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2015年06月24日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2015年5&6月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2015年5&6月号非ステロイド性抗炎症剤と脳卒中による死亡との関連

今月の話題
非ステロイド性抗炎症剤と脳卒中による死亡との関連
ビタミンは脳卒中のリスク低下に役立つ 
マグネシウムは糖尿病のリスクを下げる 
全粒穀物による死亡率の低下
膵臓ガンのリスクを下げる栄養素





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非ステロイド性抗炎症剤と脳卒中による死亡との関係

最近開発された選択性の非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)の一部に、脳卒中による死亡リスクが高くなるという関連が見られています。こうした新型の薬には、ジクロフェナク(商品名「ボルタレン」)や、エトドラク(商品名「ロジン」)などがあります。アスピリンやイブプロフェンなど、旧型の薬には、こうしたリスクとの関連は見られませんでした。上記の薬は、骨関節炎と関節リウマチの両方の治療薬としてよく使われており、痛みと炎症の両方を軽減します。

デンマークで行われた新しい研究によって、こうしたリスクの一部が明らかになっています。その研究グループは、医療データベースを用いて全国的な集団ベース研究を行い、2004年から2012年までの間、初回脳卒中による入院数と、その後の死亡率を突き止めました。彼らは100,043人の患者の記録を調べ、入院前60日以内にNSAIDの処方を受けていた患者はNSAID使用者として分類、その他は非使用者と元使用者に分類しました。また、調査の時点でNSAIDを使用していた患者(=現使用者)については、さらに、新規使用者と長期使用者に分類しました。そして、投与後30日以内に死亡した患者数を調べました。

その結果、虚血性脳卒中患者のうちNSAIDの現使用者であったグループの全死亡率は、非使用者と比較して19%高いことがわかりました。こうした結果の大半を占める理由として、新規使用者では死亡リスクが42%高くなっていました。これは、「ロジン」で53%のリスク増加、「ボルタレン」で28%のリスク増加が見られたためです。元使用者のグループでは、脳卒中のリスクは増えていませんでした。また、非選択性の旧型NSAID(「モトリン」や「アドビル」という商品名のイブプロフェンなど)にも、脳卒中のリスク増加との関連は見られませんでした。(Schmidt M, et al., Preadmission use of nonaspirin nonsteroidal anti-inflammatory drugs and 30-day stroke mortality. Neurology 2014 Nov 25;83(22):2013-22.)

実践的ガイドライン

新薬は、旧型の薬より明らかに優れている場合もあれば、そうでない場合もあります。鎮痛効果や抗炎症効果を評価するなら、アスピリンやイブプロフェンを使っていれば、(胃腸出血を伴う場合もありますが)他のリスクを高めることなく、その役割を果たしたかもしれません。関節炎の痛みと腫れについては、魚油や、ビタミンC、クルクミン、ショウガ、ボスウェリア、ビタミンE、ブロメライン(パイナップル由来の酵素)を摂るというような非薬物療法によっても軽減できる可能性があることが、いくつかの研究でわかっています。

関節リウマチの治療に要したビタミンEの用量は、1日1,200~1,800 IUでした。魚油の通常用量は、EPAとDHAを足して3,000 mg、ブロメラインの通常用量は、3,000 mcu(mcu=ミルク凝固単位)を1日3回です。私はいつも、ビタミンCとビタミンE、ならびにクルクミンを摂っており、傷害対策として必要なときはボスウェリアと魚油をこれに加え、また時々、ブロメラインを摂ります。



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ビタミンは脳卒中のリスク低下に役立つ

もとより、脳卒中を完全に防ぐことができるのなら、薬剤による脳卒中死亡のリスクなど、それほど重要でありません。脳卒中を防ぐ方法の一つは、健康的な生活を送ることです。つまり、野菜と果物を多く摂る食事をして、豆類、全粒穀物、種子類、ナッツ類も摂ること、定期的に運動すること、体重を管理すること、そしてストレスを減らすことです。これはすべて、正常血圧の維持にも役立ち、結果的に、脳卒中のリスクも低くなります。サプリメントを摂ることも、予防に役立つ可能性があります。

日本で行われた、ある新しい研究では1988~1990年における各調査の開始時点で循環器疾患もガンもなかった男女72,180人の追跡調査を行い、脳卒中のリスクと、マルチビタミン剤の使用との関連性について調べました。被験者の追跡期間は19年で、その間に、脳卒中による死亡は2,087件確認されました。そのうち、虚血性脳卒中(動脈閉塞によるもの)は1,148件、出血性脳卒中(出血によるもの)は877件でした。

統計分析の結果、マルチビタミンを使用していた被験者グループでは、虚血性脳卒中のリスクに、20%という統計的に有意な低下が見られました。一方、出血性脳卒中のリスク低下率は4%と、有意なものではありませんでした。こうした関連性は、マルチビタミン剤を随時していたグループよりも、常用していたグループで、とくに顕著に見られました。全体では、虚血性と出血性の両方の脳卒中を組み合わせた場合に脳卒中のリスクが13%低くなっていました。最も有意な効果が見られたのは、果物と野菜の摂取量が少なかったグループでした。(Dong JY, et al., Multivitamin use and risk of stroke mortality: the Japan collaborative cohort study. Stroke. 2015 May;46(5):1167-72.)

実践的ガイドライン

マルチビタミン剤の摂取は、慢性疾患(この場合は脳卒中)に対する備えの一助となります。しかし、上記の研究から、果物と野菜をたくさん食べるとマルチビタミン剤によるこうした特定の効果が低下する場合があることがわかります。とはいえ、他の諸研究により、マルチビタミン剤を含め、習慣的なビタミン摂取には、他の効果もあることがわかっています。私は、果物と野菜を豊富に含む食事をしていますが、それでも、総合的なマルチビタミン剤を常用しています。



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マグネシウムは糖尿病のリスクを下げる

マグネシウムは、食事に含まれる重要な主要ミネラルの一つであり、300を優に超える酵素系がそれに依存しています。マグネシウムは、(カルシウムとともに)骨形成にとって不可欠であり、ビタミンB群の活性化、筋肉の弛緩、およびエネルギー生産にも欠かせません。また、インスリンの分泌と活性にも不可欠であるため、糖尿病患者には重要です。マグネシウムは、濃い緑色の葉野菜に豊富に含まれており(クロロフィルの中心原子がマグネシウムなので緑色になります)、その他にも、全粒穀物、豆類、ナッツ類にも含まれています。(豆腐は、塩化マグネシウムを凝固剤として用いて作られることが多く、そうした物には、さらに多くのマグネシウムが含まれます)。典型的な量産食品を摂る食事では、マグネシウムの摂取量が少なかったり基準に達しなかったりすることがよくあります。こうした食品は世界中でどんどん普及しています。米国の大人の場合、1日のマグネシウム所要量より100~200 mg不足しているのが一般的です。

ある研究グループが、2001~2010年の全米健康栄養調査(NHANES)から得られたデータを取り出し、19歳以上の男女14,388人におけるマグネシウム摂取量と糖尿病のリスク因子との関係を調べました。その結果、食品とサプリメントの両方からのマグネシウム摂取量が多いほど、肥満度が低く、腹囲が細く、HDLコレステロール値が高く、メタボリックシンドロームが少なく、収縮期血圧が低いという関連が見られました。(Papanikolaou Y, et al., (2014) Dietary magnesium usual intake is associated with favorable diabetes-related physiological outcomes and reduced risk of metabolic syndrome: An NHANES 2001-2010 analysis. J Hum Nutr Food Sci 2014 October 15;2(3): 1038.)

実践的ガイドライン

マグネシウムを豊富に含む食事は、野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ類(とくにアーモンド)および種子類(ゴマなど)を豊富に含むものであるため、様々な効果をもたらしそうです。しかし、食事から摂るマグネシウムについて推奨されている量は、多くの専門家が適正と考える量より低く、このような理由から、マグネシウムのサプリメントを摂ると役立つ可能性が高いと思われます。私は、クエン酸マグネシウムやリンゴ酸マグネシウムと同じく吸収の良い形態であるアスパラギン酸マグネシウムを200 mg摂っています。炭酸マグネシウムや酸化マグネシウムは、それほど吸収が良くありません。



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全粒穀物による死亡率の低下

全粒穀物と穀物繊維については、多数のいわゆる専門家が、予防手段というより多くの疾患の原因となっていると示唆していますが、全粒穀物と穀物繊維の摂取量は、慢性疾患の発症リスクと反比例の関係にあり、実際に、ガン、循環器疾患、糖尿病、肥満および高血圧のリスクを下げます。最近公表されたある研究で、全粒穀物の摂取量と、全死亡率ならびに疾患別死亡率との関係を究明しようとしたものがあります。この研究には、NIH-AARP(米国国立衛生研究所の全米退職者協会)による食事健康調査の参加者で、1995年に登録され2009年まで追跡された367,442人のデータが含まれました。

平均追跡期間は14年で、その間に46,067件の死亡が記録されました。全粒穀物の摂取量が最も少なかった被験者グループと比較して、その摂取量が最も多かったグループでは、原因を問わない死亡のリスクが17%低くなっていました。疾患別の死亡リスクの低下率は、11%~48%の範囲にありました。一方、穀物繊維の摂取量が最も多かったグループでは、原因を問わない死亡のリスクは19%低くなっており、疾患別の死亡リスクの低下率は15%~34%の範囲にありました。この研究の論文執筆者は、全粒穀物の摂取量を増やすことと、精製炭水化物(主に精白小麦と白砂糖)の摂取量を減らすことを提言しています。(Huang T, et al., Consumption of whole grains and cereal fiber and total and cause-specific mortality: prospective analysis of 367,442 individuals. BMC Med. 2015 Mar 24;13:59.)

同じような結果が得られた、全粒穀物関連の別の研究について、英語版2月号(日本語版3月号)でご紹介しましたが、上記の研究結果はそれに加わるものです。そのときご紹介した前向き研究は、11,800人超の男女を対象として26年間追跡したもので、その結果、全粒穀物の摂取量が最も多かったグループでは、最も少なかったグループと比較して、総死亡率は9%、循環器疾患による死亡率は15%低くなっていました。その研究では、他の研究とは違い、ガンによる死亡率の低下は見られませんでした。

実践的ガイドライン

私が全粒穀物の効果を初めて認識したのは1970年代前半で、臨床医として開業する前でした。それ以来、私は、精白小麦粉と白米(ならびに砂糖やその他の過度に加工された食品)を摂らないようにしています。患者さんにも、その後ずっと、同じことを勧めています。

全粒穀物をおいしく、健康に良いように調理する方法はたくさんあります。全粒穀物には、全粒小麦、玄米、トウモロコシ、ライ麦、オート麦、大麦、キビ、キノア(人気上昇中の多用途穀物)などがあります。ソバの実、アマランスおよびワイルドライスは、厳密には穀物ではありませんが、調理性と栄養的な側面が穀物と似ているため、穀物の仲間に関連付けられています。オートミールは、シンプルな全粒穀物食の一つであり、これにナッツやレーズン、バナナなどの食材を加えれば、多彩な味が楽しめます。

私の同僚の中には、穀物一般、とくに小麦について、脳の変性をはじめとする慢性疾患との関連で、危険の原因となるという主張を大々的に書いている人もいます。確かに、小麦、ライ麦、大麦、カムート小麦、スペルト小麦に含まれるタンパク質の一種であるグルテンに重度の過敏性を持つ人はいますが、上記のような見解は、疫学研究や前向き分析によるデータによる裏付けがありません。

グルテン過敏症(セリアック病)の発症率は、北米人口の約1%ですが、診断されていないケースもあるため、実際の発症率はもう少し高いかもしれません。グルテンとは無関係の穀物過敏症を持つ人もいるようで、その場合、対象の穀物を避けると気分が良くなるようです。(実際、穀物の他にも、あらゆる種類の食品について、アレルギーや過敏症の人はたくさんいます。) こうしたごく少数のセリアック病の人にとっては、グルテンフリーの製品を入手できることが重要ですが、そうした食品に当てられる市場スペースは、危険にさらされている人々の数に釣り合っていません。また、そうした食品の場合、なくしたグルテンの味や質感、口当たりのようなものをメーカーが再現しようとして、砂糖など、健康に良くない材料が入っているがよくあります。グルテンを避けるのと同じくらい、オーガニック食品を買うことにも関心を持っていただけたら、と思います。



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膵臓ガンのリスクを下げる栄養素

「欧州におけるガンと栄養素に関する前向き研究」(EPIC)から得られたデータにより、特定の栄養素が膵臓ガンのリスクを下げる可能性があることがわかっています。ある研究グループが、膵臓ガン患者446人について調べ、マッチングにより446人の対照群を設定しました。そして、血漿中のカロテノイド(α-カロテン、β-カロテン、リコピン、β-クリプトキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチンおよびルテイン)、α-トコフェロール、γ-トコフェロール、レチノールおよびビタミンCの値を測定し、多変量解析を用いて調整した後、膵臓ガンのリスク評価を行いました。こうした変量には、血液採取時の年齢、性別、絶食状態、ホルモン剤の使用、ならびに喫煙歴、腹囲、糖尿病の状態が含まれました。

その結果、β-カロテン値が最も高かったグループでは、最も低かったグループと比較して、膵臓ガンのリスクが48%低くなっていました。ゼアキサンチンについても、同様の比較にて47%のリスク低下が見られました。また、α-トコフェロールの値が高かったグループでは、膵臓ガンのリスクが38%低くなっていましたが、これは、完全には統計的に有意な域に達していると言えません。(Jeurnink SM, et al., Plasma carotenoids, vitamin C, retinol and tocopherols levels and pancreatic cancer risk within the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition: a nested case-control study: plasma micronutrients and pancreatic cancer risk. Int J Cancer. 2015 Mar 15;136(6):E665-76.)

以前に行われた研究で、膵臓ガンのリスクと栄養素の摂取量との関連を調べたものがあります。その結果によると、食事日記の内容にもとづいて、ビタミンC、ビタミンEおよびセレンの摂取量が上位4分の3にあると判断されたグループでは、下位4分の1とされたグループと比較して、膵臓ガンの発症リスクが67%低くなっていました。ビタミンCについては、血清ビタミンC値が高いグループでは33%リスクが低いという関連が見られましたが、これは、被験者の食事日記と相関していませんでした。(Banim PJ, et al., Dietary antioxidants and the aetiology of pancreatic cancer: a cohort study using data from food diaries and biomarkers. Gut. 2013 Oct;62(10):1489-96.) 食事日記にサプリメントが含まれていたか不明であるため、血清ビタミンC値のほうが、より正確にビタミンC摂取量を反映していることになります。

実践的ガイドライン

重要な微量栄養素を豊富に含む食事が疾患のリスク低下と関係していることが、ここでも示されています。ビタミンCとビタミンE、ならびにカロテノイド、セレン、トコフェロールの血中値をさらに高めるサプリメントを摂れば、ガンを含め、慢性疾患の予防にさらに大きな効果が得られる可能性は十分にあります。


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