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2015年06月12日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2015年12&1月 Winter号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。

今月の話題
・ビタミンD値が高いほど下がる死亡率
・ビタミンDが認知症のリスクを下げる可能性
・心房細動に対する運動の効果と肥満の影響
・股関節部骨折のリスクを下げるビタミンE
・ナイアシンとリポタンパク




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ビタミンD値が高いほど下がる死亡率

新しい研究で、血清中のビタミンD値と、全死亡率、循環器疾患、呼吸器疾患、ガンおよび骨折との関係を調べたものがあります。これは、英国のノーフォーク地方に住む42~82歳の男女14,641人を対象とした13年間の集団調査にもとづく前向き研究で、その調査は1997年に始まり、2012年まで続きました。被験者は、25-ヒドロキシ・ビタミンD3(25(OH)D)としてのビタミンD値に応じて5等分されました。各グループの数値は、12 ng/mL(ナノグラム/ミリリットル)未満、12~20 ng/mL、20~28 ng/mL、28~36 ng/mL、36 ng/mL以上というものでした。

その結果、最下位グループと比較して、ビタミンD値が高いほど、原因を問わない全死亡率が低くなる有意な傾向が見られました。下から2番目のグループでは、死亡リスクが最下位グループより16%低く、最上位のグループでは34%低くなっていました。多変量解析を用いて調整した結果、25(OH)D値が8 ng/mL増えるごとに、全死亡率は8%低下、心疾患については4%、呼吸器疾患は11%、骨折は11%少なくなると計算されました。一方、ガンとの関連は見られませんでした。(Khaw KT, et al., Serum 25-hydroxyvitamin D, mortality, and incident cardiovascular disease, respiratory disease, cancers, and fractures: a 13-y prospective population study. Am J Clin Nutr. 2014 Nov;100(5):1361-70.)

死亡率の低下率が最も大きかったのは、ビタミンD値が36 ng/mL以上であったグループでした。48 ng/mLを超えていた被験者は全体の1%もいませんでしたが、高ビタミンD値が多少なりとも死亡率の増加に関連していることの証拠は、全く見られませんでした。ビタミンD評議会によると、ビタミンD値は 30 ng/mLを下回ると不足とみなされ、最適値は、出典によって異なり30~100 ng/mLの範囲に及んでいます。150 ng/mLを超えると有毒値とされます。


実践的ガイドライン

私はいつも、40~80 ng/mLを理想的な範囲としているので、36 ng/mLという目標値は低いように思われます。ビタミンD評議会は、40~80 ng/mLを十分な範囲として推奨しています。血液検査を受けて自分のビタミンD値を知り、サプリメントで十分な量のビタミンDを摂って、50 ng/mLという理想的な数値まで高めることが大切です。十分なビタミンDを食事と日光だけから摂るのは難しく、とくに、年齢を重ねたり、緯度の高い地域に住んでいたりする場合はそうです。合成のビタミンD2ではなく、必ず、天然のビタミンD3を摂りましょう。

研究論文にあるビタミンD値を自分の血液検査結果と比較する場合は、検査数値の単位と研究での単位が同じであるか注意して確かめましょう。血清値の単位であるナノグラム/ミリリットル(ng/mL)は、ナノモル/リットル(nmol/L)とは異なります。例えば、10 ng/mL=25 nmol/Lです。研究報告の多くは、nmol/Lを用いています。また、血液検査では、1,25(OH)2Dではなく25(OH)D3を調べることを確認しましょう。




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ビタミンDが認知症のリスクを下げる可能性

ビタミンDに関する別の新しい研究によると、ビタミンDは、認知症とアルツハイマー病のリスクを下げる可能性があるということです。この研究は、調査の開始時点で認知症も循環器疾患も脳卒中もなかった高齢通院患者1,658人について調べ、平均5.6年間追跡したものです。追跡期間中、原因を問わない認知症の発症者は171人で、そのうち102例はアルツハイマー病でした。(Littlejohns TJ, et al., Vitamin D and the risk of dementia and Alzheimer’s disease. Neurology 2014 Sep 2;83(10):920-8.)

重度の欠乏症と見なされたグループでは、ビタミンD値が10 ng/mLを下回っており、ビタミンD値が20 ng/mL以上であったグル―プと比べて、原因を問わない認知症の発症リスクが2.25倍高くなっていました。ビタミンD値が10~20 ng/mLの範囲にあったグループでは、20 ng/mL以上であったグル―プと比べて、そのリスクが53%高くなっていました。アルツハイマー型認知症のリスクについては、ビタミンD値が欠乏域(10 ng/mL未満)にあったグループでは2.22倍になっていました。10~20 ng/mLのグループでは、20 ng/mL以上のグル―プと比べて、そのリスクが69%高くなっていました。


実践的ガイドライン

上記の研究をはじめとする多くの研究結果から、ビタミンDは、骨の健康維持だけでなく、それをはるかに超えた役割を果たすことは明らかです。私が勧めているのは、この2つめの記事にあるとおり、ビタミンD評議会の推奨範囲内にビタミンD値を保つことです。そのためには1日5,000 IUをサプリメントで摂ることをビタミンD評議会は推奨していますが、これはかなり変わりやすいので、自分の必要量はそれより多い場合も少ない場合もあります。

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心房細動に対する運動の効果と肥満の影響

心房細動は、最も一般的な心不整脈です。左心房(左心室に隣接する心腔)は通常、電気信号を伝えるその特殊な繊維組織の一部を介して拍動を起こします。 様々な原因によって、左心房が、拍動する代わりに小刻みに震えると、左心室がその「代理として」自己の拍動を始めてしまいます。その拍動は不規則であり、非常に速い場合も多く、また、収縮を完全に調整する機能がないため、心臓機能全体の効率は、正常時ほど良くありません。症状としては、動悸、倦怠感、息切れが考えられますが、全く症状がない場合もあります。心房細動が(数分から数日に至るまで)様々な期間にわたって断続することもあり、これは発作性心房細動と呼ばれます。また、たとえ電気ショックや薬剤で解消することができても、永続性心房細動となったり、細動が持続したりする場合もあります。

心房細動の最中、拍動していない心房に血液が溜まって血塊ができることがあります。時として、こうした血塊が移動し、脳に送られたり(脳卒中)、腹部器官に送られたりする場合があります。そのため、持続性心房細動がある人(1週間以上持続し、他にもリスク因子がある人)には通常、抗凝固薬(クマディン、通称ワルファリン)が処方されます。この薬は、確かに一部の殺鼠剤の活性成分として使われていますが、正しい量で使用すれば、心房細動患者における血塊関連の脳卒中リスクが実際に下がります(ただし、出血や青アザ、または出血による脳卒中のリスクはわずかに高くなります)。クマディンより新しい薬には、血液凝固を抑制する作用もありますが、はるかに高価であり、クマディンほど使用年数が長くありません。また、クマディンは、血液凝固におけるビタミンKの作用を抑制することによって効くことから、ビタミンKを摂ることは、過度の出血を防ぐ手段となります。こうした新しい薬には、予防効果はありません。

肥満は、心房細動の発症に対する独立したリスク因子です。ウーマンズ・ヘルス・イニシアティブ(米国の国立衛生研究所による、女性の健康に関する研究調査)にて、閉経後の女性93,676人を平均11.5年追跡した調査が行われました。ここでは、肥満と身体活動度との相互作用、ならびにそうした相互作用と心房細動の発症率との関連性を調べるため、被験者の入院記録、メディケア(米国の高齢者向け医療保険制度)の支払請求書による診断コードを用いて被験者の分析が行われました。被験者の一部は、すでに心房細動の罹患歴があった、データが揃っていない、または低体重であるという理由で除外されました。残りの女性81,317人の平均年齢は63.4歳で、そのうち、アフリカ系アメリカ人の割合は7.8%、スペイン系アメリカ人の割合は3.6%でした。このグループ全員のうち、9,792人が心房細動を発症しました。

この調査では、体格指数(BMI)が高いほど、また、身体活動度が低いほど、心房細動のリスクが増加するという独立した関連性が見られました。肥満である被験者の中では、身体活動度が高いほど、体重に伴う心房細動のリスクが低くなっていました。(Azarbal F, et al., Obesity, physical activity, and their interaction in incident atrial fibrillation in postmenopausal women. J Am Heart Assoc. 2014 Aug 20;3(4).) 1日30分ほど速足で歩いたり、少し自転車に乗ったりするだけでも、効果はあります。肥満の被験者グループでは、身体活動度が上がるたびに、心房細動の予防効果が大きくなっていました。一方、それほど肥満度が高くないグループでも、いくらかの効果が見られました。こうした研究が行われる前は、運動が心房細動を引き起こすのでは、という懸念が一部ありましたが、この研究は、その反対であることを示しています。


実践的ガイドライン

周知の事実ですが、運動は、慢性疾患の予防に最も役立つ生活習慣改善策の一つです。ウォーキングも、サイクリングも、ランニングも、ダンスも、ガーデニングも、家事もすべて、週の全活動時間にプラスされます。運動量が多いほど、多くの効果が得られますが、自分の体を守るためには、マラソンや真剣な競技をしなければならないわけではありません。運動は、炎症、インスリン抵抗性、高血圧、血中脂質異常、内皮機能不全というような他のリスク因子の低減にも役立ちます。こうした効果は、体重減少とは別ものですが、体重減少との関連はよく見られています。

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股関節部骨折のリスクを下げるビタミンE

食事とサプリメントでビタミンEを摂ると、慢性疾患の症状軽減や予防に多くの効果があり、心臓関連死、間欠性跛行(動脈硬化による歩行時の足の痛み)、関節リウマチ、パーキンソン病、アルツハイマー病にも効果があることがわかっています。ある新しい研究によると、股関節部骨折のリスクを下げる可能性もあるということです。この研究は、65~79歳の男女21,774人について調べ、最長11年間追跡したもので、後に股関節部骨折を経験した被験者1,168人の調査開始時における血清ビタミンE(α-トコフェロール)値に注目し、股関節部骨折のなかった被験者から無作為に抽出した被験者1,434人の数値と比較する方法で行われました。

このノルウェーの研究では、血清ビタミンE値は22.6~38.3マイクロモル/リットル(μmol/L)という範囲にあり、骨折リスクとは反比例の関係が見られました。血清ビタミンE値が下位4分の1にあったグループでは、股関節部骨折のリスクが、上位4分の1にあったグループより51%高くなっていました。(Holvik K, et al., Low serum concentrations of alpha-tocopherol are associated with increased risk of hip fracture. A NOREPOS study. Osteoporos Int. 2014 Nov;25(11):2545-54.) ビタミンEは、フリーラジカルによる損傷から細胞膜と血中脂質を守る強力な抗酸化物質です。酸化ストレスは、骨粗しょう症や骨折の一因と考えられており、こうした理由でもビタミンEは役立つ可能性があるのです。


実践的ガイドライン

サプリメントを摂らずに血清ビタミンE値を最高レベルに保つのはほとんど不可能です。ビタミンEを最も多く摂ることができる食品には、ヒマワリの種、アーモンド、ヘーゼルナッツ、ピーナツバター、ホウレンソウ、ブロッコリーなどがあります。上記の研究で用いられたα-トコフェロールは、ビタミンEの一つの形態に過ぎず、幅広い効果を得るためには、他の形態であるβ-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールも同じくらい重要、もしくはもっと重要かもしれません。私は、γ-トコフェロールを多く含む混合型のトコフェロールを1日400~800 IU摂ることを勧めています。ビタミンEと死亡率増加との関連を示唆した研究が数年前にありましたが、これは分析方法が不正確で報告内容が不十分であったため、信頼することができません。

神経疾患の場合は、もっと用量を増やすよう勧めています。いくつかの研究で、パーキンソン病の治療を目的として1日当たり3,200 IUのビタミンEが(3,000 mgのビタミンCと併せて)用いられ、そのサプリメント投与によって、投薬治療が必要となる時期が2.5年遅くなることがわかっています。アルツハイマー病については、2,000 IUのビタミンEか薬剤(セレギリン)のいずれか、もしくはその両方を被験者に与えて、死亡、施設収容、機能低下または重度認知症という転帰について調べた研究があります。その結果、ビタミンEのみを与えた場合のほうが、セレギリンのみを与えた場合やセレギリンとビタミンEを併せて与えた場合よりも効果があり、転帰の発生が約2年遅くなることがわかっています。

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ナイアシンとリポタンパク

リポタンパク(a)は、英語では「リポプロテイン・リトル・エイ」と呼ばれ(またはLp(a)と書かれ)、循環器疾患の独立リスク因子である血清脂質の一つです。血中リポタンパク値は、ほとんど遺伝によって決まりますが、エストロゲン、ナイアシン(ビタミンB3)、一部の複雑な治療法、高額もしくは実験的な治療法の影響を受けることがあります。生活習慣やスタチン薬による影響はありません(といっても、食事面と運動面での生活習慣の選択が循環器疾患のリスクに影響を及ぼすことは確かです)。(Bos S, et al., Latest developments in the treatment of lipoprotein (a). Curr Opin Lipidol. 2014 Oct 14. [印刷物に先行した電子出版]) 1955年以降に行われた諸研究により、ナイアシンは血清コレステロール値を下げ、HDLコレステロール値を上げることから、循環器疾患のリスク改善をもたらすことがわかっています。

遡って、1986年に公表された冠動脈疾患薬プロジェクトの報告内容によると、8,341人の男性を対象として6年間続けられた試験では、薬剤よりナイアシンのほうが心臓発作率を下げる効果が高かったということです。その試験の終了から9年後である、15年間の追跡期間の終了時点では、ナイアシンを与えたグループはプラセボグループと比較して死亡率が11%低くなっていました。(Canner PL, et al., Fifteen year mortality in Coronary Drug Project patients: long-term benefit with niacin. J Am Coll Cardiol. 1986 Dec;8(6):1245-55.)

糖尿病患者におけるナイアシン療法について最近行われた研究レビューでは、ナイアシンにより、HDLコレステロール値は27%、LDLコレステロール値は25%、トリグリセリド値は39%低下したことがわかっています。(Ding Y, et al., Effect of niacin on lipids and glucose in patients with type 2 diabetes: A meta-analysis of randomized, controlled clinical trials. Clin Nutr 2014 Sep 28. pii: S0261-5614(14)00247-7. doi: 10.1016/j.clnu.2014.09.019. [印刷物に先行した電子出版].)

最近公表された別の研究では、ナイアシン療法がLDLコレステロール値とILDとIDL(中間比重リポタンパク)の有意な低下をもたらしたこと、および心臓発作の有意な低下との関連が見られたことが示されています。(Zambon A, et al., Effects of niacin combination therapy with statin or bile acid resin on lipoproteins and cardiovascular disease. Am J Cardiol. 2014 May 1;113(9):1494-8.)


実践的ガイドライン

ナイアシンは、ヒスタミンを突然放出させることから、約20~40分間にわたる皮膚の紅潮(フラッシング)を引き起こします。フラッシングは有害ではありませんが、不快な場合があります。持続放出型のナイアシンのほうが通例、フラッシングは少なくなります。また、ナイアシンを常用すると、耐性ができるため、フラッシングの発生頻度が減るか、または全く生じなくなります。「ノンフラッシュ」型のナイアシン(イノシトール・ヘキサニコチネート)は、フラッシングを生じることなく脂質低下に効果があると考えられていましたが、ヒトの場合はうまくいかないことが判明しました(とはいえ、ナイアシンがビタミンとしてもたらすその他の効果はほとんど得られます)。

私は、予防薬として、持続放出型のナイアシンを1日2回、500 mgずつ摂っていますが、精神上の健康効果を得るためなら、それ以上の量を摂るよう勧めることが多く、脂質改善の目的であれば、通例、1日2,000~3,000 mgを摂るよう勧めています。最初はもっと少ない量から初め、徐々に増やしていってもよいでしょう。それでも、常用するようになるまではフラッシングを経験するかもしれません。

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