンチンも同様です。カロテノイドはすべて、抗酸化特性と非抗酸化特性を有し、健康効果をもたらします。ルテインとゼアキサンチンは、目の網膜と水晶体に見られる唯一のカロテノイドです。

加齢性黄斑変性とは、網膜の最も感度の高い部分(黄斑)における一種の劣化です。黄斑に変性が生じると、視野の真ん中がぼやけて見えるようになります。そうすると、字を読んだり、車を運転したり、毎日の雑事をこなすのが困難になることがあります。また、顔を認識しにくくなることもあります。黄斑変性のリスク因子には、喫煙、高血圧症、高脂肪食、動脈硬化などがあります。紫外線への過度の暴露を防ぐことが、黄斑変性のリスク低減に役立つ可能性があります。

カロテノイドと黄斑変性との関係を調べた研究では、まだ結果に一貫性がありませんが、ルテインとゼアキサンチンに黄斑変性の予防効果があることが示唆されています。新たに行われた前向き研究では、女性63,443人と男性38,603人について、看護師保健調査と医学従事者追跡研究によるデータを評価し、1984年から2010年まで追跡しました。

この調査の開始時点で、被験者は全員、加齢性黄斑変性も、糖尿病も、循環器疾患も、ガンも患らっていませんでした。調査終了までには、この被験者に、中間レベルの加齢性黄斑変性が1,361件、進行した加齢性黄斑変性が1,118件見られました。そこで、ルテインとゼアキサンチンの摂取量に応じて被験者を4等分し、上位1/4のグループと下位1/4のグループで加齢性黄斑変性の発症率を比較したところ、この2つのカロテノイドの摂取量が上位1/4にあったグループは、下位1/4のグループより、進行性加齢性黄斑変性のリスクが41%低くなっていました。その他のカロテノイド類については、25~35%のリスク低下との関連が見られました。中間レベルの加齢性黄斑変性については、カロテノイドによるリスク変化の測定はされていませんでした。(Wu J, et al., Intakes of lutein, zeaxanthin, and other carotenoids and age-related macular degeneration during 2 decades of prospective follow-up. JAMA Ophthalmol. 2015 Dec;133(12):1415-24.)

実践的ガイドライン
色彩に富んだ果物や野菜をいろいろ摂ることの理由が、ここにも一つありました。視力喪失のリスクを下げる効果は、ルテインとゼアキサンチンが最も高かったのですが、他のカロテノイド類にも、視力の保護効果が見られました。ほとんどの場合、加齢性黄斑変性は不可逆性である(元には戻らない)ので、自分の視力を守るために自分ができる第一の手段は予防です。上記のカロテノイドはすべて、サプリメントも市販されているので、最適な食品を選んで食べていないときは利用できます。(ルテインのサプリメントはマリーゴールド由来です。)また、別の一群の研究では、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、亜鉛、銅をサプリメントで比較的大量に摂ることによる加齢性黄斑変性の予防効果が示されています。

視力維持に最適な食品には、ホウレンソウ、ブロッコリー、コラードの若葉、ケール、ネクタリン、パパイヤ、ベリー類、オレンジパプリカ、ニンジン、サツマイモ、大豆食品、アボカドなどがあり、また、亜麻の実やクルミ、サケ、イワシなど、オメガ3のオイルを含む食品も最適です。

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ストレスの軽減による心臓リハビリへの効果

冠動脈疾患がある患者さんは、冠動脈バイパス手術歴の有無を問わず、大抵の場合、心臓リハビリテーション・プログラムに参加するよう指導されます。これは主に運動のプログラムですが、食生活の改善も促されることがあり、これを合わせれば非常に有効なプログラムとなり得ます。また、食事と運動の他に、ストレス管理も、こうしたプログラムの効果を高める可能性があります。

標準的なリハビリ・プログラムに、ストレス管理を加える効果を分析した新しい研究があります。この研究では、36~84歳の冠動脈心疾患患者151人を、総合的な心臓リハビリを12週間受けるグループ、もしくは、総合的な心臓リハビリ+ストレス管理トレーニングを12週間受けるグループのいずれかに無作為に分けました。また、リハビリを受ける資格はあったが受けていなかった患者についても、対比サンプルとして調べました。そして、被験者全員の追跡を最長5.3年行い、臨床事象について調べました。

その結果、併用療法を受けたグループのほうが、不安も苦痛も少なく、感じているストレスも少ない状態でした。どちらのグループでも、冠動脈心疾患のバイオマーカー値に有意な改善が見られ、これは両グループ間で比較可能でした。この調査期間中に臨床事象が見られた人数の割合は、リハビリ療法のみのグループでは33%でしたが、併用療法を受けたグループでは18%でした。リハビリ療法もストレス管理療法も全く受けなかったグループにおける臨床事象発生率は47%でした。(Blumenthal JA, et al., Enhancing cardiac rehabilitation with stress management training: a randomized, clinical efficacy trial. Circulation. 2016 Apr 5;133(14):1341-50.) たとえ、患者がストレス管理トレーニングをとくに要求していなくても、いつも心臓リハビリ・プログラムに含めるべきである、とこの論文では結論付けています。

実践的ガイドライン
ストレス管理には、単純な呼吸法から、メディテーション(瞑想)、ビジュアライゼーション法、ヨガ、太極拳、誘導イメージ療法などに至るまで、多くの方法が利用できます。こうした方法は、ある程度時間を要しますが、2~3分の呼吸法やビジュアライゼーション法を1日数回行うだけでも効果が得られることがあります。私はビジュアライゼーション法が好きです。目を閉じて、心の目に映る景色を楽みながら、自分が日常を離れてお気に入りの場所の一つにいると想像することができるからです。

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