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2015年05月01日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2015年2月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2015年2月号運動はパーキンソン病のリスクを下げる

今月の話題
運動はパーキンソン病のリスクを下げる
地中海式食事法がメタボリック・シンドロームに及ぼす効果
湾岸戦争症候群に対するコエンザイムQ10の効果
コエンザイムQ10は心臓手術後の合併症を減らす
心臓発作の治療法としてのカルニチン




運動はパーキンソン病のリスクを下げる

運動が脳と神経系にとって有益である理由は、気分が良くなるエンドルフィンが放出される、ということだけではありません。以前に行われた研究によると、運動は、ドーパミンに関係している脳の特定部位での神経保護効果をもたらすことがわかっており、このドーパミン(の減少)はパーキンソン病と関わりがあります。また、農薬がこうした神経系を損なう可能性があることを示している研究もあります。

新たに公表された研究で、43,368人の被験者を平均12.6年間追跡したものがあり、この追跡期間中に、286例のパーキンソン病が確認されました。男性では、運動量が低いグループと比較して、運動量が中程度のグループでは、パーキンソン病の発症リスクが45%低くなっていました。運動としての身体活動に含めたのは、家事、通勤、余暇運動の3つでした。余暇運動を除外して、通勤と家事の運動量のみを比較した場合、運動量が中程度のグループでは、運動量が低いグループと比較して、パーキンソン病の発症リスクが50%低いことがわかりました。(Yang F, et al., Physical activity and risk of Parkinson's disease in the Swedish National March Cohort. Brain. 2014 Nov 18. pii: awu323. [印刷物に先行した電子出版])

あるメタ分析の対象とされた過去の5つの研究に、上記の研究によるデータを合わせたところ、身体活動度が最も高かったグループは、身体活動度が最も低かったグループと比較して、パーキンソン病のリスクが34%低いことがわかりました。この研究グループの言う「中程度の活動」とは、家事と通勤の合計時間が1週当たり6時間のもので、「活動度が低い」というのは、その合計時間が週2時間未満のものでした。

実践的ガイドライン

運動には多くの効果がありますが、運動といっても、ジムで計画的にプログラムをこなすこととは限りません。家事やガーデニングなど、家で行うどんな運動でも、役立ち得るのです。ただし、週に最低量の運動をしなければ、効果は得られません。

米国では、通勤といっても、自宅ガレージの車に乗り込み、職場の駐車場まで運転して、そこからエレベーターを使ってオフィスに行く程度ですが、スウェーデンでの通勤は、それとは違うはずです。私が思うに、スウェーデンでは、徒歩通勤や自転車通勤が多く、車の場合でもおそらく駐車場への往復歩数はもっと多く、公共交通機関を使う場合にも徒歩が含まれます。上記の研究で、余暇運動はそれほどの大きな違いをもたらしていないようでした。これは単に、そうした活動は量が少なくても(週2時間でも)かなり効果がある、ということかもしれません。量が多いほど効果が増すわけではありませんでした。




地中海式食事法がメタボリック・シンドロームに及ぼす効果

地中海式食事法は、果物、野菜、豆類(マメ科植物)、全粒穀物、ナッツ類、種子類、魚類を豊富に含み、先進工業国における他の多くの食事と比べて獣肉と乳製品の量が少ない食事法です。スペインで最近行われたメタボリック・シンドローム関連の研究で、55~80歳の男女を対象としたPREDIMED試験のデータを解析したものがあります。メタボリック・シンドロームは、腹部肥満、高血圧、高血糖、高トリグリセリド、低HDLコレステロールのいくつかがある状態をいいます(シンドロームX、インスリン抵抗性とも呼ばれています)。

上記の研究では、全被験者5,801人のうち、試験の開始時点でメタボリック・シンドロームがあったのは3,392人でした。この被験者は、地中海式食事法にエクストラバージンオリーブオイルを追加して摂取するグループ、地中海式食事法にナッツ類を追加して摂取するグループ、低脂肪食の実践に関するアドバイスのみを受ける対照グループという3つの食事介入グループのいずれかに無作為に分けられました。試験の終了時には、各グループ間に有意な差が見られました。対照グループと比較して、地中海式食事法のいずれのグループでも、正常な代謝状態に戻っている可能性が高くなっていました。対照グループでは、メタボリック・シンドロームが続いている可能性が、他より28~35%高くなっていました。地中海式食事法は、腹部肥満の減少と、空腹時血糖の低下につながっていました。

2003年の試験開始時にメタボリック・シンドロームがなかった被験者1,919人のうち、4.8年の追跡期間中にメタボリック・シンドロームになったのは960人でした。このグループでは、メタボリック・シンドロームを発症する可能性という面で食事法による差があるようには見えませんでした。言い換えれば、低脂肪食は、メタボリック・シンドロームの発症を予防するという面では地中海式食事法と同じくらい効果があった一方、より正常な代謝状態に戻すという面では地中海式食事法ほどの効果はなかった、ということになります。(Babio N, et al., Mediterranean diets and metabolic syndrome status in the PREDIMED randomized trial. CMAJ. 2014 Oct 14. pii: cmaj.140764. [印刷物に先行した電子出版])

実践的ガイドライン

地中海式食事法は、健康的な生活を送るために私が提唱しているガイドラインに非常に近いものです。オリーブオイルは、基本的な食事にも多少は含まれていると思われるので、大抵は余分に摂る必要はないと思います。私は、サラダドレッシングに亜麻仁油も使います(ライム果汁、オレガノ、ニンニク、クミンを加えるだけです)。亜麻仁油にはオメガ3系脂肪酸が豊富に含まれているからです。上記の研究では被験者のメタボリック・シンドローム率が非常に高く、これは先進工業国の食事に典型的な現象です。また、この場合は、座りがちな生活になることや、閉経、カロリー制限の欠如に関連した変化を反映している可能性があります。ほとんど菜食で自然食品と少量の魚だけを摂る食事をしている人は健康上のリスクが他より低いことが、多くの研究でわかっています。ただし、どんな食事法を選ぼうと、過食が最大の危険であることに変わりはありません。




湾岸戦争症候群に対するコエンザイムQ10の効果

湾岸戦争(1990~1991年)の退役軍人に、「湾岸戦争症候群」や「湾岸戦争病」と呼ばれる一群の症状が現れることが時々ありました。その症状は様々ですが、倦怠感、筋肉痛、関節痛、下痢、頭痛、精神錯乱、記憶障害、睡眠障害、心的外傷後ストレス障害などが含まれる場合があります。原因は不明ですが、化学物質への暴露、油田火事による煙の吸入、戦闘ストレス、潜在する心理的問題など、いくつかの原因が考えられています。

湾岸戦争病の基準を満たしている46人退役軍人を対象として、各自の症状に対するコエンザイムQ10(以下Q10)のサプリメントによる効果を調べた研究が最近公表されました。被験者は、100 mgのQ10を受けるグループ、300 mgのQ10を受けるグループ、見た目が全く同じであるプラセボを受けるグループに無作為に分けられ、3.5カ月間の処置後、「一般的自己申告健康度」(GSRH)と呼ばれる指標を用いて評価されました。

全被験者のうち15%は女性でした。Q10を100 mgを摂っていたグループは、試験の終了時点で、プラセボグループと比較してGSRHに有意な改善が見られました。また、この研究では、サマリー・パフォーマンス・スコア(SPS)という指標を用いて、被験者の身体機能も調べました。100 mgのQ10補給により、SPSにも改善が見られました。その改善結果は、血中Q10値の増加と相関していました。(Golomb BA, et al., Coenzyme Q10 benefits symptoms in Gulf War veterans: results of a randomized double-blind study. Neural Comput. 2014 Nov;26(11):2594-651. doi: 10.1162/NECO_a_00659. 電子出版:2014年8月22日)

実践的ガイドライン

コエンザイムQ10には、非常に多くの健康効果があります(この次の記事もご覧ください)。通常用量は、ユビキノンまたはユビキノール(還元型)のいずれかの形態で1日当たり100~400 mgです。1,200 mgまで摂ってもきわめて安全であることがわかっており、また、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経学的疾患の進行遅延に役立つ可能性もあります。

ユビキノンは、体内で、活性型であるユビキノールに変換されます。ユビキノールも、吸収の良い形態のQ10です。強力な脂溶性抗酸化物質で、うっ血性心不全、高血圧症、不整脈にも効果があります(これについても次の記事で書いています)。私は個人的に1日400 mgのユビキノールを摂っています。




コエンザイムQ10は心臓手術後の合併症を減らす

上記のとおり、Q10には、他にもいくつかの効果があります。スペインで最近行われたメタ分析によると、心臓切開手術(冠動脈バイパス・グラフト)を受けた患者にも効果があるということです。このメタ分析は、種々の転帰について別々に分析したもので、転帰には、心臓の収縮を強くする薬剤(強心薬)の必要性や、(最も危険な種類である)心室性不整脈の発生、心房細動の発生、術後24時間の心係数、入院日数が含まれていました。このメタ分析に含める基準を満たしているものとして、全部で8つの臨床試験が見つけ出されました。

Q10による処置を受けた患者グループは、Q10による処置を全く受けなかったグループと比較して、術後に強心薬が必要となる可能性が53%低くなっていました。心室性不整脈(頻脈や細動を生じるもので、細動は突然死に至るおそれがある)のリスクにも、95%という顕著な低下が見られました。しかし、心係数、入院日数、心房細動の発生という面では、Q10を摂っていたグループでも、摂っていなかったグループでも、変わりはありませんでした。(de Frutos F, et al., Prophylactic treatment with coenzyme Q10 in patients undergoing cardiac surgery: could an antioxidant reduce complications? A systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2014 Oct 24. pii: ivu334. [印刷物に先行した電子出版])

この研究グループが調べた臨床試験のいずれにおいても、Q10による副作用は報告されていませんでした。他の研究では、それよりはるかに多い量のQ10が用いられており、それでも安全であることがわかっている、と研究グループは記載しています。2008年に公表されたある研究では、重度のうっ血性心不全患者が150~600 mgのQ10(ユビキノン)サプリメントを摂取しても、血中Q10値が有意に上昇しなかったため、十分な反応が得られませんでした。おそらく、吸収性が低いためと思われます。この研究グループは、進行性心不全(駆出率:22%)である患者7人について調べ、ユビキノールを1日当たり450~900 mg摂る方法に切り替えたところ、血中Q10値が1.6 μg/mLから6.5 μg/mLまで上昇しました。心筋機能の面では、駆出率が22%から39%まで上昇し、心不全の分類クラスがIVからIIになりました。(Langsjoen PH, Langsjoen AM, Supplemental ubiquinol in patients with advanced congestive heart failure. Biofactors. 2008;32(1-4):119-28.)

私は夏の号で、当時、まだ査読済み雑誌で公表されていなかった学会発表について書きました。それによると、2年後の時点で、主要有害心イベント(心臓関連の深刻な有害事象)の発生率は、プラセボグループで26%であったのに対し、300 mgのQ10を与えられたグループでは15%となっていました。他のすべての評価項目についても、Q10のサプリメントを摂っていたグループのほうが有意に低くなっていました。この研究の内容は、その後、Journal of the American College of Cardiology(米国心臓病学会ジャーナル)にて公表済みです。(Mortensen SA, et al., The effect of coenzyme Q10 on morbidity and mortality in chronic heart failure: Results from Q-SYMBIO: A randomized double-blind trial. JACC Heart Fail. 2014 Dec;2(6):641-9.)

実践的ガイドライン

Q10は、ほとんどどのような用量でも摂る価値があります。ただ、かなり費用がかかり、とくにユビキノール型は高価です。それでも私は、自分の心臓機能にもとづき、ユビキノールの用量を800 mgまで増やしています(ご存知かもしれませんが、私は、生まれつき欠陥があった心臓弁の置換手術を2003年に受けているため、とくに関心があるのです)。心臓疾患や神経障害がある患者さんには、1日100~300 mgという通常用量より多く摂るよう勧めています。また、金銭的な余裕がある人は、ユビキノール型を摂ることをお勧めします。




心臓発作の治療法としてのカルニチン

L-カルニチンは、リジンとメチオニンという2種類のアミノ酸が組み合わさったもので、体内では、ミトコンドリア内膜を超えて遊離脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ働きをします。脂肪酸はミトコンドリア内で代謝されてエネルギーを生み出すことができます(ミトコンドリアがこのプロセスを完了するためにもQ10が必要です)。L-カルニチンは体内でも生成されますが、加齢や特定の病状によって、生成量は減少します。そのため、健康状態によってサプリメントが役立つことがあり、場合によってはサプリメントが不可欠となることさえあります。サプリメントは、心不全や、運動時の胸の痛みや苦しさ(狭心症)、心臓の不整脈、原因を問わない死亡率の低減に役立つ可能性があります。

ある新しい総説によると、L-カルニチンが心臓発作(急性心筋梗塞)の患者に役立つことがわかっています。執筆者の報告によると、L-カルニチンのサプリメントは、心筋の壊死範囲、心室性不整脈、左心室の伸張度、心疾患の発症率、および死亡率を低減する可能性があるということです。
(DiNicolantonio JJ, et al., L-carnitine for the treatment of acute myocardial infarction. Rev Cardiovasc Med. 2014;15(1):52-62.)

以前に行われたメタ分析で、13の比較試験について調べたものがあり、その合計被験者数は3,629人で、急性心筋梗塞後にL-カルニチンを投与した場合と、プラセボを与えた場合を比較して、死亡率・心室性不整脈・狭心症・心不全、ならびに再梗塞の可能性に対する影響を調べました。

その結果、プラセボ(対照)グループと比較して、原因を問わない死亡率には27%の低下が見られ、心室性不整脈については65%というきわめて有意な低下、狭心症の発症率には40%の低下が見られました。心不全と再梗塞の割合も低くなっていましたが、その低下率は統計的に有意な域には達していませんでした。 (DiNicolantonio JJ, et al., L-carnitine in the secondary prevention of cardiovascular disease: systematic review and meta-analysis. Mayo Clin Proc. 2013 Jun;88(6):544-51.)

それよりずっと最近の研究にて行われた無作為化二重盲検プラセボ比較試験では、51人の患者に1日当たり2,000 mgのL-カルニチンを投与し、50人の患者にプラセボを与えました。これらの被験者は全員、急性心筋梗塞の疑いがある患者で、この処置は28日間行われました。試験の開始時点における被験者の状態は、臨床評価と検査値評価を基準とし、皆同程度のものでした。

L-カルニチンを与えたグループのほうが、試験の終了時点で、梗塞部は小さく、狭心症も少なく(プラセボグループで36%であったのに対し17.6%)、心不全と心室性不整脈の率も低く(プラセボグループ36%に対し23.4%)、不整脈も少ない(プラセボグループ28%に対し13.7%)という結果が得られました。死亡および急性心筋梗塞の新規発生を含む心イベント(心臓関連の重大事象)全体の発生率は、プラセボグループで26%であったのに対し、L-カルニチンを与えたグループでは15.6%でした。

実践的ガイドライン

L-カルニチンは、保険は適用されませんが、心臓疾患の治療法として安全であり、比較的安価でもあります。私は通常、1日1,500~2,000 mgのL-カルニチンを摂っています。その他にも、コエンザイムQ10などのサプリメントを併せて摂っています。すべてのサプリメントが一緒に作用するためであり、とくに、この2つ(L-カルニチンとコエンザイムQ10)にはそうした作用があります。


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