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2015年12月11日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2015年11&12月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2015年11&12月号若い頃の食事によって心疾患リスクが決まる可能性

今月の話題
◆若い頃の食事によって心疾患リスクが決まる可能性
◆クルクミンはガン細胞の増殖を抑える
◆地中海式食事法がもたらす脳の機能維持効果
◆食事から摂るビタミンEだけでは不十分
◆血清セレン値が低いと死亡率が高くなる





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若い頃の食事によって心疾患リスクが決まる可能性

ある研究グループが、青年期における果物と野菜(青果)の摂取量と、後年に冠動脈アテローム性硬化を発症するリスクとの関係を調べる研究に乗り出しました。そのレポートによると、これは「若年成人における冠動脈疾患発症リスク」(CARDIA)調査にて得られたデータを調べたもので、このCARDIA調査には1985~1986年の開始時より健常な若い黒人と白人が含まれていました。被験者数は2,506人で、うち63%が女性でした。調査開始時の平均年齢は25歳であり、面談で得られた半定量的な食事歴情報を用いて、調査開始時点での青果摂取量が調べられました。

上記の研究では、青果の摂取量に応じて、被験者を「低」「中」「高」のグループに3等分し、20年の追跡期間を経て、その終了時にCTスキャンで冠動脈の石灰化レベルを測定しました。冠動脈の石灰化は、冠動脈アテローム性硬化のリスクを示す指標となります。女性の場合、青果の摂取量が「高」であったグループでは、1日当たりの摂取量が約9皿であったのに対し、男性の「高」グループでは7皿でした。一方、摂取量が「低」であったグループにおける1日当たりの摂取量は、女性の場合3.3皿、男性の場合2.6皿に過ぎませんでした。

20年後の時点で、「高」のグループでは、他のグループと比較して、冠動脈の石灰化レベルが最大26%低い状態でした。他の食事関連変数について調整した後でも、16%という極めて有意なリスク低下が見られました。また、果物と野菜を別々に考えた場合でも、それぞれについて同様に有益な結果が見られました。この論文の執筆者は、こうした研究結果について、問題が生じてからはじめて健康的な食事に切り替えるのではなく、果物と野菜を摂る良い習慣を若いうちに身に付けることの重要性を強めるものである、と結論付けています。(Miedema, M, et al., The association of fruit and vegetable consumption during early adulthood with the prevalence of coronary artery calcium after 20 years of follow-up: The CARDIA Study. Circulation 114.012562 published online before print October 26, 2015.)

実践的ガイドライン

ほとんどの若者(と年配者)が食べている物を見ると、健康的ではないので、医者にとって患者不足で困ることはないだろう、と実感します。本ニュースレターの読者ならご存知でしょうが、上記の「高」にあたる量の果物と野菜に加え、全粒穀物、マメ科植物、種子類およびナッツ類を摂る食事を私は勧めています。様々なおいしい食品、魅力的な食品によって、どんな嗜好も満たされます。

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クルクミンはガン細胞の増殖を抑える

クルクミンは、ポリフェノールの一種であるフィトケミカルで、スパイスであるターメリックに含まれています。抗炎症性と抗酸化性があり、数々の化学物質による肝臓毒性を低下させ、血小板凝集の低減(アテローム性動脈硬化からの保護)をもたらします。メラノーマ(黒色腫)の転移を防ぐ可能性もあります。また、ターメリックが入ったカレーをたくさん食べるインドではアルツハイマー病の割合が異常に低く、クルクミンがその一因であると考えられています。

前号のニュースレターで、うつとガンに対するクルクミンの効果について書きましたが、今回紹介する新たな基礎研究では、直腸結腸ガンの治療に用いる化学療法剤にクルクミンを加えると役立つことが示唆されています。この研究は、直腸結腸ガンの患者由来の肝転移部を用いて、化学療法のみの場合と、クルクミンを組み合わせた場合との違いを調べたものです。5-フルオロウラシルとオキサリプラチンという化学療法剤にクルクミンを加えた場合、増殖の抑制効果ならびにアポトーシス(プログラムされた細胞死)の促進効果が高くなりました。

クルクミンのみを用いた場合、ならびに、化学療法剤とクルクミンを組み合わせて用いた場合に、特定の細胞性腫瘍マーカー値に低下が見られました。フェーズI(第1相)の用量漸増試験では、直腸結腸ガンの肝転移がある患者にクルクミンを、たとえ1日当たり最大2,000 mg与えた場合でも、安全で、かつ耐えられることがわかりました。(James MI, et al., Curcumin inhibits cancer stem cell phenotypes in ex vivo models of colorectal liver metastases, and is clinically safe and tolerable in combination with FOLFOX chemotherapy. Cancer Lett. 2015 Aug 10;364(2):135-41.)

実践的ガイドライン

これについては、前号の内容と変わりはありません。私は、カレーを食べていない日は、今でも約500 mgのクルクミン(のサプリメント)を1日2回を摂っています(カレーはかなり頻繁に食べますが、インドの人ほどではありません)。

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地中海式食事法がもたらす脳の機能維持効果

加齢に伴い、脳は組織の萎縮につれて収縮する傾向があり、時間とともに、認知機能障害(思考力や記憶力の低下)、そして最終的にはアルツハイマー病を含む認知症に至るおそれがあります。しかし、脳機能の早期低下は、加齢によって必然的に生じるものではなく、食事と運動の影響を受けることがあります。こうした萎縮を示す指標として、全脳容積の低下、全灰白質容積の低下(名探偵ポワロの言う「灰色の小さな脳細胞」とは灰白質を表しています)、全白質容積の低下、および平均皮質厚の低下があります(人間の高度な皮質機能は、他の生物から我々を区別しているものの一つですが、違いがこれだけではないことを望みます)。

地中海式食事法を実践すると脳萎縮率に有意な差が出ることが、最近の研究でわかっています。この研究は、認知症がない平均年齢80歳の高齢者674人の脳をMRIで調べたもので、食事アンケートの回答にもとづき、地中海式食事法の実践度に応じて、被験者を最低レベルから最高レベルまでの9グループに分けました。ここでいう地中海式食事法の食事パターンは、魚・野菜・果物・全粒穀物・オリーブオイルを重視し、獣肉をそれほど重視しないものでした。

レベル1~4のグループ(実践度が比較的低いグループ)をレベル5~9のグループと比較した結果、後者のほうが、全脳容積が13 ミリリットル(mL)、全灰白質容積が5 mL、全白質容積が5 mL多い状態にありました。獣肉の摂取量が少ないほうが全脳容積が大きく、一方、魚の摂取量が多いほど全灰白質容積が大きいという関連が見られました。また、魚の摂取量が多いほど、平均皮質厚の値も大きくなっていました。(Gu Y, et al., Mediterranean diet and brain structure in a multiethnic elderly cohort. Neurology. 2015 Oct 21. pii: 10.1212/WNL.0000000000002121. [印刷物に先行した電子出版])

この論文執筆者の推定によると、こうした脳組織の維持効果は、平均すると脳機能低下の開始が5年延びることに相当します。たいした効果には見えないかもしれませんが、認識機能の低下に直面している場合や認知症の可能性がある場合は、個人的見解ならびに経済的負担の両面から、かなり有意な値と言えます。また、実践度が最も高かったグループと最も低かったグループ間で比較をすることができたなら、これよりはるかに大きな差が見られたかもしれません。しかし、こうした比較を意味のあるものとするほど被験者数が多くありませんでした。

実践的ガイドライン

地中海式食事法の特徴は、私がすべての患者さんに日ごろ勧めている食事の内容とほとんど同じです。野菜・果物・全粒穀物・マメ科植物に重点を置き、それに加えて魚を少し食べるが、獣肉はほとんど食べないという食事をすれば、認知機能の維持だけでなく、多くの効果が得られます。特筆すべきこととして、身体活動も認知機能低下の先延ばしに役立つことがわかっています(この目的では社交ダンスが特に効果的ですが、それ以外にも役立つ運動形態はたくさんあります)。

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食事から摂るビタミンEだけでは不十分

健康に良い食事をして、栄養素とフィトケミカルをできるだけ多く摂ることが望ましいのですが、栄養素によっては、食事から摂るだけでは、効果をもたらすほどの量を摂ることが難しいものもあります。非常に健康的な食事を選んでいる人であっても、たとえば、ビタミンCとビタミンDの2つは、食事から十分な量を摂るのは難しいのです。その他の栄養素とフィトケミカルの中にも、環境暴露(汚染や過度の日光暴露)やストレスの影響や、特定の病気に対する遺伝的素因から身を守る特異的な効果をもたらすものがいくつかあります(ただし、疾患に対する遺伝的素因というのは、質の悪い食事や喫煙、アルコールの過剰摂取、運動不足というような不健康な生活習慣の選択肢と比べれば、はるかに小さな要因にすぎません)。米国のほとんどの人は、理想的な食事を摂っていないため、サプリメントの重要性がさらに高いのかもしれません。

米国式の食事をしている場合、ビタミンEという栄養素は食事から摂るだけでは不十分であることが、ある新しい研究でわかっています。ビタミンEは、脂溶性の抗酸化物質で、フリーラジカルによる損傷から細胞膜を守ります。血中ビタミンE値が低いと、死亡率と心疾患率が高くなるという関連が見られています。米国の成人の90%以上は推奨されている量のビタミンEを摂っていないため、研究者たちは、ビタミンEを「不足栄養素」の1つとみなしています。ビタミンE量が十分である状態とは、血清ビタミンE値が1リットル当たり30マイクロモル(30 ɥmol/L)以上の場合をいい、一方、12 ɥmol/L未満であれば欠乏しているとみなされます。

上記の分析研究では、米国健康・栄養調査(NHANES、2003~2006年)にもとづき、ビタミンEが臨床的欠乏状態にある人の割合と、ビタミンE量が十分ではない人の割合の両方を調べることを狙いとしました。臨床的欠乏状態とみなされた人の割合はごくわずかでした。しかし、ビタミンEの摂取源が食品のみであったグループの平均血清ビタミンE値は24.9 ɥmol/Lに過ぎませんでした。一方、食品とサプリンメントの両方からビタミンEを摂っていたグループの平均血清ビタミンE値は33.7 ɥmol/Lでした。

調査の結果、20~30歳のグループのうち87%は、ビタミンE値が不十分な状態でした。51歳以上のグループでは、血清ビタミンE値が不十分であった人の割合は43%でした。ビタミンEを食品のみから摂っていたグループと、食品とサプリメントの両方から摂っていたグループとの差は、年齢、性別、人種・民族の違いを超えて一貫していました。(McBurney MI, et al., Suboptimal serum α-tocopherol concentrations observed among younger adults and those depending exclusively upon food sources, NHANES 2003-20061-3. PLoS One. 2015 Aug 19;10(8):e0135510).

実践的ガイドライン

一般に、食品におけるビタミンEの含有量は非常に少ないのです。ビタミンEを最も多く含む食品は、ヒマワリの種とアーモンドですが、1カロリー当たりの含有量で見ると、ホウレンソウ、ビートの若い葉、アスパラガス、カラシナ、スイスチャードに最も多く含まれています。食品中に見られるビタミンEの形態には、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールがあります。そのうち、食事に最も多く含まれているのはγ-トコフェロールで、これはα-トコフェロールからは得られない効果をいくつかもたらします。私はγ-トコフェロールを多く(1日当たり400 IU)含むサプリメントを摂っています。ビタミンEは高用量でもきわめて安全性が高く、1日当たり3,000 IUという量を与えた場合でも何の副作用も見られていません。また、トコフェロールを1日当たり2,000 IU摂るとアルツハイマー病の進行が遅くなる可能性があることが、いくつかの研究でわかっています。コエンザイムQ10の高量摂取にも同様の効果があり、これはパーキンソン病の進行遅延にも役立つ可能性もあります。

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血清セレン値が低いと死亡率が高くなる

セレンは、食事で摂取する必須微量元素で、抗酸化性があります。抗酸化酵素であるグルタチオン・ペルオキシダーゼの活性に必要なものであり、また、ビタミンCの再利用にも役立ちます。ガン予防にも役立つ可能性があります。セレンを摂ることができる最も健康的な食品には、全粒穀物と種子類、ならびにブラジルナッツがあります。ブラジルナッツには、このミネラル(セレン)がことのほか多く含まれています。栄養素密度(1カロリー当たりの栄養素量)という点では、クリミニマッシュルーム(まだ小さいポータベラ茸)が最も多くセレンを含んでいます。

血清中のセレン値が十分であると健康への効果があることが、最近の研究でわかっています。スウェーデンで行われたこの研究では、高齢の被験者668人を調べ、各自の血清セレン値を測定した後、6.8年間追跡しました。被験者の平均血清セレン値は1リットル当たり67マイクログラム(67 μgm/L)でした。スウェーデン政府は国民の健康改善のため、もう何十年も栄養情報を提供する運動を展開していますが、それにもかかわらず、この値は比較的低いセレン摂取量に相当します。

上記の研究では、その終了時に、あらゆる原因による死亡率と循環器疾患による死亡率について、血清セレン値との相関を調べました。セレン値にもとづいて被験者を4等分したところ、セレン値が下位4分の1にあったグループでは、上位4分の1にあったグループと比較して、あらゆる原因による死亡率が43%高くなっていました。また、循環器疾患による死亡率については、56%高くなっていました。(Alehagen U, et al., Relatively high mortality risk in elderly Swedish subjects with low selenium status. Eur J Clin Nutr. 2015 Jun 24. doi: 10.1038/ejcn.2015.92. [印刷物に先行した電子出版])

これと同じ研究グループが以前に公表した5年にわたる前向き研究では、セレンとコエンザイムQ10のサプリメント摂取後に、循環器疾患による死亡率に有意な低下が見られています。サプリメントを与えたグループの死亡率は、プラセボグループの半分未満(5.9%対12.6%)でした。(Alehagen U, et al., Cardiovascular mortality and N-terminal-proBNP reduced after combined selenium and coenzyme Q10 supplementation: a 5-year prospective randomized double-blind placebo-controlled trial among elderly Swedish citizens. Int J Cardiol. 2013 Sep 1;167(5):1860-6. doi: 10.1016/j.ijcard.2012.04.156. Epub 2012 May 23.)

実践的ガイドライン

セレンは多くの食品に含まれていますが、その含有量は、食物の生育場所によって異なります。私たちが食べる食品は、国中の至る所(そしてまさに世界中)から供給されていますが、土壌中のセレン濃度が低い地域(米国の場合はニューイングランド地方、南東部、また、南西部の下側、北西部の各州など)では、食品からのセレン摂取量は一般的に低くなります。土壌中のセレン濃度が高いのは、中西部の上側、ノースダコタ州とサウスダコタ州、モンタナ州、コロラド州、その他の隔離領域くらいです。私は1日当たり200 μgのセレンをサプリメントで摂っていますが、これは多くのマルチビタミン+ミネラル剤や、単一のサプリメントに含まれている量です。サプリメントでは、(アミノ酸であるメチオニンと結合させた)セレノ-メチオニンがよく見られ、比較的良く吸収されます。


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