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2008年02月28日

ドクターからの『毎月健康ニュース』2008年2月号

ヘルシーリビング


ドクタージャンスンから毎月届くニュースレター。
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2008年2月号獣肉によるガンのリスク増加

今月の話題:
獣肉によるガンのリスク増加
幸せな気分による健康増進
ヨガは効果はあるものの運動量としては不十分
高齢者に対するL-カルチニンの効果
ストロンチウムによる骨密度の増加
塩漬け肉と肺疾患との関係


獣肉によるガンのリスク増加

獣肉の摂取とガンとの関係が、さらにもう一つの大規模な研究で明らかになりました。米国の国立衛生研究所とAARP(全米退職者協会)との共同研究にて、研究グループは50~71歳の被験者494,036人について8年間の追跡評価を行いました。(Cross AJ, et al., A Prospective Study of Red and Processed Meat Intake in Relation to Cancer Risk. PLoS Med. 2007 Dec 11;4(12):e325 [印刷に先行した電子出版])

その結果、獣肉の摂取量が最多であったグループでは、結腸ガン、肺ガン、食道ガンおよび肝ガンのリスクが、獣肉の摂取量が最少であったグループと比較して29~60%高いことがわかりました。男性の場合、膵ガンのリスクも高くなっていました。

高摂取グループといっても、思ったほど獣肉をたくさん食べていたわけではありません。1日当たりの平均量は、ハンバーガーなら1/4ポンド(約100g)、小ぶりのステーキまたは豚肉一枚にすぎませんでした。赤肉の摂取量が最少であったグループでは、1日当たりの平均獣肉摂取量が1/2オンス(約14g)を少し上回る程度でした。意外なことに、獣肉の摂取量が多い女性グループにおいて、子宮内膜ガンのリスクが25%低下するという予想外の低下が見られました。獣肉産業の代表者たちがこの統計値を最も重要な結果として利用したのは言うまでもありません。子宮内膜ガンは肺ガンや結腸ガンほど多く見られないにもかかわらず、それ以外の研究結果は最少限にとどめたのです。

この研究にて子宮内膜ガンのリスク低下が見られたというのは事実かもしれませんが、それが獣肉摂取の結果である可能性は低いと思います。他の研究によると、獣肉全体および赤肉の1日当たりの平均摂取量が100 g (3オンス)であった各グループにて、子宮内膜ガンのリスクが、獣肉全体の場合は25%、赤肉の場合は50%増加していたということです。(Bandera EV, et al., Consumption of animal foods and endometrial cancer risk: a systematic literature review and meta-analysis. Cancer Causes Control. 2007 Nov;18(9):967-88.)

結論として、獣肉を摂らないようにするか、獣肉の摂取量を思い切って減らすことにより、複数部位のガンのリスクを大幅に下げられるということは明白です。このことは、これまでにお伝えした他の多くの研究結果とも一致しています。繊維の高量摂取と、子宮内膜ガンを含むガンの発生率の低下については、すでに関連が見られています。獣肉には繊維が欠如しているため、繊維の高量摂取を、獣肉の低量摂取の指標とすることができるかもしれません。


幸せな気分による健康増進

幸せな気分であると、炎症が軽減され、心疾患や高血圧症のリスク要因が低下するようです。前向きな気分と健康増進との関連はこれまでにも見られていましたが、なぜ関連があるのかは不明です。新しい研究により、考えられる理由がいくつか示唆されました。

2,873人の健康な成人を被験者とした英国での研究によると、前向きな気分になると、コルチゾールの血中量が低下するようです。コルチゾールは、ストレス時に分泌されるホルモンであり、免疫力の低下、肥満の増加および高血圧と関係しています。(Steptoe A, et al., Neuroendocrine and inflammatory factors associated with positive affect in healthy men and women. The Whitehall II Study. Am J Epidemiol. 2008 January 1;167(1):96-102.)

男性を含めず女性のみを対象とした他の研究結果によると、前向きな気分は、C反応性タンパク(CRP)とインターロイキン-6(IL6)という炎症マーカー値の低下と関連していました。この研究では、調査期間中、被験者に、幸せな気分、わくわくした気分、もしくは満足した気分かどうかを、自分の感情と気分を記録し続けてもらいました。

高CRP値は、心疾患のリスク要因として知られています。IL6とCRPの両方が高値の場合、ガンのリスク増加との関連が見られています。前向きな気持ちや明るい気分がもたらす多大な効果については、数十年前にノーマン・カズンズが自著「Anatomy of an Illness(病気の解剖学)」の中で述べています。どうすれば前向きな気分になれるかが重要な問題であることは、言うまでもありません。


ヨガは効果はあるものの運動量としては不十分

ヨガは、規則正しく実践すれば健康に良いことがわかっていますが、多くの場合、心血管を健康に保つために必要な運動量のガイドラインは満たしていません。あるポーズから動いて別のポーズをとり、短時間その姿勢を保つというハタ式ヨガのほとんどの活動において、カロリー燃焼量は、2マイル(約3.2 km)/時の速度で軽いウォーキングをした場合(3.2カロリー/分)とほとんど変わりません。(Hagins M, et al., Does practicing hatha yoga satisfy recommendations for intensity of physical activity which improves and maintains health and cardiovascular fitness? BMC Complement Altern Med. 2007 Nov 30;7(1):40)

ヨガの一部、たとえば「太陽礼拝」のポーズをするときの運動負荷はこれより大きく、参加者は推奨されている運動量を満たすことができましたが、普通は、十分にトレーニングができるほど長時間にわたってこうしたポーズを持続することはありません。それでも、心血管の健康を保つための運動プログラムにヨガを加えれば、多くの効果が得られます。


高齢者に対するL-カルチニンの効果

100歳以上の被験者において、L-カルチニンのサプリメントにより、様々な形で機能の改善が見られました。100歳以上の男女66人を対象としてイタリアで行われたこの研究では、半数にプラセボを投与し、残りの半数には1日当たり2,000 mgのL-カルチニンのサプリメントを投与しました。(Malaguarnera M, et al., L-Carnitine treatment reduces severity of physical and mental fatigue and increases cognitive functions in centenarians: a randomized and controlled clinical trial. Am J Clin Nutr. 2007 Dec;86(6):1738-44.)

L-カルチニンは、体内で生成されますが、その量は年齢とともに低下し、70歳を超えると大幅に低下します。これは、エネルギー産出や、筋機能(心筋を含む)、脂肪代謝、および正常な血中コレステロール値と中性脂肪値の維持に必要なものです。エネルギー分子であるATP(アデノシン三リン酸)の生成には、遊離脂肪酸、ミトコンドリア内のコエンザイムQ10、およびミトコンドリア膜を通過して脂肪酸を運搬するL-カルチニンが必要です。

この研究によると、L-カルチニンを摂った被験者グループでは、6ヶ月の調査期間後、筋肉量に有意な増加(約8.5ポンド(約3,860 g))が見られた一方、脂肪は4ポンド(約1,800 g)減少していました。コレステロール値は低くなり、6分間歩行テストでの歩行距離は延びていました。

また、このサプリメントを摂った結果として、精神的能力と体力も高くなり、全身倦怠感も軽減されました。他にも、認知機能をミニメンタルステート検査で測定したところ、L-カルチニンを投与した被験者グループでは、プラセボグループと比較して、大幅な改善が見られました。

L-カルチニンの力を借りるために100歳まで待つ必要はありません。他の研究では、L-カルチニンにより心臓疾患が少なくなることや、心臓発作の疑いがある場合にL-カルチニンを投与した患者では心臓発作後の生存率が高くなること、また、血中脂質値が改善されることがわかっています。

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ストロンチウムによる骨密度の増加

ストロンチウムは、骨に沈積し、骨密度の改善に役立つミネラルです。(初期の核実験時には、ストロンチウム90が被曝した子どもの骨に沈積して骨のガンを引き起こすということで、放射性のストロンチウムは悪評を受けていましたが、非放射性のストロンチウムはきわめて安全です。)

骨密度が低下した高齢患者にはストロンチウムを用いた長期治療が有用であることが、新しい研究で確認されています。(Malaise O, et al., Strontium ranelate normalizes bone mineral density in osteopenic patients. Aging Clin Exp Res. 2007 Aug;19(4):330-3.) この研究では、骨密度が低い患者1,428人を割り振り、ラネリック酸ストロンチウム(1日当たり680 mgのストロンチウム元素に相当する量)かプラセボのいずれかを3年間投与しました。

調査期間中は、骨密度をベースラインにて測定した後、1年ごとに測定しました。ストロンチウムを摂取したグループでは、脊椎骨密度が正常になった患者の割合が毎年増え、3年後には58%の人の腰椎骨密度が正常になっていました。プラセボグループの場合、3年後に脊椎骨密度が正常になっていた人の割合は12%にすぎませんでした。

寛骨の骨密度については、これほど劇的な結果は見られませんでしたが、それでも効果は明白でした。3年後に寛骨の骨密度が正常となっていた人の割合は、プラセボグループではわずか1.6%であったのに対し、ストロンチウムを投与したグループでは20%でした。他の研究によると、ストロンチウムを摂取したグループでは、プラセボグループと比較して、1年後の骨折リスクが49%低くなっていました。クエン酸ストロンチウムは、手頃な値段なストロンチウムです。

骨粗鬆症の治療薬(「フォサマックス」など、ビスフォスフォネート剤)のリスクを考えると、代わりにストロンチウムをビタミンD、イプリフラボン、ビタミンKのサプリメントとともに摂ることを検討してみる価値はあります。これらはすべて、骨密度への効果があります。骨のためには、ジョギングなど、多少の負荷を伴う荷重負荷運動を行うこともきわめて重要です。


塩漬け肉と肺疾患との関係

慢性閉塞性肺疾患(COPD:多くは喫煙が原因)は、早死にの一因となります。新しい研究によると、加工肉(ボローニャソーセージ、サラミ)、ベーコン、ホットドッグなど、塩漬け肉を食べることにより、喫煙とは無関係に、COPDの発生率が高くなるということです。(Varraso R, et al., Prospective study of cured meats consumption and risk of chronic obstructive pulmonary disease in men. Am J Epidemiol. 2007 Dec 15;166 (12):1438-45.)

医療従事者追跡調査に参加している男性42,915人を対象としたこの研究では、塩漬け肉の摂取量が最多(1週当たり4~6食)であったグループでは、摂取量が最少(1週当たり1食未満)であったグループと比較して、COPDのリスクが2.5倍になっていました。獣肉摂取に対する私の否定的な見解は、偏見によるものでも、先入観によるものもなく(実際、獣肉をたくさん食べて育ちました)、過去36年間にわたる科学研究の圧倒的な重要性を認めていることによるものです。




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