ドクターからの『毎月健康ニュース』2009年12月号

ドクタージャンスンから毎月届くニュースレター。
話題になっている医療ニュースからビタミン療法、ヘルシーレシピまで、幅広いトピックでお送りします。
ドクタージャンスンは、サプリメントだけでなく、食生活、運動、ストレス緩和の最新の情報から、みなさんがヘルシーなライフスタイルをご自分で築いていくことを、願っています。
2009年12月号米国最高峰の医療機関の研究など
今月の話題:
ナイアシンとスタチン系薬剤
筋力があるとアルツハイマー病のリスクが低下
低脂肪食が前立腺ガンのリスクを低減
アセトアミノフェンによる喘息の増加
手根管症候群に有効なα-リポ酸・γ-リノレン酸
ケルセチンの血圧低下作用
ナイアシンとスタチン系薬剤
ジョンズ・ホプキンス・メディスン(訳註:米国最高峰の医療機関)が発表したニュース記事によると、スタチン系薬剤を服用している患者の処方計画にナイアシンを追加しても、動脈壁厚の新たな減少効果が見られなかったということです。それによって頸動脈疾患が好転することも、その進行が遅くなることさえもなかったのです。(Johns Hopkins Medicine, November 18, 2009 Vitamin B niacin offers no additional benefit to statin therapy.) この種の報告には、若干の注釈が必要です。
ナイアシンは、最も優れた高コレステロール治療剤の一つであり、他にも心臓に効用があるということは50年前から知られています。2005年に行われたある研究レビューでは、ナイアシンにより、アテローム性動脈硬化を促進するコレステロール分画(LDLとVLDL)およびリポ蛋白(a)の値がすべて低下し、また、保護作用があるHDLコレステロールの値が、他の治療剤を使った場合よりも高くなったと結論付けています。また、ナイアシンを摂ることにより、アテローム性動脈硬化の進行が遅くなり、心臓発作が減少し、心臓疾患による死亡率が低下します。(Carlson LA, Nicotinic acid: the broad-spectrum lipid drug. A 50th anniversary review. J Intern Med. 2005 Aug;258(2):94-114.)
他の臨床試験では、ナイアシンが心臓疾患による死亡率を下げ、善玉であるHDLの破壊を抑制しながら肝臓でのトリグリセリド産生を妨げることが確認されています。(Malik S, Kashyap ML, Niacin, lipids, and heart disease. Curr Cardiol Rep. 2003 Nov;5(6):470-6; Shepherd J, et al., Nicotinic acid in the management of dyslipidaemia associated with diabetes and metabolic syndrome.. Curr Med Res Opin. 2005 May;21(5):665-82.; and Canner PL, et al., Benefits of niacin in patients with versus without the metabolic syndrome and healed myocardial infarction (from the Coronary Drug Project). Am J Cardiol. 2006 Feb 15;97(4):477-9.)
前述した最近の報告では、すでにナイアシンを摂っている患者にスタチン系薬剤を追加したら、ナイアシンしか摂っていない場合と比べて新たな効果が得られるか否かの評価は行っていませんでした。ナイアシンはスタチン系薬剤よりも安全ではるかに安価である(かつ、他の病気にも効果がある)ため、こうした評価を行えば、もっと有益な研究になったと思われます。
ジョンズ・ホプキンス・メディスンによる別の報道発表によると、この機関はナイアシンに関する研究を早々に打ち切るということです。ナイアシンには効果があるにもかかわらず、編集執筆者によると、心臓疾患の治療や予防の焦点は、食事、体重管理、運動に加えて、コレステロール、血圧および抗血小板作用の薬物療法に当てるべきということであり、この研究ではナイアシンにより善玉のHDL値が増加した(一方でスタチン系薬剤ではHDL値が低下した!)にもかかわらず、治療の第一選択肢を、ナイアシンでなく、スタチン系薬剤とすべきであると述べています。(Johns Hopkins Medicine, News Release November 15, 2009, Heart experts say early end to key study on benefits of niacin.premature.)
サプリメント(この場合はナイアシン)は、その効果を示す証拠が多くあり、低価格で安全であるというのに、サプリメントに対する偏見があることは明白です。この研究にて、「すでにナイアシンを摂っている患者には、スタチン系薬剤を加えても心臓への新たな効用がない」と述べているのを見たい気もします。
筋力があるとアルツハイマー病のリスクが低下
新しい前向き研究により、筋力の維持と、アルツハイマー病の発症リスクには関係があることがわかりました。この研究グループは、研究開始の時点で認知症がなかった900人を超える被験者の評価を行い、各自の筋力を測定して9種類の筋力グループに分けて、複合筋力のスコアを示しました。
被験者の平均追跡期間は3.6年間で、その間に138人がアルツハイマー病を発症しました。調査開始時での複合筋力が高かったどのグループでも、アルツハイマー病のリスクが43%低くなっていることがわかりました。体格指数、身体活動度、肺機能、血管疾患といった他の変数を調整しても、筋力とアルツハイマー病のリスク低減との関連は引き続き見られました。(Boyle PA, et al., Association of muscle strength with the risk of Alzheimer disease and the rate of cognitive decline in community-dwelling older persons. Arch Neurol. 2009 Nov;66(11):1339-44.)
この研究グループは、アルツハイマー病の前兆である軽度認識障害の測定も行っており、複合筋力が高いグループでは認識障害も少ないことがわかりました。筋力が高かったどのグループでも、軽度認識障害のリスクが33%低くなっていました。筋力が最も高かったグループでは、筋力が最も低かったグループと比較して、リスクが48%低くなっていました。レジスタンストレーニング(たとえばウエイトやエクササイズ用ゴムバンドを使うもの)を実践して筋力を維持すれば、楽しい趣味にもっと参加できるようになったり、日常生活での普段の活動(食料品や子どもを持ち上げるようなこと)に対処する能力が高まるなど、他の効果も得られます。
低脂肪食が前立腺ガンのリスクを低減
ある研究グループが、それまで何の療法も受けていなかった前立腺ガンの男性18人について調査し、低脂肪食(カロリーの15%が脂肪の食事)を摂るグループか、食物繊維を多く摂り大豆蛋白のサプリメントも摂るグループ、もしくは脂肪の含有量が40%という典型的な西洋式の食事を摂るグループのいずれかに、無作為に分けました。被験者は上記のプログラムを4週間実践し、研究グループは、調査開始時および介入後に血清を集めて、前立腺特異抗原(PSA)、性ホルモン、インスリン、インスリン様増殖因子および脂質の測定を行いました。(Aronson WJ, et al., Growth Inhibitory Effect of Low Fat Diet on Prostate Cancer Cells: Results of a Prospective, Randomized Dietary Intervention Trial in Men With Prostate Cancer. J Urol. 2009 Nov 13. [印刷に先行した電子出版])
次に、種々のグループの介入前と介入後の血清が含まれている媒体の中で前立腺ガン(LNCaP)細胞を培養しました。低脂肪食を実践していたグループから採取した血清では、LNCaP細胞の増殖が36%少なくなっていました。この論文執筆者の推測によると、前立腺ガンのリスクは、他の研究で示されているとおり、西洋式の食事(ならびに座っていることが多いライフスタイル)によって増加し、血清中のホルモンとガン増殖因子の変化がその原因として考えられるということです。
この研究グループによると、低脂肪食を実践していたグループでは、中性脂肪とオメガ6系脂肪酸の値が低く、オメガ3系脂肪酸の値が比較的高かったということです。オメガ6系脂肪酸に対するオメガ3系脂肪酸の比率が良いほど、血清で刺激されたLNCaPガン細胞の増殖低下との相関が見られました。
アセトアミノフェンによる喘息の増加
アスピリンの代用薬であるアセトアミノフェン(タイレノール)は、アスピリンよりも安全であると考えられているため、よく子どもに投与されます。その一方で、アセトアミノフェンを使用している人々の間で喘息が増加していることを示す研究を時々見かけます。ただ、データには矛盾が見られます。ある新しい報告では、合計425,140人の被験者に関する19の研究(分野横断的研究、コホート研究および患者対照研究)の評価を行っています。(Etminan M, et al., Acetaminophen use and the risk of asthma in children and adults: a systematic review and metaanalysis. Chest. 2009 Nov;136(5):1316-23.)
統合分析の結果、喘息を発症する以前の年にアセトアミノフェンを使用した子どものグループでは、アセトアミノフェンを使用しなかったグループよりも、喘息の発症率が60%高いことがわかりました。生後1年以内にアセトアミノフェンを服用した場合、喘息のリスクは47%高くなっていました。また、この薬を服用した成人においても、喘息のリスクが高くなっていることがわかりました。
手根管症候群に有効なα-リポ酸・γ-リノレン酸
手根管症候群は、手首の内側にある繊維性組織導管の中を通っている正中神経が圧迫されることにより、親指と人差し指と中指に痛みを伴ううずきやしびれが生じるものです。反復動作による傷害によってこの繊維性組織が膨張するとも考えられるし、関節炎、糖尿病、肥満、および時にはその他の原因に関係しているとも考えられます。この神経障害の最も重症のケースでは、手術により治療する場合もありますが、他の治療法のほうが適しています。多くの場合、ビタミンB6(ピリドキシン)がきわめて有効です(通常は100~200 mg摂れば十分です)。
新しい研究では、他の栄養素も治療に有効であることがわかっています。イタリアのある研究グループは、中等度の手根管症候群がある被験者112人に対し、α-リポ酸とγ-リノレン酸の組合せか、ビタミンB群のマルチビタミン剤のいずれかを用いて処置を行いました。α-リポ酸の使用量は600 mg、γ-リノレン酸の使用量は360 mgとし、90日間投与しました。(Di Geronimo G, et al., Treatment of carpal tunnel syndrome with alpha-lipoic acid. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2009 Mar-Apr;13(2):133-9.)
研究終了の時点では、α-リポ酸とγ-リノレン酸を摂っていたグループでは、症状の軽減と機能的能力の改善が見られ、筋電図検査の結果も良くなっていました。マルチビタミン剤を摂ったグループでも、症状と機能のスコアに有意な改善が見られましたが、α-リポ酸とγ-リノレン酸の組合せを摂っていたグループほど顕著な改善ではありませんでした。
α-リポ酸とγ-リノレン酸の組合せとビタミン製剤の両方を患者に投与したらどうなるか知りたいとも思います。マルチビタミン剤の1日量には、ビタミンB1(チアミン)が100 mg、ビタミンB6が150 mg、ビタミンB12(コバラミン)が500 mcg含まれているため、十分な相乗効果が得られる可能性はあります。
ケルセチンの血圧低下作用
バイオフラボノイドであるケルセチンに関する研究レビューにて、ケルセチンには血圧抑制などの効果もあることがわかりました(ケルセチンは、リンゴや黄玉ネギにほのかな薄黄色をもたらしているもので、緑茶と紅茶にも含まれており、その他の多くの食品にも少量含まれています)。このレビューの執筆者によると、数種類の動物実験にて、ケルセチンにより、段階的で持続的な血圧低下が引き起こされたということです。(Perez-Vizcaino F, Antihypertensive effects of the flavonoid quercetin. Pharmacol Rep. 2009 Jan-Feb;61(1):67-75.)
代謝症候群のラットモデル(糖分と脂肪分が多い食事を与えた肥満ラット)では、ケルセチンにより、心臓、血管および腎臓における身体的障害と機能的障害が予防されました。また、この研究グループは、軽度の高血圧症の人が高用量のケルセチンを摂った場合に有意な血圧低下が見られたと報告しています。これは、果物と野菜を多く含む食事によって血圧が下がる理由の一つとして、ケルセチンの効果が考えられることを示唆しています(その他に、こうした食事にはビタミンCやカリウム、マグネシウムが含まれていることも、血圧低下の説明に役立つ別の理由として考えられます)。
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