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2014年10月09日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2014年夏号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2014年夏号果物・野菜の摂取と血管疾患

今月の話題
果物・野菜の摂取と血管疾患
ケルセチンとガンリスクの低下
コエンザイムQ10による心不全死亡率への効果
赤身肉と乳ガンリスクとの関係
低ビタミンDと高血圧症




果物・野菜の摂取と血管疾患

果物と野菜(青果)を食べることは血管の健康に良く、青果の中でも効果の高いものがいくつかあります。こうした食品が、血管炎症や他の心血管系リスク因子を減らす能力は、そのフラボノイド含有量によって異なります。フラボノイドは、抗酸化作用などの生理的機能をもたらす植物色素で、クロロフィル、カルテノイドなどの化合物と同じく、果物や野菜に豊かな色彩をもたらすものの一つです。(レットネーブルオレンジの赤は、カルテノイドであるリコピンによるものですが、ブラッドオレンジが赤いのは、アントシアニンというフラボノイドが含まれているためです。)

ある研究グループが、単純盲検法による用量依存的な無作為化食事介入試験を行い、青果の摂取量が少ない男女174人を調べて、高フラボノイド食(フラボノイドの多い青果を摂る)グループ、低フラボノイド食(フラボノイドの少ない青果を摂る)グループ、いつもどおりの食事を摂るグループのいずれかに割り当ててました。高フラボノイドの青果も低フラボノイドの青果も、1日当たりの摂取量を、6週ごとに2皿分ずつ増やしながら、18週間にわたって被験者を追跡しました。(Macready AL, et al., Flavonoid-rich fruit and vegetables improve microvascular reactivity and inflammatory status in men at risk of cardiovascular disease--FLAVURS: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2014 Mar;99(3):479-89. doi: 10.3945/ajcn.113.074237.)

試験開始から6週後、12週後および18週後の時点で被験者の評価を行い、レーザードップラー式血流画像化法による微小血管反応性の検査、脈波伝播速度と脈波分析による動脈壁硬化の検査、24時間の血圧測定、ならびに一酸化窒素(血管の弛緩因子)・血管機能・炎症を調べるバイオマーカー検査を行いました。これらはすべて、循環器疾患のリスク因子とされています。

男性の場合、高フラボノイド食のグループでは、1日摂取量を2皿分追加したことにより(つまり6週後の時点で)血管の反応性(弛緩)が増し、また、CRP値(炎症の尺度)をはじめとする炎症マーカーの低下が見られました。このグループでは全体として、12週後の時点で(つまり高フラボノイドの青果を1日4皿分追加したことにより)、血漿中の一酸化窒素が増えていました(一酸化窒素は、内皮細胞から産生される血管弛緩因子の一つです)。

このグループでは総じて、果物と野菜の摂取増加により、フラボノイド量の多少に関係なく、血管の硬化を示す数値の増加が少なく、また、対照グループに見られた一酸化窒素の減少も少なくなっていました。明白な結論として、1日当たりの果物と野菜の摂取量を6皿まで増やすことにより、循環器疾患のリスク低下につながり、摂取する果物と野菜にフラボノイドが豊富に含まれている場合、その効果はさらに大きくなります。フラボノイドのサプリメントも役立つと思われますが、食品には、様々な種類のフラボノイドをはじめとする貴重な栄養素や、食物繊維も含まれているので、やはり食品から摂るのが最善策です。
実践的ガイドライン

果物と野菜を多く含む食事を摂ることは、多くの効果が得られることから一般に推奨されていますが、上記の研究結果は、そうした推奨をさらに裏付ける結果となっています。フラボノイドの優れた摂取源としては、ベリー類、色付きの豆類、トマト、バナナ、キャベツ、タマネギ、パセリ、木に成る果実(リンゴ、アプリコット、西洋ナシ、プラム、モモなど)が挙げられます。多種にわたるフラボノイドの中から最高の種類のものを摂ることができるよう、こうした食品をいろいろ食べるに越したことはありません。

一部のフラボノイドについては、効果をもたらす量が、食品から得られる量を上回っていることが多く、このことは、次の記事で述べるケルセチンについても当てはまります。アレルギー、ガン予防、および心臓の健康維持に要するケルセチンの治療用量は、1日当たり800~1,200 mg、またはそれ以上であり、食品だけでこの量を摂るのは困難です。



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ケルセチンとガンリスクの低下
ケルセチンは、特に、赤タマネギ、コリアンダー、ディル(イノンド)、クレソン、ソバの実、ケールに含まれているフラボノイドの一種です。それぞれ100グラム分に、コリアンダーなら55 mg、ディルなら53 mgのケルセチンが含まれています。同じく、赤タマネギには32 mg、クレソンには30 mg、ケールとソバの実にはそれぞれ23 mgのケルセチンが含まれています。比較的高い用量(800~1,200 mg)で用いると、アレルギー反応(の軽減)に役立ちます。また、白内障との関連が見られている糖タンパク質複合体の産生を減らせる可能性もあります。ケルセチンは、抗酸化作用のあるフラボノイドとして、他の予防効果をもたらす可能性も高く、このことは最近の研究で確認されています。

ある動物実験で、ラットを、グループ1=対照群、グループ2=化学的に前立腺ガンを誘発させるグループ、グループ3=化学的にガンを誘発させ、かつ、体重1 kg当たり200 mgのケルセチンを投与するグループ、グループ4=ケルセチン(体重1 kg当たり200 mg)を投与するグループのいずれかに割り当て、血清中のケルセチン濃度を測定した結果、ケルセチンのサプリメント添加により、ガンのマーカー値が正常に戻っていました。(Firdous AB, et al., Quercetin, a natural dietary flavonoid, acts as a chemopreventive agent against prostate cancer in an in vivo model by inhibiting the EGFR signaling pathway. Food Funct. 2014 Aug 28. [印刷物に先行した電子出版]) ケルセチンには、前立腺ガンの進行を予防する効果がありました。

ケルセトリン(ケルセチンから派生したもの)は、低比重リポタンパク質(LDL)の酸化を抑制し、アレルギー反応を防ぎます。実験室での細胞研究で、ケルセトリンには、一連の非小細胞肺ガン細胞における増殖抑制効果ならびにアポトーシス(プログラムされた細胞死)の促進効果があることがわかっています。こうした効果は、ケルセトリンの用量と、細胞の暴露時間の両方に依存していました。(Cincin ZB, et al., Molecular mechanisms of quercitrin-induced apoptosis in non-small cell lung cancer. Arch Med Res. 2014 Sep 1. pii: S0188-4409(14)00175-1. doi: 10.1016/j.arcmed.2014.08.002. [印刷物に先行した電子出版])

実践的ガイドライン

ケルセチンのサプリメントは、200~400 mgを含むカプセルの形で市販されています。上気道のアレルギー、白内障の予防(低糖食と組み合わせればさらに効果的です)、炎症、ガンの予防と治療、および心臓の健康維持のため、用量をいろいろ変えて摂ることをお勧めします。




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コエンザイムQ10による心不全死亡率への効果

コエンザイムQ10(coQ10)は、ミトコンドリア内でのエネルギー貯蔵分子(ATP)の生成における補因子の一つです。coQ10は体内で生成されるため、必須栄養素ではありませんが、その生成量は年齢とともに減少するため、十分な組織内濃度を維持するためには、サプリメントが唯一の手段かもしれません。心筋には、とくにミトコンドリアが多く含まれているため、十分な量のcoQ10に大きく依存しています。coQ10は、強力な抗酸化物質であり、高血圧症の治療におけるその効果について、以前にお伝えしたことがあります。coQ10は、糖尿病、心不全、狭心症、慢性疲労の治療にも用いられていますが、その研究の中には、規模が小さすぎて決定的な答えを出すことができないものもいくつかあります。

ある学会発表からの報告では、coQ10療法が心不全患者に有意な効果をもたらすことが示唆されていました。これは多くの報道機関によって伝えられましたが、まだ雑誌には掲載されていません。心不全患者への効果については、症状の軽減、機能的能力の改善、ならびに生活の質の向上をもたらすことが、以前の複数の研究でわかっています。今回のQ-SYMBIO研究1は、重度(ニューヨーク心臓病協会(NYHA)分類のクラスIIIまたはクラスIV)の心不全患者420人に、100 mgのcoQ10を1日3回、もしくはプラセボを投与したもので、2年間にわたり、心臓の重大有害事象という主要評価項目について被験者の評価を行いました。この事象には、心不全の悪化による予想外の入院、心血管系死亡、緊急心臓移植、および機械的循環補助が含まれました。(S.A. Mortensen, et al., The effect of Coenzyme Q10 on morbidity and mortality in chronic heart failure. Results from the Q-SYMBIO study. European Society of Cardiology Conference, May 2013; Abstract no 440)

私は昨年、心不全におけるcoQ10の効果を示したメタ分析についてお伝えしましたが、上記の研究は、被験者における全死亡率を分析することができたという点で、さらに先を行っています。調査開始から2年後の時点で、心血管系の重大有害事象の割合が、プラセボグループでは25%であったのに対し、coQ10を摂ったグループでは14%に過ぎませんでした。また、プラセボグループと比較して、coQ10を摂ったグループのほうが、心血管系死亡率と入院率が低く、NYHA分類における改善率が高くなっていました。全死因死亡率は、プラセボグループで17%であったのに対し、coQ10グループでは9%でした。これは劇的な差です。もちろん、研究の規模がもっと大きく、調査時間がもっと長ければ素晴らしいのですが、coQ10の安全性は知られており、他にも効果があることから、心不全患者にcoQ10を用いる価値があることは間違いありません。

実践的ガイドライン

私には、心臓弁の置換歴(2003年まで手術で治らなかった先天的な問題)があり、また、心臓弁が長年漏れやすい状態であったことによる心筋障害があるため、コエンザイムQ10を1日2回、200 mgずつ摂っています。(自分の手術については2003年4月号のニュースレターに書いており、私のホームページwww.drjanson.comで見ることができます。) 私のお勧めは、カネカが作っている最新の還元型コエンザイムQ10(ユビキノール)です(このユビキノールも、その元であるユビキノンも、この同じ日本のメーカーが開発しました)。還元型コエンザイムQ10は、それを表す 「QH」という商品名で販売されており、いくつかのサプリメント剤メーカーから入手することができます(その価格は多岐にわたります!)。私は通常、1日200 mg摂るよう勧めていますが、たとえ1日1,200 mg以上摂っても効果がある(そして安全である)ことが、数々の研究でわかっています。




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赤身肉と乳ガンリスクとの関係

ある研究グループが、食事と乳ガンとの関係を調べた新しい分析研究にて、88,803人の女性を20年間追跡しました。この看護師保健調査IIにおける被験者は、1991年にアンケートに記入していました。研究グループは、自己申告によって確認され病理報告書によって確定された浸潤性乳ガンの患者を調べました。この調査期間中に、2,830例の乳ガンが記録されました。

このグループでは、赤身肉の総摂量が多いほど、乳ガン全体のリスクが高くなるという関連が見られました。獣肉の摂取量によって被験者を5等分したところ、最も摂取量が多かったグループでは、最も摂取量が低かったグループと比較して、相対リスクが22%高くなっていました。一方、鳥肉、魚、卵、マメ科植物、ナッツ類の摂取量が多いことと、乳ガン全体のリスクとの関連は見られませんでした。(Farvid MS, et al., Dietary protein sources in early adulthood and breast cancer incidence: prospective cohort study. BMJ. 2014 Jun 10;348:g3437. doi: 10.1136/bmj.g3437.)

別のタンパク源による効果の推定では、赤身肉を1日1皿摂る代わりにマメ科植物を1日1皿摂ることにより、乳ガンのリスクは、閉経状態に関係なく15%低下し、閉経前女性の場合は19%低くなっていました。また、赤身肉を1日1皿摂る代わりに、マメ科植物・ナッツ類・鳥肉・魚を組み合わせたものを1日1皿摂れば、乳ガン全体のリスクが14%低下するという関連が見られました。

実践的ガイドライン

ここから得られる教訓は単純なものであり、赤身肉の摂取量を減らせば、乳ガンだけでなく他の多くのガンや、心疾患、高血圧症、脳卒中のリスクも下がるという健康効果を裏付ける他の多くの研究結果と一致しています。マメ科植物は優れた代用品であり、世界各地の様々な風味や質感を作り出す多種多様なレシピがあります。マメ科植物でも、テクスチャライズ(特定の食感を与える加工)をした植物性タンパク質など、高度に加工された派生品は避けましょう。豆腐、テンペ、豆乳など、加工が最小限に抑えられている大豆タンパクは、健康に良いものです。




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低ビタミンDと高血圧症

私の最近の記事では、ビタミンDについて取り上げることが多くなっています。ビタミンDは、本当はビタミンではなく、皮膚細胞にある7-デヒドロコレステロールという物質に紫外線B波(UVB)が作用することによって皮膚内で生成されるホルモンの一種です。血中ビタミンD値が増えると、高血圧症のリスクが有意に低下するという強い相関が、ある新しい研究で見られています。この新しいメタ分析は、ビタミンDの生成に影響を及ぼす遺伝子に注目して、ヨーロッパ人の子孫である被験者146,581人の遺伝データを調べたものです。このデータを分析することにより、血圧の変化と高血圧症の診断との関連を調べました。

こうした高度な分析を行った結果、ビタミンD値が10%高くなるごとに、拡張期血圧が0.29 mm Hg、収縮期血圧が0.37 mm Hg低くなるという関連が見られました。もっと重要な結果として、ビタミンD値が10%高くなるごとに、高血圧症の確率が8.1%ずつ低くなることがわかりました。(Vimaleswaran KS, et al., Association of vitamin D status with arterial blood pressure and hypertension risk: a mendelian randomisation study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2014 Sep;2(9):719-29.)

実践的ガイドライン

ほとんどの人はビタミンDが不足しています。とくに、高齢者の場合は(年齢とともにビタミンDの生成量が減少するため)、場所を問わずこれが当てはまり、その他にも、高齢者、また、日光暴露が少ない北半球高緯度域の人々や、ほとんどの時間を屋内で過ごしている人、ビタミンDを食事でほとんど摂らない人々にも当てはまります。

血中ビタミンD値を健康的な範囲まで上げるには、ビタミンD3のサプリメントが必要となる場合が多く、かかりつけ医に血液検査を頼み、25-ヒドロキシ・ビタミンD3値を調べれば、自分の数値がわかります。かかりつけ医がそうした検査をしない場合や、かかりつけ医がいない場合は、ライフ・エクステンション・ファウンデーション(www.lef.org)を通して検査を受けることができます。数値が40~80 ng/mL(ナノグラム/mL)の範囲にあれば十分ですが、それを下回っていたら、(合成のビタミンD2でなく)天然のビタミンD3のサプリメントを摂るのが良策です。このサプリメントは、1,000~10,000 IUという様々な用量のものが市販されています。安全な範囲は広く、血清濃度がたとえ100 ng/mLに達しても安全です。自分のビタミンD値が上がって健康的な範囲に達していることを確かめるため、2~3か月後に再検査を受け、必要に応じてサプリメントの用量を調節しましょう。


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