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2015年05月27日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2015年3月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2015年3月号グリセミックインデックスは心疾患リスクに影響を及ぼすか?

今月の話題
・グリセミックインデックスは心疾患リスクに影響を及ぼすか?
・運動は健康に役立つか?
・スタチン薬関連の筋肉痛に対するコエンザイムQ10の効果
・全粒穀物は死亡リスクを下げる
・ビタミンEが血圧にもたらす効果





グリセミックインデックスは心疾患リスクに影響を及ぼすか?

グリセミックインデックスとは、ある食品が、その摂取直後に血糖(グルコース)に及ぼす影響度を示した指標です。グリセミックインデックスが高い食品を摂る食事法は、LDLコレステロール、トリグリセリド、総コレステロールなど、心疾患のリスク要因となる数値を高めると考えられてきました。しかし、そうとは限らないことが、ある新しい研究で示唆されています。その研究は、血圧が正常~やや高めである過体重の成人163人について調べたもので、食事、間食、およびカロリーを含む飲料をすべて含めた4パターンの食事を被験者に実践させました。
どの被験者にも、この4パターンの食事がそれぞれ5週ずつ与えられ、各パターンの切替え時には小休止がありました。これは、比較摂食試験であって、アンケートや記憶には依存していませんでした。


上記の食事はすべて、健康に良いDASHタイプの食事(高血圧症の予防・改善のための食事法)を土台としたもので、それを変化させて、それぞれ「高炭水化物・高グリセミックインデックス」、「高炭水化物・低グリセミックインデックス」、「低炭水化物・高グリセミックインデックス」、「低炭水化物・低グリセミックインデックス」の食事となるようにしました。そして、結果を示す数値として、インスリン感受性、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、トリグリセリド、および収縮期血圧が調べられました。(Sacks FM, et al., Effects of high vs low glycemic index of dietary carbohydrate on cardiovascular disease risk factors and insulin sensitivity: the OmniCarb randomized clinical trial. JAMA. 2014 Dec 17;312(23):2531-41. doi: 10.1001/jama.2014.16658.)


炭水化物を多く摂る食事の場合、実際にグリセミックインデックスが低いほうが、インスリン感受性は低く、LDLコレステロール値は高くなっており、その他の測定値には違いはありませんでした。低炭水化物食の場合は、高グリセミックインデックス食品と比較して低グリセミックインデックス食品では、トリグリセリド値が91 mg/dLから86 mg/dLに下がったという、わずかながらも有意な変化があった以外、結果への影響は見られませんでした。対照的な食事(低炭水化物・低グリセミックインデックス食と高炭水化物・高グリセミックインデックス食)の比較では、収縮期血圧、HDL・LDLコレステロール値、およびインスリン感受性については食事の影響はありませんでしたが、トリグリセリド値には、111 mg/dLから86 mg/dLという有意な低下が見られました。


全体として見た場合、基本的に健康に良い食事(野菜・マメ科植物・全粒穀物・果物を多く含み、塩分と動物性食品の量が少ない食事)を摂っていれば、グリセミックインデックスは食事の選択に役立つ手掛かり とはならない、とこの論文執筆者は結論付けています。


実践的ガイドライン

1950年代にデニス・バーキット博士が現地アフリカ人の調査を行ったとき、彼らは、ジャガイモ、バナナ、コーンミール、豆類を主食としており、心疾患、高血圧症、脳卒中、糖尿病、結腸ガン、虫垂炎、憩室炎はほとんど見られませんでした。バーキット博士は、その理由を、食事に大量の食物繊維(1日当たり約100グラム)が含まれているためと考えました。米国における成人の食物繊維摂取量は、1987年では1日当たり約11グラムでしたが、2001年までには16グラムまで増え、2010年までわずかに増加し続けました。しかし、2012年には推奨される食物繊維摂取量を満たしていた米国人は3%にすぎませんでした。しかもそれは驚くほど低く、1日当たりわずか14グラムとなっています。(その後のガイドラインで、20~50歳については1日当たり37グラムまで引き上げられました。)


グリセミックインデックスを気にするよりも、食物繊維を多く含む食事を選ぶことのほうが重要です。食物繊維は、果物、野菜、全粒穀物、豆類、種子類、ナッツ類に含まれています。こうした食事を選べば、体重の抑制に優れた効果がありますが、体重を増やす必要があるという少数の人の場合は、アボカドやセサミタヒニ(練りゴマ)、ピーナツバター、ナッツ類を増やすという方法もあります。動物性食品(肉食品、乳製品、卵)には、食物繊維は全く含まれていません。




運動は健康に役立つか?

ジムで隣のマシンを使っていた人が、運動は体に良いに違いないとは思っているものの運動嫌いのため、しぶしぶ運動していました。最近彼女は、あるニュース記事で、「運動しても長生きには役立たない」ことを示す研究について報じられていることに気付きました。その記事によると、「週4時間運動した人も、全く運動しなかった人も、死亡率は変わらなかった」ためということです。私には、これが本当らしく聞こえなかったので、その報道と記事について調べたところ、そうした結論(そして変わったかもしれない一般市民の態度)に十分な根拠はありませんでした。
このニュース記事で実際に報じていたのは、1週当たり2.4時間までの運動を3回に分けて行うと、実際に寿命を延ばす効果が得られる、ということでした。ジョギングをする人たちは、1マイル(約1.6km)12分(時速5マイル(約8km))というペースが最適であることを経験上知っています。しかし、このニュース記事ではさらに進んで、ペースについては、自分の運動が「低速か、平均か、高速か」という被験者の自己申告に基づいて研究グループが推測した、と指摘していました。また、被験者の年齢は20歳から95歳に及んでいました。(2015年2月2日付 HealthDay News)


この研究は、ジョギングをしている健常者1,098人と、ジョギングをしていない健常者3,950人について12年間追跡して調べた、コペンハーゲン市心臓研究の一環でした。(Schnohr P, et al., Dose of jogging and long-term mortality: the Copenhagen City Heart Study. J Am Coll Cardiol. 2015 Feb 10;65(5):411-9. doi: 10.1016/j.jacc.2014.11.023.) ジョギングをしておらず、座りがちな生活をしている被験者グループと比較した場合、週に1~2.4時間運動しているグループが最も死亡率が低く、この調査期間中に死亡する可能性が71%低くなっていました。また、「激しい」ジョギングをしていると回答した被験者グループは、運動をしていないグループと、死亡率がほとんど変わらないこともわかりました。(これは、他のいくつかの研究で見られた結果に反しています。)


この研究については、いくつかの批評が出されました。そのうち、1つは同じ雑誌の論説欄に見られ、また、ニューヨークタイムズの記事自体およびその報告のコメント欄(2015年2月4日付ニューヨークタイムズ)にも、いくつか見られました。問題の一つは、激しいジョギングをしている被験者グループに入っていた被験者数が80人に過ぎなかったことです。この雑誌の記事に付随していた論説にて、DCリー博士は、激しいジョギングをしていたグループの被験者数が少なかったことの他にも、多くの欠陥を指摘していました。彼はしかし、この記事によって一部の人はたとえ少しでも運動する気になるかもしれず、少しの運動でも、完全に座ってばかりいるよりは多くの健康効果が得られるだろう、とも指摘していました。


リー博士はこの他にも、昨年8月、別の完全な論文を発表しており、運動によって、原因を問わない死亡率(総死亡率)も、循環器疾患による死亡率(心血管系死亡率)も下がることを示しています。この研究は、18~100歳の成人55,137人を15年間追跡して調べたもので、この中にはランニングをしている人が13,000人以上含まれていました。ランニングをしていないグループと比べて、ランニングをしているグループでは、総死亡率が30%、心血管系死亡率が45%低くなっていました。この研究では、ランニングの量が多いほど、量と反応の関係で効果が得られることがわかりました。つまり、運動するほど大きな効果が得られるという意味です。(Lee DC, et al., Leisure-time running reduces all-cause and cardiovascular mortality risk. J Am Coll Cardiol. 2014 Aug 5;64(5):472-81.)


実践的ガイドライン

運動が嫌いな人は、この報告の見出しに飛びつき、運動は必要ないという結論を下すでしょう。これは正当な結論ではありません。でも、私の同僚であるジョン・マクドゥーガルが言うように、「人は自分の悪習慣について良いことを聞きたがる」のです。何らかの負荷運動と有酸素運動を含めた運動を定期的に行えば、多くの健康効果、ならびに早死にするリスクを下げる効果があることに変わりはありません。一般に、運動はすればするほど良いのです。上記のニュース記事は、実際に研究の欠陥について報じていましたが、記事をもっと深く読んで、ほとんどどのようなレベルの運動でも体に良いということを見破らねばならなかったのです。




スタチン薬関連の筋肉痛に対するコエンザイムQ10の効果

コエンザイムQ10(CoQ)は、スタチン薬による副作用、とくに、最もよく見られる弊害の一つであるミオパシー、つまり筋肉痛を軽減する可能性があります。スタチン薬は、血清CoQ値を低下させますが、CoQのサプリメントを摂ればその回復に役立つことが、多くの研究でわかっています。ある対照研究では、スタチン薬治療による筋肉痛があったと回答した50人の患者が集められ、その半分の人には1日当たり50 mgのCoQを30日間与え、残りの半分にはプラセボを与える試験が行われました。


この試験の開始時点で、患者は、簡易疼痛調査票(BPI)に記入し、血液検査を受けました。この記入と検査は、試験の終了時にも行われました。30日後の時点で、CoQを施したグループでは、疼痛重症度スコア(PSS)が3.9から2.9に低下し、疼痛障害スコア(PIS)も4.0から2.6に低下していました。対照グループでは、どちらのスコアにも変化は見られませんでした。全体的に見て、CoQのサプリメントにより、75%の患者において、スタチン薬関連の筋肉症状が軽減されました。(Skarlovnik A, et al., Coenzyme Q10 supplementation decreases statin-related mild-to-moderate muscle symptoms: a randomized clinical study. Med Sci Monit 2014; 20:2183-2188.)


スタチン薬によって誘発されるミオパシー症状に対するCoQサプリメントの効果を調べたメタ分析の結果が1月に公表されました。これは5本の研究論文を調べたもので、被験者の総数は合わせて253人でした。5本のうち2本の研究論文で、CoQには筋肉痛に対する統計的に有意な効果が見られており、また、どの研究論文でも、痛みの何らかの減少が見られました(もしこうした効果がランダムなものであるなら、痛みが増したことや、変化がそれより少なかった、または無かったことを示す研究結果があってもよいでしょう)。全体的に見て、CoQの用量は50~300 mgの範囲にありました。執筆者の報告によると、筋肉痛が減少する「傾向」は見られましたが(実際に53%減少していました)、これは「統計的に有意な」結果ではありませんでした。痛みが減少した患者にとっては、そのことが重要であったに違いないと私は思います。(Banach M, et al., Effects of coenzyme Q10 on statin-induced myopathy: a meta-analysis of randomized controlled trials. Mayo Clin Proc. 2015 Jan;90(1):24-34.)


実践的ガイドライン

スタチン薬を飲んでいる患者さんは、治療のためにCoQを試してみるのが賢明と思われます。CoQは、きわめて高用量に至るまで、何の副作用も及ぼしません。CoQの摂取は、うっ血性心不全と高血圧症に対する効果的な治療法で、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経障害にも効果があり、少なくとも1日当たり2,400 mgまで摂っても安全であることが複数の研究で示されています。好ましい形態として私が勧めているのはユビキノールで、通常は100~200 mgずつ、1日1~2回摂ると良いでしょう。神経障害の場合は、もっと多く摂ることをお勧めします。CoQには、何のリスクもなく、効果の証拠はあるため、これを試さない理由は見当たりません。医師たちが施している治療法の多くは、CoQよりもリスクが高いのに、それを上回る効果があることを示す証拠がありません。それなのに、医師たちはなぜCoQを勧めたがらないのか、しばしば不思議に思います。




全粒穀物は死亡リスクを下げる

またしても、全粒穀物が医学ニュースで取り上げられています。全粒穀物には、糖尿病や心疾患など、重大な慢性疾患のリスク低下との関連が見られています。ある前向き研究に関する新しいレポートによると、看護師保健調査の被験者である女性74,341人と、医療従事者追跡研究の被験者である男性43,744人を対象とした調査が行われました。被験者は全員、調査開始の時点では循環器疾患もガンもない状態であり、この調査は24~26年続きました。有効性が確認されているアンケートを用いて、全粒穀物の摂取量を調べ、この情報は2~4年ごとに更新されました。


この調査期間中に、26,920人の死亡が記録されました。年齢、喫煙、体格指数、身体活動度、健康的食事指数のスコアを含む、いくつかの交絡変数について調整したところ、全粒穀物の摂取量には、全死亡率および循環器疾患による死亡率の低下との関連が見られましたが、ガンによる死亡率との関係は見られませんでした(ただし、他の研究ではガンの予防効果が見られています)。(Wu H, et al., Association between dietary whole grain intake and risk of mortality: two large prospective studies in US men and women. JAMA Intern Med. 2015 Jan 5. doi: 10.1001/jamainternmed. 2014.6283. [印刷物に先行した電子出版])


全体としては、全粒穀物の摂取量が上から5分の1に入っていた被験者グループは、下から5分の1にあったグループと比較して、総死亡率が9%低いことがわかりました。この上位5分の1のグループでは、循環器疾患による死亡率は15%低くなっていました。1日当たりの全粒穀物摂取量が1皿(28グラム=1オンス)増えるごとに、全死亡率は5%、循環器疾患による死亡率は9%低下する、とこの研究グループは推定しています。


実践的ガイドライン

誰もがそろそろ、精製炭水化物(とくに精白小麦粉と精白糖)の危険性に気付いているかと思います。残念ながら、多くの人は、すべての穀物を「炭水化物」と考えていて、全粒穀物と精製穀物(全粒小麦粉と精白小麦粉、玄米と白米)を区別できていません。私の同僚の多くも、その違いを無視してニュースレターや本を執筆しており、全粒穀物には健康に多大な効果があることを示す、上記のような文献を無視しているのです。


全粒穀物には、食物繊維、フィトケミカルおよび必須脂肪酸が含まれており、そのすべてが、全粒穀物の健康効果に一役買っています。私が日常的に摂ることを勧めているのは、全粒小麦、ライ麦、大麦(ただし、セリアック病や、それ以外でグルテンに敏感な体質である場合を除く)、ならびに、オート麦、玄米、全粒トウモロコシ、キビ、ソバの実、キノアなど、グルテンを含まない穀物です。常に精製穀物は避けましょう。




ビタミンEが血圧にもたらす効果

ビタミンEは、健康に数多くの有益な効果をもたらす、優れた生物学的抗酸化物質です。その効果の一つに、血圧の抑制があります。日本での研究で、2007年に実施された国民健康栄養調査から得られたデータを調べたものがあります。1,405人の男性と2,102人の女性のデータを対象とし、平均年齢は、男性が63.5歳、女性が62.4歳でした。被験者は、ビタミンEの摂取量に応じて、3分の1ずつ、「低」「中」「高」のグループにそれぞれ分けられました。
ビタミンEの摂取量が多いグループのほうが、高血圧症がある被験者の割合が低くなっていました。高血圧症がある確率は、「中」のグループでは27%低く、「高」のグループでは19%低くなっていました。 (Kuwabara A, et al., The association between vitamin E intake and hypertension: results from the re-analysis of the National Health and Nutrition Survey. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2014;60(4):239-45.)


こうした結果はすべての研究によって確認されているわけではありませんが、一部の研究では実際に確認されています。2002年には、ある研究グループが、盲検式プラセボ比較試験にて、軽度の高血圧症である被験者70人について調べました。この研究では、被験者に、1日当たり200 IUのビタミンEか、プラセボのいずれかを27週間与えました。試験の開始時と終了時に血中ビタミンE値を測定したところ、ビタミンEを与えたグループでは、試験終了の時点で、収縮期血圧に24%、拡張期血圧に12.5%の低下が見られました。プラセボグループでは、こうした測定値に実質的な変化はありませんでした。ビタミンEによって内皮細胞が保護され、血管を弛緩させる作用がある一酸化窒素の生成量が増加した、と研究グループは推測しています。(Boshtam M, et al., Vitamin E can reduce blood pressure in mild hypertensives. Int J Vitam Nutr Res. 2002 Oct;72(5):309-14.)


実践的ガイドライン

天然のビタミンE(合成型であるdl-α-トコフェロールではなく、d-α-トコフェロール)を摂れば、患者の血圧抑制に役立つ可能性があります。私は、1日当たり200~400 IUの量を摂ることをお勧めしています。神経疾患がある人は、もっと多く摂ると良いでしょう。様々な形態のビタミンEのバランスを自然に保つため、相当量のγ-トコフェロールを含めることも重要です。


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