2015年05月01日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2015年4月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2015年4月号レスベラトロールと骨密度との関係

今月の話題
レスベラトロールと骨密度との関係
タウリンが心不全にもたらす効果
カリウム摂取による脳卒中リスクの低下
菜食に魚を加えた食事は直腸ガンのリスクを下げる
読者からの質問: ビタミン剤と暗色尿について




レスベラトロールと骨密度との関係

レスベラトロールは、抗酸化作用がある非必須植物栄養素で、抗炎症作用をはじめ、健康に重要な効果をもたらします。これは、赤ブドウや、クランベリー、ブルーベリー、ピーナツに含まれており、赤ワインに入っていることはよく知られています。ブドウの場合、ほとんど皮に含まれています。また、サプリメントでも摂ることができます。レスベラトロールは脳の健康を守り、また、テロメアの短縮を防ぐことから老化を防ぐ効果もあります。テロメアとは、染色体の端の部分で、細胞分裂のたびに短くなります。この短縮化は加齢に伴うものです。

新しい研究によると、レスベラトロールは骨密度の改善にも役立ち、特に、メタボシック・シンドローム(肥満、高血中脂質、高血糖、高血圧を含む症状および検査結果が複数ある状態)である男性グループではその効果が高かったということです。これは、デンマークの研究グループが、メタボシック・シンドロームである中年男性74人(平均年齢49.3歳)について調べたもので、被験者の一部に1日150mgのレスベラトロール、一部に1日1,000mgのレスベラトロール、一部にプラセボが与えられました。この処置は16週間続けられました。

この研究では、腰椎と股関節部の骨ミネラル濃度だけでなく、骨形成に関係している酵素(骨型アルカリホスファターゼ)の値も測定されました。試験期間中、および試験終了の時点における骨型アルカリホスファターゼ値は、プラセボグループと比較して、高用量(1,000mg)のレスベラトロールを与えたグループでは有意に高くなっていました。また、この高用量レスベラトロール・グループでは、腰椎の骨ミネラル濃度も有意に高くなっていました。骨型アルカリホスファターゼと骨密度の双方における変化は、相互に対応していました。股関節部については、何の変化も見られませんでした。レスベラトロールのサプリメント摂取により骨基質形成と石灰化のどちらも改善される、と研究グループは結論付けています。

実践的ガイドライン

レスベラトロールには様々な効果があります。赤ワインからも多少は摂ることができますが、治療に役立つほどの量を摂るなら、サプリメントのほうが安全と思われます。赤ブドウや紫ブドウ、ベリー類、ピーナツ、ピーナツバターからも多少は摂ることができますが、上記の研究で使用されたほどの量は摂れそうにはありません。サプリメントは25~500mgのものが市販されており、ほとんどはイタドリ由来です。




タウリンが心不全にもたらす効果

タウリンは、硫黄を含むアミノ酸で、タンパク質には組み込まれておらず、他のアミノ酸とは構造が異なります。タウリンは胆汁の重要な成分の一つで、抗酸化作用と膜安定化作用があります。心臓血管機能の他、筋機能と神経機能にとっても不可欠です。また、網膜機能を維持する効果があることも、複数の研究でわかっています。心臓、網膜、骨格筋、脳および白血球にある遊離アミノ酸としては、タウリンが最も多く含まれています。

イランの研究グループが行った研究で、タウリンは心不全に効果があることが示されています。この研究では、駆出率(1回の拍動で送り出される心室内の血液の割合)が低い患者29人を対象としたプラセボ比較試験を行いました。被験者の平均年齢は60.5歳でした。駆出率の正常値は55~70%ですが、この被験者は全員、駆出率が50%未満で、平均駆出率は29%でした。ニューヨーク心臓病協会の分類では、全員が、クラスII(軽い息切れなど軽度の症状があるレベル)またはクラスIII(高度の活動制限を要するレベル)にありました。被験者のうち、合計15人には、タウリンのサプリメントを500mgずつ1日3回摂る処置を施し、残りの14人にはプラセボが与えられました。

これはわずか2週間という短期の試験でしたが、それでも、タウリンを与えられたグループでは、運動時間、代謝当量および運動距離に有意な増加が見られ、血圧は低下していました。運動時間は7.3分から10分に増え(36%の増加)、運動距離は602メートルから804メートルに増え(33%の増加)、代謝当量(METS)は6.38から8に増加していました。プラセボグループでは、何の変化も見られませんでした。(Beyranvand MR et al., Effect of taurine supplementation on exercise capacity of patients with heart failure. J Cardiol. 2011 May;57(3):333-7.)

実践的ガイドライン

上記の研究におけるタウリンの用量は比較的低く(研究によっては、うっ血性心不全の治療のため1日当たり2,000~6,000mgという量を用いたものもあります)、期間も非常に短いものでした。それでも、非常に良好な結果が得られており、処置期間の延長や、用量の増加、またはその両方をしていたら、良好な結果が続いていた可能性が高いと思われます。私は、タウリンを毎日2,000mg摂っています。500mgのカプセルなら容易に入手できます。




カリウム摂取による脳卒中リスクの低下

食事でカリウムを十分に摂ると、脳卒中のリスク低下に役立ちます。カリウムは、新鮮な果物、野菜、マメ科植物に豊富に含まれています。食事での推奨摂取量は、1日当たり3,500mg(世界保健機関の推奨量)から4,700mg(米国農務省の推奨量)に及んでいます。これは、果物と野菜の推奨摂取量(5~9皿)の中でも最大量を摂るという正しい食事選択をすれば、容易に得られる量です。たとえば、平均的な大きさのベークドポテト1個には926mg、茹でたホウレンソウ1カップには839mg、白豆1カップには1,004mg、角切りにしたドングリカボチャ1カップには899mg、平均的な大きさのアボカド1個には975mgのカリウムが含まれています。つぶしたバナナ1カップには806 mgが含まれています(カリウムを消費する利尿薬を飲んでいる人など、カリウムを摂る必要がある人には、バナナが標準的な推奨食品とされていますが、これは単に最も手近という理由かもしれず、他にも優れた摂取源はあります)。上に挙げた食品を6皿摂れば、5,400mgのカリウムが得られます。ナッツ類やかんきつ果物にも、カリウムは豊富に含まれています。

ウーマンズ・ヘルス・イニシアティブ(米国の国立衛生研究所による、女性の健康に関する研究調査)に基づく最近の研究で、50~79歳の閉経後の女性90,137人について調べたものがあります。この被験者は全員、調査開始の時点で脳卒中の罹患歴がなかった人で、平均11年間追跡されました。この研究グループは、全脳卒中、虚血性脳卒中と出血性脳卒中、および原因を問わない死亡率の件数を調べ、こうした疾患のリスクを、食事でのカリウム摂取量に関連付けました。被験者は、カリウムの摂取量に応じて4分割され、摂取量が最も低いグループから最も高いグループまで4つのグループに分けられました。全体的な平均カリウム摂取量は、1日2,611 mgでした。

カリウム摂取量が上位4分の1にあったグループでは、原因を問わない死亡のリスクが10%低くなっていました(対象母集団がこれほど大きい場合には極めて有意な数値です)。虚血性脳卒中のリスクは16%低くなっていましたが、出血性脳卒中については何の関連も見られませんでした。高血圧症があった被験者の場合、カリウムの摂取量が最も多かったグループでは、摂取量が最も少なかったグループと比較して、脳卒中のリスクが27%低くなっていました。(Seth A, et al., Potassium intake and risk of stroke in women with hypertension and nonhypertension in the Women's Health Initiative. Stroke. 2014 Oct;45(10):2874-80.)

この対象母集団のうち、1日当たり4,700mgという米国農務省の推奨摂取量以上のカリウムを摂っていた被験者はわずか2%でした。それより低い世界保健機関の推奨摂取量でさえ、満たしていたまたは上回っていた人の割合は16.6%に過ぎませんでした。これは、カリウム摂取量と脳卒中との因果関係を立証するものではなく、単に相関を示すものです。他の変数の調整を行ったとしても、カリウムは、野菜・果物・マメ科植物の摂取量を示す指標となるだけかもしれません。野菜、果物、マメ科植物には、ビタミンや、カリウム以外のミネラル、フィトケミカル、食物繊維など、他にも役立つものが多数含まれており、これらはすべて、脳卒中のリスクを低げる可能性があります。

実践的ガイドライン

手が加えられておらず、加工が最小限に抑えられた新鮮な果物・野菜・マメ科植物を豊富に含む食事を摂ることは、数々の理由で重要です。塩分摂取を制限すれば、カリウムの過度の排出を減らすのに役立ちます(食事で塩を摂ると水の摂取量が増え、カリウムなどのミネラル類が尿中に押し流されてしまいます)。カリウムのサプリメントは、胃の内壁を刺激することが多いため(とくに塩化カリウム)、処方箋のない場合は用量が99mgまでに制限されます。とはいえ、塩化カリウムは食卓塩の代用品として売られています。食事から安全にカリウムを摂ることは簡単であり、余分に必要とする場合は、塩分が含まれていないオーガニックの野菜ジュースを一杯飲めば600mgのカリウムを安全に摂ることができ、この量は、処方箋をもって得られる量とほとんど変わりません。




菜食に魚を加えた食事は直腸ガンのリスクを下げる

菜食の健康効果を調べる研究というものは、著しく片側寄りとなります。厳格な完全菜食主義者(ビーガン)もいれば、菜食の他に卵と乳製品も食べる卵乳菜食主義者(ラクト・オボ・ベジタリアン)もいるし、厳密には菜食主義者ではないがほとんど菜食で魚を少し食べ(よくペスコ・ベジタリアンと呼ばれる)、他にも乳製品や卵を食べることがある人もいます。こうした選択肢はどれも、何でも食べる食事より、健康全般にとって、また慢性退行性疾患の予防において、はるかに優れているようです。(また、食品の代わりにジャンクフードを食べるよりも、加工されていないそのままの自然食品を摂る食事のほうが優れています。)

アドベンティスト・ヘルス・スタディ2(北米での健康調査)の被験者77,659人を調べた新しい研究では、2002年1月から2007年12月まで男女を募り、2014年末まで追跡されました。この研究グループは、有効性が確認されている食品摂取頻度調査票を用いて、被験者を、ビーガン、ラクト・オボ・ベジタリアン、ペスコ・ベジタリアン、半ベジタリアン、非ベジタリアンというグループに分類し、各食事パターンと、結腸・直腸ガンの発生率との関係を調べました。

7.3年にわたる調査期間中に、380例の結腸ガンと110例の直腸ガンが確認されました。すべてのベジタリアンを合わせた場合、非ベジタリアンのグループと比べて、あらゆる結腸直腸ガンの発生率が22%低くなっていました。それに含まれていた結腸ガンの低下率は19%、直腸ガンの低下率は29%でした。他の変数について調整した結果、結腸直腸ガンのリスクは、非ベジタリアンのグループと比べ、ビーガンのグループでは16%、ラクト・オボ・ベジタリアンのグループでは18%低くなっていましたが、最もリスク低下率が大きかったのはペスコ・ベジタリアンのグループで、43%でした。半ベジタリアンのグループでは、8%のリスク低下に過ぎませんでした。(Orlich MJ, et al., Vegetarian dietary patterns and the risk of colorectal cancers. JAMA Intern Med. 2015 Mar 9. doi: 10.1001/jamainternmed.2015.59. [印刷(物)に先行した電子出版])

このような集団調査は、因果関係を示すものではありませんが、上記の結果は過去の研究結果と一致しているため、主張をする上で強力な論拠となります。2005年に公表された、478,040人の男女を4.8年追跡した研究では、獣肉の摂取量と結腸直腸ガンの発生率には正相関が見られ、魚の摂取量と結腸直腸ガンの発生率には逆相関が見られています。(Norat T, et al., Meat, fish, and colorectal cancer risk: the European Prospective Investigation into cancer and nutrition. J Natl Cancer Inst. 2005 Jun 15;97(12):906-16.)

英国の大規模な調査にて61,647人の男女を調べたところ、獣肉を食べていた人は32,491人、魚を食べていた人は8,612人、ベジタリアンは20,544人(そのうちビーガンは2,246人)でした。獣肉を食べていたグループと比較して、魚を食べていたグループでは、胃ガンのリスクが38%低く、ベジタリアンのグループでは、そのリスクが63%低くなっていました。結腸直腸ガンのリスクは、魚を食べていた人のグループでは34%低くなっていました。驚いたことに、この研究報告では、他の研究結果に反し、ベジタリアンのグループに、結腸直腸ガンに対する優位性が見られませんでした。血液ガンとリンパ腺ガンについては、獣肉を食べていたグループとの比較で、魚を食べていたグループはリスクが4%低いだけでしたが、ベジタリアンのグループでは36%のリスク低下が見られました。骨髄のガンである多発性骨髄腫については、獣肉を食べていたグループと比較したリスク低下率が、魚を食べていたグループでは23%、ベジタリアンのグループでは77%となっていました。(Key TJ, et al., Cancer in British vegetarians: updated analyses of 4998 incident cancers in a cohort of 32,491 meat eaters, 8612 fish eaters, 18,298 vegetarians, and 2246 vegans. Am J Clin Nutr. 2014 Jul;100 Suppl 1:378S-85S.)

実践的ガイドライン

新鮮な果物と野菜、マメ科植物、全粒穀物、種子類およびナッツ類を豊富に含む食事を選びましょう。動物性食品も食事に含めることにするなら、魚を選ぶのが最善策です。養殖魚に含まれているホルモン剤や残留抗生物質、または海洋汚染による水銀など汚染物質を避けるため(とくにマグロなどの大型魚で問題となっています)、きれいな海で採れた天然魚を選んでいるか確認してみましょう。ニューヨークタイムズに最近掲載された記事で、ディーン・オーニッシュ博士の著書「The Myth of High Protein Diets(高タンパク食という神話)」が取り上げられています。この記事は十分に読む価値があり、下記サイトで見ることができます。http://drjanson.us5.list-manage.com/track/click?u=7e82fc89c6b5c0826ec92641d&id=b8e84e2ff2&e=fa991dc683




読者からの質問:ビタミン剤と暗色尿について

私のホームページの読者から、以下の質問が届きました。

「サプリメントを摂ると、よく、尿の色がとても濃くなります。サプリメントが体の中をまっすぐ通り抜けているような気がして、その結果、何の効果ももたらしていないと考えます。これについて、どのように説明されますか。グレープフルーツなど、天然の食品を摂ると、こうしたことは起こりません。」

こうした質問はよくあり、長年答えてきたものです。その他にも、こうした栄養剤は体に役立つというより「高価な尿」となって排出されるのではないかという質問も受けます。私の答は以下のとおりです。

ビタミンB2は、別名をリボフラビンといい、この「フラビン」という部分は、黄色を表すラテン語に由来し、ビタミンB2の明るい蛍光色のような黄色を指しています。腸からビタミンB2を吸収するとき、基本的な必要量を超えた余剰があれば、安全な方法で尿中に排出されます。サプリメントを摂った場合は、ほぼ確実に、十分な量のビタミンB2が吸収されて幾分は排出されるため、この余剰分によって尿の色が通常より濃くなります。尿の色が濃い琥珀色や茶色の場合は、病気(肝疾患や血液疾患など)や薬剤による可能性があるので、かかりつけの医師にチェックしてもらうべきです。水を十分に飲んでいない場合も尿の色が濃くなりますが、これは簡単に治ります。水分の摂取方法は、水を飲むことだけでなく、果物、野菜、お茶、コーヒーからも得られます(ただし、カフェインには利尿作用もあるので尿の出る量が増えます)。ほとんどの食品は(グレープフルーツを含め)、リボフラビンの濃度が、尿の色が変わるほど高くないのです。

尿には多くの物が排出されます。飲んだ水の多くは排出され、その他にも、飲んだ薬剤や、医薬品以外の薬(スポーツ選手の尿検査で調べるもの)などが排出されます。また、食べたものの多くは、便中に排出され、たとえば、食事で摂った食物繊維はすべて排出されます。しかし、こうしたものはどれも摂る必要がない、という意味ではありません。

水溶性ビタミンの多くは、一般的な用量分のサプリメントを摂れば排出されます。そのため、一部の懐疑的な当局者は、サプリメント摂取者の尿が「世界で最も高価」であると主張しています。こうした批評では、ほとんどの水溶性サプリメントが驚くほど安価である(だけでなく、同じように排出される高価な薬と違って、信じられないほど安全である)という事実が無視されています。実際に、高価なサプリメントもありますが、そうしたものは通常、それほど簡単に排出されてしまうものではありません。こうした議論では必ず、もっと重要なことが無視されています。つまり、ビタミン剤が排出されるか否かということより、体内を通る途中でビタミン剤がどんな作用をもたらすかということのほうが重要なのです。

たとえば、ビタミンCには多くの機能があります。ビタミンCは、各組織の周りを回り、組織に浸透しながら、感染症や炎症、ガン、心疾患から体を守っていると思われます。吸収された後、尿中に排出されることになる分は、その途中で、各組織、とくに、腎臓、尿管、膀胱、尿道を万遍なく覆うように通らなければならないため、炎症や感染症の低減など、有益な効果を及ぼす可能性が十分にあります。

最も重要なものは、特定のサプリメントを特定の用量で摂った場合の効果を分析した公表済の医学研究であることは言うまでもありません。これまでもしばしばお伝えしているとおり、多くの種類のサプリメントについて、確認されている効果が得られるのは、よく尿中排泄を生じるような用量で摂取した場合です。私がこれまでに書いたニュースレターを読み返していただけば(私のホームページにすべて掲載されています)、こうした科学論文の多くに対する論評を見ることができます。(今月号でも、レスベラトロールとタウリンに関する論文を取り上げています。)

実践的ガイドライン

私は、45年間にわたり、比較的大量のサプリメントを摂っています(医学部の卒業後まではサプリメントの潜在的な効果を知りませんでした)。私は、もし尿の黄色が強ければ、十分に水を飲んでいないと考えます(果物と野菜は常にたくさん摂っています)。懐疑的なレポートや、「高価な尿」といった主張に怖気づいてはいけません。それよりも、数々のサプリメントから得られる効果が書かれたレポートに注目しましょう。

とはいえ、これらはサプリメントであって、ジャンクフードばかり食べることの口実にすることや、健康的な食事の代わりに摂ることを意図したものではありません。健康的な食事からは、サプリメントとして入手できない既知の栄養素も未知の栄養素も得られるはずです。尿の色が、リボフラビンに典型的な強い黄色以外の濃い色である場合は、医学的な問題や薬剤によるものでないことを確認しましょう。
  

2015年05月01日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2015年2月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2015年2月号運動はパーキンソン病のリスクを下げる

今月の話題
運動はパーキンソン病のリスクを下げる
地中海式食事法がメタボリック・シンドロームに及ぼす効果
湾岸戦争症候群に対するコエンザイムQ10の効果
コエンザイムQ10は心臓手術後の合併症を減らす
心臓発作の治療法としてのカルニチン




運動はパーキンソン病のリスクを下げる

運動が脳と神経系にとって有益である理由は、気分が良くなるエンドルフィンが放出される、ということだけではありません。以前に行われた研究によると、運動は、ドーパミンに関係している脳の特定部位での神経保護効果をもたらすことがわかっており、このドーパミン(の減少)はパーキンソン病と関わりがあります。また、農薬がこうした神経系を損なう可能性があることを示している研究もあります。

新たに公表された研究で、43,368人の被験者を平均12.6年間追跡したものがあり、この追跡期間中に、286例のパーキンソン病が確認されました。男性では、運動量が低いグループと比較して、運動量が中程度のグループでは、パーキンソン病の発症リスクが45%低くなっていました。運動としての身体活動に含めたのは、家事、通勤、余暇運動の3つでした。余暇運動を除外して、通勤と家事の運動量のみを比較した場合、運動量が中程度のグループでは、運動量が低いグループと比較して、パーキンソン病の発症リスクが50%低いことがわかりました。(Yang F, et al., Physical activity and risk of Parkinson's disease in the Swedish National March Cohort. Brain. 2014 Nov 18. pii: awu323. [印刷物に先行した電子出版])

あるメタ分析の対象とされた過去の5つの研究に、上記の研究によるデータを合わせたところ、身体活動度が最も高かったグループは、身体活動度が最も低かったグループと比較して、パーキンソン病のリスクが34%低いことがわかりました。この研究グループの言う「中程度の活動」とは、家事と通勤の合計時間が1週当たり6時間のもので、「活動度が低い」というのは、その合計時間が週2時間未満のものでした。

実践的ガイドライン

運動には多くの効果がありますが、運動といっても、ジムで計画的にプログラムをこなすこととは限りません。家事やガーデニングなど、家で行うどんな運動でも、役立ち得るのです。ただし、週に最低量の運動をしなければ、効果は得られません。

米国では、通勤といっても、自宅ガレージの車に乗り込み、職場の駐車場まで運転して、そこからエレベーターを使ってオフィスに行く程度ですが、スウェーデンでの通勤は、それとは違うはずです。私が思うに、スウェーデンでは、徒歩通勤や自転車通勤が多く、車の場合でもおそらく駐車場への往復歩数はもっと多く、公共交通機関を使う場合にも徒歩が含まれます。上記の研究で、余暇運動はそれほどの大きな違いをもたらしていないようでした。これは単に、そうした活動は量が少なくても(週2時間でも)かなり効果がある、ということかもしれません。量が多いほど効果が増すわけではありませんでした。




地中海式食事法がメタボリック・シンドロームに及ぼす効果

地中海式食事法は、果物、野菜、豆類(マメ科植物)、全粒穀物、ナッツ類、種子類、魚類を豊富に含み、先進工業国における他の多くの食事と比べて獣肉と乳製品の量が少ない食事法です。スペインで最近行われたメタボリック・シンドローム関連の研究で、55~80歳の男女を対象としたPREDIMED試験のデータを解析したものがあります。メタボリック・シンドロームは、腹部肥満、高血圧、高血糖、高トリグリセリド、低HDLコレステロールのいくつかがある状態をいいます(シンドロームX、インスリン抵抗性とも呼ばれています)。

上記の研究では、全被験者5,801人のうち、試験の開始時点でメタボリック・シンドロームがあったのは3,392人でした。この被験者は、地中海式食事法にエクストラバージンオリーブオイルを追加して摂取するグループ、地中海式食事法にナッツ類を追加して摂取するグループ、低脂肪食の実践に関するアドバイスのみを受ける対照グループという3つの食事介入グループのいずれかに無作為に分けられました。試験の終了時には、各グループ間に有意な差が見られました。対照グループと比較して、地中海式食事法のいずれのグループでも、正常な代謝状態に戻っている可能性が高くなっていました。対照グループでは、メタボリック・シンドロームが続いている可能性が、他より28~35%高くなっていました。地中海式食事法は、腹部肥満の減少と、空腹時血糖の低下につながっていました。

2003年の試験開始時にメタボリック・シンドロームがなかった被験者1,919人のうち、4.8年の追跡期間中にメタボリック・シンドロームになったのは960人でした。このグループでは、メタボリック・シンドロームを発症する可能性という面で食事法による差があるようには見えませんでした。言い換えれば、低脂肪食は、メタボリック・シンドロームの発症を予防するという面では地中海式食事法と同じくらい効果があった一方、より正常な代謝状態に戻すという面では地中海式食事法ほどの効果はなかった、ということになります。(Babio N, et al., Mediterranean diets and metabolic syndrome status in the PREDIMED randomized trial. CMAJ. 2014 Oct 14. pii: cmaj.140764. [印刷物に先行した電子出版])

実践的ガイドライン

地中海式食事法は、健康的な生活を送るために私が提唱しているガイドラインに非常に近いものです。オリーブオイルは、基本的な食事にも多少は含まれていると思われるので、大抵は余分に摂る必要はないと思います。私は、サラダドレッシングに亜麻仁油も使います(ライム果汁、オレガノ、ニンニク、クミンを加えるだけです)。亜麻仁油にはオメガ3系脂肪酸が豊富に含まれているからです。上記の研究では被験者のメタボリック・シンドローム率が非常に高く、これは先進工業国の食事に典型的な現象です。また、この場合は、座りがちな生活になることや、閉経、カロリー制限の欠如に関連した変化を反映している可能性があります。ほとんど菜食で自然食品と少量の魚だけを摂る食事をしている人は健康上のリスクが他より低いことが、多くの研究でわかっています。ただし、どんな食事法を選ぼうと、過食が最大の危険であることに変わりはありません。




湾岸戦争症候群に対するコエンザイムQ10の効果

湾岸戦争(1990~1991年)の退役軍人に、「湾岸戦争症候群」や「湾岸戦争病」と呼ばれる一群の症状が現れることが時々ありました。その症状は様々ですが、倦怠感、筋肉痛、関節痛、下痢、頭痛、精神錯乱、記憶障害、睡眠障害、心的外傷後ストレス障害などが含まれる場合があります。原因は不明ですが、化学物質への暴露、油田火事による煙の吸入、戦闘ストレス、潜在する心理的問題など、いくつかの原因が考えられています。

湾岸戦争病の基準を満たしている46人退役軍人を対象として、各自の症状に対するコエンザイムQ10(以下Q10)のサプリメントによる効果を調べた研究が最近公表されました。被験者は、100 mgのQ10を受けるグループ、300 mgのQ10を受けるグループ、見た目が全く同じであるプラセボを受けるグループに無作為に分けられ、3.5カ月間の処置後、「一般的自己申告健康度」(GSRH)と呼ばれる指標を用いて評価されました。

全被験者のうち15%は女性でした。Q10を100 mgを摂っていたグループは、試験の終了時点で、プラセボグループと比較してGSRHに有意な改善が見られました。また、この研究では、サマリー・パフォーマンス・スコア(SPS)という指標を用いて、被験者の身体機能も調べました。100 mgのQ10補給により、SPSにも改善が見られました。その改善結果は、血中Q10値の増加と相関していました。(Golomb BA, et al., Coenzyme Q10 benefits symptoms in Gulf War veterans: results of a randomized double-blind study. Neural Comput. 2014 Nov;26(11):2594-651. doi: 10.1162/NECO_a_00659. 電子出版:2014年8月22日)

実践的ガイドライン

コエンザイムQ10には、非常に多くの健康効果があります(この次の記事もご覧ください)。通常用量は、ユビキノンまたはユビキノール(還元型)のいずれかの形態で1日当たり100~400 mgです。1,200 mgまで摂ってもきわめて安全であることがわかっており、また、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経学的疾患の進行遅延に役立つ可能性もあります。

ユビキノンは、体内で、活性型であるユビキノールに変換されます。ユビキノールも、吸収の良い形態のQ10です。強力な脂溶性抗酸化物質で、うっ血性心不全、高血圧症、不整脈にも効果があります(これについても次の記事で書いています)。私は個人的に1日400 mgのユビキノールを摂っています。




コエンザイムQ10は心臓手術後の合併症を減らす

上記のとおり、Q10には、他にもいくつかの効果があります。スペインで最近行われたメタ分析によると、心臓切開手術(冠動脈バイパス・グラフト)を受けた患者にも効果があるということです。このメタ分析は、種々の転帰について別々に分析したもので、転帰には、心臓の収縮を強くする薬剤(強心薬)の必要性や、(最も危険な種類である)心室性不整脈の発生、心房細動の発生、術後24時間の心係数、入院日数が含まれていました。このメタ分析に含める基準を満たしているものとして、全部で8つの臨床試験が見つけ出されました。

Q10による処置を受けた患者グループは、Q10による処置を全く受けなかったグループと比較して、術後に強心薬が必要となる可能性が53%低くなっていました。心室性不整脈(頻脈や細動を生じるもので、細動は突然死に至るおそれがある)のリスクにも、95%という顕著な低下が見られました。しかし、心係数、入院日数、心房細動の発生という面では、Q10を摂っていたグループでも、摂っていなかったグループでも、変わりはありませんでした。(de Frutos F, et al., Prophylactic treatment with coenzyme Q10 in patients undergoing cardiac surgery: could an antioxidant reduce complications? A systematic review and meta-analysis. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2014 Oct 24. pii: ivu334. [印刷物に先行した電子出版])

この研究グループが調べた臨床試験のいずれにおいても、Q10による副作用は報告されていませんでした。他の研究では、それよりはるかに多い量のQ10が用いられており、それでも安全であることがわかっている、と研究グループは記載しています。2008年に公表されたある研究では、重度のうっ血性心不全患者が150~600 mgのQ10(ユビキノン)サプリメントを摂取しても、血中Q10値が有意に上昇しなかったため、十分な反応が得られませんでした。おそらく、吸収性が低いためと思われます。この研究グループは、進行性心不全(駆出率:22%)である患者7人について調べ、ユビキノールを1日当たり450~900 mg摂る方法に切り替えたところ、血中Q10値が1.6 μg/mLから6.5 μg/mLまで上昇しました。心筋機能の面では、駆出率が22%から39%まで上昇し、心不全の分類クラスがIVからIIになりました。(Langsjoen PH, Langsjoen AM, Supplemental ubiquinol in patients with advanced congestive heart failure. Biofactors. 2008;32(1-4):119-28.)

私は夏の号で、当時、まだ査読済み雑誌で公表されていなかった学会発表について書きました。それによると、2年後の時点で、主要有害心イベント(心臓関連の深刻な有害事象)の発生率は、プラセボグループで26%であったのに対し、300 mgのQ10を与えられたグループでは15%となっていました。他のすべての評価項目についても、Q10のサプリメントを摂っていたグループのほうが有意に低くなっていました。この研究の内容は、その後、Journal of the American College of Cardiology(米国心臓病学会ジャーナル)にて公表済みです。(Mortensen SA, et al., The effect of coenzyme Q10 on morbidity and mortality in chronic heart failure: Results from Q-SYMBIO: A randomized double-blind trial. JACC Heart Fail. 2014 Dec;2(6):641-9.)

実践的ガイドライン

Q10は、ほとんどどのような用量でも摂る価値があります。ただ、かなり費用がかかり、とくにユビキノール型は高価です。それでも私は、自分の心臓機能にもとづき、ユビキノールの用量を800 mgまで増やしています(ご存知かもしれませんが、私は、生まれつき欠陥があった心臓弁の置換手術を2003年に受けているため、とくに関心があるのです)。心臓疾患や神経障害がある患者さんには、1日100~300 mgという通常用量より多く摂るよう勧めています。また、金銭的な余裕がある人は、ユビキノール型を摂ることをお勧めします。




心臓発作の治療法としてのカルニチン

L-カルニチンは、リジンとメチオニンという2種類のアミノ酸が組み合わさったもので、体内では、ミトコンドリア内膜を超えて遊離脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ働きをします。脂肪酸はミトコンドリア内で代謝されてエネルギーを生み出すことができます(ミトコンドリアがこのプロセスを完了するためにもQ10が必要です)。L-カルニチンは体内でも生成されますが、加齢や特定の病状によって、生成量は減少します。そのため、健康状態によってサプリメントが役立つことがあり、場合によってはサプリメントが不可欠となることさえあります。サプリメントは、心不全や、運動時の胸の痛みや苦しさ(狭心症)、心臓の不整脈、原因を問わない死亡率の低減に役立つ可能性があります。

ある新しい総説によると、L-カルニチンが心臓発作(急性心筋梗塞)の患者に役立つことがわかっています。執筆者の報告によると、L-カルニチンのサプリメントは、心筋の壊死範囲、心室性不整脈、左心室の伸張度、心疾患の発症率、および死亡率を低減する可能性があるということです。
(DiNicolantonio JJ, et al., L-carnitine for the treatment of acute myocardial infarction. Rev Cardiovasc Med. 2014;15(1):52-62.)

以前に行われたメタ分析で、13の比較試験について調べたものがあり、その合計被験者数は3,629人で、急性心筋梗塞後にL-カルニチンを投与した場合と、プラセボを与えた場合を比較して、死亡率・心室性不整脈・狭心症・心不全、ならびに再梗塞の可能性に対する影響を調べました。

その結果、プラセボ(対照)グループと比較して、原因を問わない死亡率には27%の低下が見られ、心室性不整脈については65%というきわめて有意な低下、狭心症の発症率には40%の低下が見られました。心不全と再梗塞の割合も低くなっていましたが、その低下率は統計的に有意な域には達していませんでした。 (DiNicolantonio JJ, et al., L-carnitine in the secondary prevention of cardiovascular disease: systematic review and meta-analysis. Mayo Clin Proc. 2013 Jun;88(6):544-51.)

それよりずっと最近の研究にて行われた無作為化二重盲検プラセボ比較試験では、51人の患者に1日当たり2,000 mgのL-カルニチンを投与し、50人の患者にプラセボを与えました。これらの被験者は全員、急性心筋梗塞の疑いがある患者で、この処置は28日間行われました。試験の開始時点における被験者の状態は、臨床評価と検査値評価を基準とし、皆同程度のものでした。

L-カルニチンを与えたグループのほうが、試験の終了時点で、梗塞部は小さく、狭心症も少なく(プラセボグループで36%であったのに対し17.6%)、心不全と心室性不整脈の率も低く(プラセボグループ36%に対し23.4%)、不整脈も少ない(プラセボグループ28%に対し13.7%)という結果が得られました。死亡および急性心筋梗塞の新規発生を含む心イベント(心臓関連の重大事象)全体の発生率は、プラセボグループで26%であったのに対し、L-カルニチンを与えたグループでは15.6%でした。

実践的ガイドライン

L-カルニチンは、保険は適用されませんが、心臓疾患の治療法として安全であり、比較的安価でもあります。私は通常、1日1,500~2,000 mgのL-カルニチンを摂っています。その他にも、コエンザイムQ10などのサプリメントを併せて摂っています。すべてのサプリメントが一緒に作用するためであり、とくに、この2つ(L-カルニチンとコエンザイムQ10)にはそうした作用があります。
  

2014年10月09日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2014年夏号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2014年夏号果物・野菜の摂取と血管疾患

今月の話題
果物・野菜の摂取と血管疾患
ケルセチンとガンリスクの低下
コエンザイムQ10による心不全死亡率への効果
赤身肉と乳ガンリスクとの関係
低ビタミンDと高血圧症




果物・野菜の摂取と血管疾患

果物と野菜(青果)を食べることは血管の健康に良く、青果の中でも効果の高いものがいくつかあります。こうした食品が、血管炎症や他の心血管系リスク因子を減らす能力は、そのフラボノイド含有量によって異なります。フラボノイドは、抗酸化作用などの生理的機能をもたらす植物色素で、クロロフィル、カルテノイドなどの化合物と同じく、果物や野菜に豊かな色彩をもたらすものの一つです。(レットネーブルオレンジの赤は、カルテノイドであるリコピンによるものですが、ブラッドオレンジが赤いのは、アントシアニンというフラボノイドが含まれているためです。)

ある研究グループが、単純盲検法による用量依存的な無作為化食事介入試験を行い、青果の摂取量が少ない男女174人を調べて、高フラボノイド食(フラボノイドの多い青果を摂る)グループ、低フラボノイド食(フラボノイドの少ない青果を摂る)グループ、いつもどおりの食事を摂るグループのいずれかに割り当ててました。高フラボノイドの青果も低フラボノイドの青果も、1日当たりの摂取量を、6週ごとに2皿分ずつ増やしながら、18週間にわたって被験者を追跡しました。(Macready AL, et al., Flavonoid-rich fruit and vegetables improve microvascular reactivity and inflammatory status in men at risk of cardiovascular disease--FLAVURS: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2014 Mar;99(3):479-89. doi: 10.3945/ajcn.113.074237.)

試験開始から6週後、12週後および18週後の時点で被験者の評価を行い、レーザードップラー式血流画像化法による微小血管反応性の検査、脈波伝播速度と脈波分析による動脈壁硬化の検査、24時間の血圧測定、ならびに一酸化窒素(血管の弛緩因子)・血管機能・炎症を調べるバイオマーカー検査を行いました。これらはすべて、循環器疾患のリスク因子とされています。

男性の場合、高フラボノイド食のグループでは、1日摂取量を2皿分追加したことにより(つまり6週後の時点で)血管の反応性(弛緩)が増し、また、CRP値(炎症の尺度)をはじめとする炎症マーカーの低下が見られました。このグループでは全体として、12週後の時点で(つまり高フラボノイドの青果を1日4皿分追加したことにより)、血漿中の一酸化窒素が増えていました(一酸化窒素は、内皮細胞から産生される血管弛緩因子の一つです)。

このグループでは総じて、果物と野菜の摂取増加により、フラボノイド量の多少に関係なく、血管の硬化を示す数値の増加が少なく、また、対照グループに見られた一酸化窒素の減少も少なくなっていました。明白な結論として、1日当たりの果物と野菜の摂取量を6皿まで増やすことにより、循環器疾患のリスク低下につながり、摂取する果物と野菜にフラボノイドが豊富に含まれている場合、その効果はさらに大きくなります。フラボノイドのサプリメントも役立つと思われますが、食品には、様々な種類のフラボノイドをはじめとする貴重な栄養素や、食物繊維も含まれているので、やはり食品から摂るのが最善策です。
実践的ガイドライン

果物と野菜を多く含む食事を摂ることは、多くの効果が得られることから一般に推奨されていますが、上記の研究結果は、そうした推奨をさらに裏付ける結果となっています。フラボノイドの優れた摂取源としては、ベリー類、色付きの豆類、トマト、バナナ、キャベツ、タマネギ、パセリ、木に成る果実(リンゴ、アプリコット、西洋ナシ、プラム、モモなど)が挙げられます。多種にわたるフラボノイドの中から最高の種類のものを摂ることができるよう、こうした食品をいろいろ食べるに越したことはありません。

一部のフラボノイドについては、効果をもたらす量が、食品から得られる量を上回っていることが多く、このことは、次の記事で述べるケルセチンについても当てはまります。アレルギー、ガン予防、および心臓の健康維持に要するケルセチンの治療用量は、1日当たり800~1,200 mg、またはそれ以上であり、食品だけでこの量を摂るのは困難です。



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ケルセチンとガンリスクの低下
ケルセチンは、特に、赤タマネギ、コリアンダー、ディル(イノンド)、クレソン、ソバの実、ケールに含まれているフラボノイドの一種です。それぞれ100グラム分に、コリアンダーなら55 mg、ディルなら53 mgのケルセチンが含まれています。同じく、赤タマネギには32 mg、クレソンには30 mg、ケールとソバの実にはそれぞれ23 mgのケルセチンが含まれています。比較的高い用量(800~1,200 mg)で用いると、アレルギー反応(の軽減)に役立ちます。また、白内障との関連が見られている糖タンパク質複合体の産生を減らせる可能性もあります。ケルセチンは、抗酸化作用のあるフラボノイドとして、他の予防効果をもたらす可能性も高く、このことは最近の研究で確認されています。

ある動物実験で、ラットを、グループ1=対照群、グループ2=化学的に前立腺ガンを誘発させるグループ、グループ3=化学的にガンを誘発させ、かつ、体重1 kg当たり200 mgのケルセチンを投与するグループ、グループ4=ケルセチン(体重1 kg当たり200 mg)を投与するグループのいずれかに割り当て、血清中のケルセチン濃度を測定した結果、ケルセチンのサプリメント添加により、ガンのマーカー値が正常に戻っていました。(Firdous AB, et al., Quercetin, a natural dietary flavonoid, acts as a chemopreventive agent against prostate cancer in an in vivo model by inhibiting the EGFR signaling pathway. Food Funct. 2014 Aug 28. [印刷物に先行した電子出版]) ケルセチンには、前立腺ガンの進行を予防する効果がありました。

ケルセトリン(ケルセチンから派生したもの)は、低比重リポタンパク質(LDL)の酸化を抑制し、アレルギー反応を防ぎます。実験室での細胞研究で、ケルセトリンには、一連の非小細胞肺ガン細胞における増殖抑制効果ならびにアポトーシス(プログラムされた細胞死)の促進効果があることがわかっています。こうした効果は、ケルセトリンの用量と、細胞の暴露時間の両方に依存していました。(Cincin ZB, et al., Molecular mechanisms of quercitrin-induced apoptosis in non-small cell lung cancer. Arch Med Res. 2014 Sep 1. pii: S0188-4409(14)00175-1. doi: 10.1016/j.arcmed.2014.08.002. [印刷物に先行した電子出版])

実践的ガイドライン

ケルセチンのサプリメントは、200~400 mgを含むカプセルの形で市販されています。上気道のアレルギー、白内障の予防(低糖食と組み合わせればさらに効果的です)、炎症、ガンの予防と治療、および心臓の健康維持のため、用量をいろいろ変えて摂ることをお勧めします。




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コエンザイムQ10による心不全死亡率への効果

コエンザイムQ10(coQ10)は、ミトコンドリア内でのエネルギー貯蔵分子(ATP)の生成における補因子の一つです。coQ10は体内で生成されるため、必須栄養素ではありませんが、その生成量は年齢とともに減少するため、十分な組織内濃度を維持するためには、サプリメントが唯一の手段かもしれません。心筋には、とくにミトコンドリアが多く含まれているため、十分な量のcoQ10に大きく依存しています。coQ10は、強力な抗酸化物質であり、高血圧症の治療におけるその効果について、以前にお伝えしたことがあります。coQ10は、糖尿病、心不全、狭心症、慢性疲労の治療にも用いられていますが、その研究の中には、規模が小さすぎて決定的な答えを出すことができないものもいくつかあります。

ある学会発表からの報告では、coQ10療法が心不全患者に有意な効果をもたらすことが示唆されていました。これは多くの報道機関によって伝えられましたが、まだ雑誌には掲載されていません。心不全患者への効果については、症状の軽減、機能的能力の改善、ならびに生活の質の向上をもたらすことが、以前の複数の研究でわかっています。今回のQ-SYMBIO研究1は、重度(ニューヨーク心臓病協会(NYHA)分類のクラスIIIまたはクラスIV)の心不全患者420人に、100 mgのcoQ10を1日3回、もしくはプラセボを投与したもので、2年間にわたり、心臓の重大有害事象という主要評価項目について被験者の評価を行いました。この事象には、心不全の悪化による予想外の入院、心血管系死亡、緊急心臓移植、および機械的循環補助が含まれました。(S.A. Mortensen, et al., The effect of Coenzyme Q10 on morbidity and mortality in chronic heart failure. Results from the Q-SYMBIO study. European Society of Cardiology Conference, May 2013; Abstract no 440)

私は昨年、心不全におけるcoQ10の効果を示したメタ分析についてお伝えしましたが、上記の研究は、被験者における全死亡率を分析することができたという点で、さらに先を行っています。調査開始から2年後の時点で、心血管系の重大有害事象の割合が、プラセボグループでは25%であったのに対し、coQ10を摂ったグループでは14%に過ぎませんでした。また、プラセボグループと比較して、coQ10を摂ったグループのほうが、心血管系死亡率と入院率が低く、NYHA分類における改善率が高くなっていました。全死因死亡率は、プラセボグループで17%であったのに対し、coQ10グループでは9%でした。これは劇的な差です。もちろん、研究の規模がもっと大きく、調査時間がもっと長ければ素晴らしいのですが、coQ10の安全性は知られており、他にも効果があることから、心不全患者にcoQ10を用いる価値があることは間違いありません。

実践的ガイドライン

私には、心臓弁の置換歴(2003年まで手術で治らなかった先天的な問題)があり、また、心臓弁が長年漏れやすい状態であったことによる心筋障害があるため、コエンザイムQ10を1日2回、200 mgずつ摂っています。(自分の手術については2003年4月号のニュースレターに書いており、私のホームページwww.drjanson.comで見ることができます。) 私のお勧めは、カネカが作っている最新の還元型コエンザイムQ10(ユビキノール)です(このユビキノールも、その元であるユビキノンも、この同じ日本のメーカーが開発しました)。還元型コエンザイムQ10は、それを表す 「QH」という商品名で販売されており、いくつかのサプリメント剤メーカーから入手することができます(その価格は多岐にわたります!)。私は通常、1日200 mg摂るよう勧めていますが、たとえ1日1,200 mg以上摂っても効果がある(そして安全である)ことが、数々の研究でわかっています。




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赤身肉と乳ガンリスクとの関係

ある研究グループが、食事と乳ガンとの関係を調べた新しい分析研究にて、88,803人の女性を20年間追跡しました。この看護師保健調査IIにおける被験者は、1991年にアンケートに記入していました。研究グループは、自己申告によって確認され病理報告書によって確定された浸潤性乳ガンの患者を調べました。この調査期間中に、2,830例の乳ガンが記録されました。

このグループでは、赤身肉の総摂量が多いほど、乳ガン全体のリスクが高くなるという関連が見られました。獣肉の摂取量によって被験者を5等分したところ、最も摂取量が多かったグループでは、最も摂取量が低かったグループと比較して、相対リスクが22%高くなっていました。一方、鳥肉、魚、卵、マメ科植物、ナッツ類の摂取量が多いことと、乳ガン全体のリスクとの関連は見られませんでした。(Farvid MS, et al., Dietary protein sources in early adulthood and breast cancer incidence: prospective cohort study. BMJ. 2014 Jun 10;348:g3437. doi: 10.1136/bmj.g3437.)

別のタンパク源による効果の推定では、赤身肉を1日1皿摂る代わりにマメ科植物を1日1皿摂ることにより、乳ガンのリスクは、閉経状態に関係なく15%低下し、閉経前女性の場合は19%低くなっていました。また、赤身肉を1日1皿摂る代わりに、マメ科植物・ナッツ類・鳥肉・魚を組み合わせたものを1日1皿摂れば、乳ガン全体のリスクが14%低下するという関連が見られました。

実践的ガイドライン

ここから得られる教訓は単純なものであり、赤身肉の摂取量を減らせば、乳ガンだけでなく他の多くのガンや、心疾患、高血圧症、脳卒中のリスクも下がるという健康効果を裏付ける他の多くの研究結果と一致しています。マメ科植物は優れた代用品であり、世界各地の様々な風味や質感を作り出す多種多様なレシピがあります。マメ科植物でも、テクスチャライズ(特定の食感を与える加工)をした植物性タンパク質など、高度に加工された派生品は避けましょう。豆腐、テンペ、豆乳など、加工が最小限に抑えられている大豆タンパクは、健康に良いものです。




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低ビタミンDと高血圧症

私の最近の記事では、ビタミンDについて取り上げることが多くなっています。ビタミンDは、本当はビタミンではなく、皮膚細胞にある7-デヒドロコレステロールという物質に紫外線B波(UVB)が作用することによって皮膚内で生成されるホルモンの一種です。血中ビタミンD値が増えると、高血圧症のリスクが有意に低下するという強い相関が、ある新しい研究で見られています。この新しいメタ分析は、ビタミンDの生成に影響を及ぼす遺伝子に注目して、ヨーロッパ人の子孫である被験者146,581人の遺伝データを調べたものです。このデータを分析することにより、血圧の変化と高血圧症の診断との関連を調べました。

こうした高度な分析を行った結果、ビタミンD値が10%高くなるごとに、拡張期血圧が0.29 mm Hg、収縮期血圧が0.37 mm Hg低くなるという関連が見られました。もっと重要な結果として、ビタミンD値が10%高くなるごとに、高血圧症の確率が8.1%ずつ低くなることがわかりました。(Vimaleswaran KS, et al., Association of vitamin D status with arterial blood pressure and hypertension risk: a mendelian randomisation study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2014 Sep;2(9):719-29.)

実践的ガイドライン

ほとんどの人はビタミンDが不足しています。とくに、高齢者の場合は(年齢とともにビタミンDの生成量が減少するため)、場所を問わずこれが当てはまり、その他にも、高齢者、また、日光暴露が少ない北半球高緯度域の人々や、ほとんどの時間を屋内で過ごしている人、ビタミンDを食事でほとんど摂らない人々にも当てはまります。

血中ビタミンD値を健康的な範囲まで上げるには、ビタミンD3のサプリメントが必要となる場合が多く、かかりつけ医に血液検査を頼み、25-ヒドロキシ・ビタミンD3値を調べれば、自分の数値がわかります。かかりつけ医がそうした検査をしない場合や、かかりつけ医がいない場合は、ライフ・エクステンション・ファウンデーション(www.lef.org)を通して検査を受けることができます。数値が40~80 ng/mL(ナノグラム/mL)の範囲にあれば十分ですが、それを下回っていたら、(合成のビタミンD2でなく)天然のビタミンD3のサプリメントを摂るのが良策です。このサプリメントは、1,000~10,000 IUという様々な用量のものが市販されています。安全な範囲は広く、血清濃度がたとえ100 ng/mLに達しても安全です。自分のビタミンD値が上がって健康的な範囲に達していることを確かめるため、2~3か月後に再検査を受け、必要に応じてサプリメントの用量を調節しましょう。
  

2014年07月15日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2014年6月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2014年6月号穀物繊維によって下がる心臓発作の再発リスク

今月の話題
穀物繊維によって下がる心臓発作の再発リスク
ヘム鉄(獣肉)による心疾患のリスク増加
食事でのレスベラトロール摂取と死亡率との相関
女性における心疾患リスクと運動不足との関係





穀物繊維によって下がる心臓発作の再発リスク

ある研究グループが、看護師保健調査と医療従事者追跡研究という2つの大規模な前向きコホート研究から得られたデータをもとに、心臓死亡率を含む死亡率に対する食物繊維の影響を調べました。登録時に循環器疾患・脳卒中・ガンがなかった被験者のうち、
追跡期間中に初回心臓発作(心筋梗塞)を乗り越えた人が、女性では2,258人、男性では1,840人いました。こうした被験者は、心筋梗塞を起こす前、およびその後少なくとも1回、食事アンケートにも回答を記入していました。(Li S et al., Dietary fiber intake and mortality among survivors of myocardial infarction: prospective cohort study. BMJ. 2014 Apr 29;348:g2659. doi: 10.1136/bmj.g2659.)

この研究では、その回答にもとづき、心筋梗塞後の食物繊維摂取量、ならびに心筋梗塞の前後での食物繊維摂取量の変化を調べ、その後の心血管死亡および原因を問わない死亡のリスクに関連付けました。研究グループは、その評価結果を、薬剤使用、病歴および生活習慣に合わせて調整した後、被験者を、食物繊維摂取量が最も多いグループから最も少ないグループまで5つに分けました。最上位のグループにおける1日当たりの食物繊維摂取量は、男性の場合37グラム、女性の場合29グラムでした。これは推奨量に近い値ですが、ほとんどの米国人は、それよりはるかに少ない量しか摂っていません。1950年代にデニス・バーキットが調べた現地アフリカ人の食物繊維摂取量は、1日当たり平均100グラム近くあり、これは主食として摂っていたジャガイモ、バナナ、コーンミール、豆類によるものでした。

上記の研究で、食物繊維の摂取量が最も多かったグループは、全死因による死亡リスクが25%低くなっていました。穀物繊維(オートミール、オオムギ、全粒小麦などの穀物)の摂取量が最も多かったグループでは、さらに良好な結果が見られ、この調査期間を通して死亡率が27%低くなっていました。心筋梗塞前より食物繊維の摂取量を増やして心臓発作に対処したグループでは、それをしなかったグループと比較して、死亡率が31%低くなっていました。(穀物などの)「炭水化物」は有害であるという考えは、全粒穀物と精製穀物との違いを踏まえていないことが、ここで示唆されています。精製炭水化物(精白小麦粉や砂糖)は有害ですが、全粒穀物は有益です。

実践的ガイドライン
砂糖や、精製小麦粉(スーパーマーケットで見かけるほとんどすべてのペストリーやパンなど)、白米というような精製炭水化物は何としても避け、精製していない複合炭水化物を摂りましょう。食事では、様々な全粒穀物、新鮮な果物と野菜を摂りましょう。全粒穀物には、全粒小麦、キビ、玄米、全粒トウモロコシ(遺伝子組み換えされていないのはオーガニック品だけです)、オオムギ、ライムギ、キノアなどがあります。ソバの実は本当の穀物ではありませんが、全粒穀物の栄養特性を多く有しています(日本の麺である蕎麦はソバの実から作られています)。また、マメ科植物(エンドウを含む豆類)、種子類およびナッツ類からも、食物繊維を摂ることができます。




ヘム鉄(獣肉)による心疾患のリスク増加

鉄は、多くの生理的機能にとって重要な栄養素であり、最もよく知られている機能は、酸素を運ぶためのヘモグロビンの形成です。ヘモグロビンの「ヘム」部分は、中心に鉄原子を有する複合分子です(構造はクロロフィルとほぼ同じですが、クロロフィルは中心原子が鉄ではなくマグネシウムのため、赤色ではなく緑色に見えます)。1992年に公表されたフィンランドでの研究では、蓄えられている鉄の量(血清フェリチン値の形で表される)が多いと心臓発作のリスクが高くなるという関連が見られています。(Salonen JT, et al., High stored iron levels are associated with excess risk of myocardial infarction in eastern Finnish men. Circulation. 1992 Sep;86(3):803-11.)

この研究では、食事での鉄摂取量についても同様の関連が見られています。鉄の値(フェリチン値、または食事での鉄摂取量)が最も多かったグループでは、その値が最も低かったグループと比較して、心臓発作のリスクが2倍高くなっていました。鉄は、ヒドロキシルラジカルというフリーラジカルの生成を促すため、脂質の過酸化が促進されます。この研究で、鉄と心疾患との関係が最も強く見られたのは、LDLコレステロール値が最も高いグループでした。LDLコレステロールは、こうした酸化が起きやすいのです。この調査がフィンランドで実施されたということは、食事での鉄摂取源の大半は赤身肉です。その鉄摂取源自体が問題となり得ることを示唆している研究者はたくさんいます。

鉄に伴う問題は、主にヘム鉄によるものであり、植物由来の鉄摂取源によるものではないことが、最近行われた2つのメタ分析にて示されています。そのうち、被験者総数が131,553人である6つの前向き研究を調べたメタ分析では、結果を統合したところ、ヘム鉄の摂取量が最も多かったグループでは、摂取量が最も少なかったグループと比較して、冠動脈性心疾患のリスクが31%高くなっていました。(分析した研究の1つ、日本で行われた研究は、他のすべての研究と結果が全く異なる統計的「外れ値」でした。これを分析から除外すると、リスク増加率は46%となりました。) (Yang W, et al., Is heme iron intake associated with risk of coronary heart disease? A meta-analysis of prospective studies. Eur J Nutr. 2014 Mar;53(2):395-400. doi: 10.1007/s00394-013-0535-5.)

もう一方のメタ分析は、21の前向き研究を調べたもので、その被験者総数は292,454人、平均追跡期間は10年でした。ここでは、心疾患の発生率と、ヘム鉄の摂取量ならびに関連する体内貯蔵鉄量との間に、直接の関連が見られました(死亡率の分析は行われませんでした)。ヘム鉄の摂取量が最も多かったグループでは、摂取量が最も少なかったグループと比較して、リスクが57%高くなっていました。一方、鉄の総摂取量は、心疾患の発生率と反比例の関係にありました。食品およびサプリメントによる鉄の総摂取量が最も多かったグループでは、最も少なかったグループと比較して、リスクが15%低くなっていました。(Hunnicutt J, et al., Dietary iron intake and body iron stores are associated with risk of coronary heart disease in a meta-analysis of prospective cohort studies. J Nutr. 2014 Mar;144(3):359-66. doi: 10.3945/jn.113.185124.)

ヘム鉄と非ヘム鉄では、その影響にこうした違いがあることの理由として一つ考えられるのは、植物由来の(非ヘム)鉄は5%しか吸収されないのに対し、ヘム鉄は37%吸収されるということです。獣肉に含まれている他の成分が心疾患リスクに関与している可能性ももちろんありますが、ヘム鉄が問題の少なくとも一端を担っていることは、他の数々の研究によっても示唆されています。最近行われたある前向きコホート研究で、調査開始時に冠動脈性心疾患・脳卒中・糖尿病・ガン歴がなかった45~79歳のスウェーデン人男性36,882人を調べたものがあります。被験者の追跡期間は11.7年間でした。

この追跡期間中に、678件の致死性心臓発作と 2,593件の非致死性心臓発作が記録されました。ヘム鉄の摂取量が上位5分の1にあったグループでは、その摂取量が最も低かったグループと比較して、心臓死のリスクが51%高くなっていました。(Kaluza J, et al., Heme iron intake and acute myocardial infarction: a prospective study of men. Int J Cardiol. 2014 Mar 1;172(1):155-60.) 非ヘム鉄の摂取量については、致死性・非致死性どちらの心臓発作とも関連は見られませんでした。

興味深いことに、他のミネラル類を多く摂ると、こうした影響が軽減される可能性があります。カルシウム、マグネシウム、亜鉛は、鉄の吸収を抑制することがあります。心疾患リスクの増加は、食事(またはサプリメント)によるこうしたミネラル類の摂取量が少なかったグループに限定されていました。カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛の摂取量は平均を下回っていたがヘム鉄を多く摂っていたグループでは、ヘム鉄の摂取量が最も少なかったグループと比較して、致死性心臓発作のリスクが、約3倍高くなっていました。

実践的ガイドライン
一部の報道で指摘されているとおり、こうした研究は、獣肉摂取と心臓発作の因果関係を証明するものではなく、単なる相関を示したものです。しかし、非常に強い相関です。世界中でも、鉄分不足は、最もよく見られる栄養障害の一つです。サプリメントは、鉄の摂取源として優れており、心疾患との関係はありません。

我々に必要な鉄の量は、8 mg(成人男性の場合)~18 mg(閉経前の成人女性の場合)です。植物由来の鉄摂取源として優れているのは、カボチャの種(1オンス<約28g>で4.2 mg)、キノア(4オンス<約113g>で4 mg)、レンズ豆(4オンス<約113g>で3 mg)、茹でたホウレンソウ(1/2カップで3.2 mg)、豆腐(2オンス<約57g> で3.2 mg)、ヒヨコ豆および黒目豆(1カップで4.5 mg)、茹でたスイスチャード(1カップで4 mg)、インゲン豆、ブラックビーンズおよびウズラ豆(1カップで3.6~4 mg)、ジャガイモ(大1個で3.2 mg)、タヒニ(大さじ2杯で2.7 mg)です。毎日、こうした食品を2~3種類、1皿ずつ摂れば、男性なら1日に必要な鉄を摂ることができます。女性の場合は、その約2倍の量が必要となります。それだけでなく、必ず、十分なマグネシウム、亜鉛、カルシウムを、食品からまたはサプリメントで摂りましょう。




食事でのレスベラトロール摂取と死亡率との相関

レスベラトロールは、赤ワインに含まれるポリフェノール成分の一つで、死亡率低下との相関があることが数々の研究で示唆されています。レスベラトロールは、ワインだけでなく、ブドウ、チョコレート、ピーナツおよび一部のベリー類にも含まれていますが、ワインほどは含まれていません。その効果を調べた研究のほとんどは、もっと多い量をサプリメントの形で用いたもので、サプリメントはほとんど、イタドリ(Polygonum cuspidatum)由来のものです。しかし、最近行われた研究により、(イタリアのキャンティ地方で赤ワインの形で一般的に摂取されているような量では)人間に何の有益な効果ももたらさない可能性があることが示唆されています。

この研究は、65歳以上の男女783人を、1998年から2009年まで追跡して調べたものです。調査の開始時に(のみ)、被験者の尿中のレスベラトロール副生成物の量が測定されました。調査期間の終了時点で、34%が死亡、27%が心疾患を発症、4.6%がガンを発症していました。レスベラトロール副産物の尿中濃度が下から4分の1にあったグループでも、上から4分の1にあったグループでも、疾患率および死亡率に違いは見られませんでした。(Semba RD, et al., Resveratrol levels and all-cause mortality in older community-dwelling adults. JAMA Intern Med. 2014 May 12. doi: 10.1001/jamainternmed.2014.1582. [印刷物に先行した電子出版].)

この研究に対する批判はいくつか出ており、また、この報告内容にもとづいて、赤ワインを飲み始めようとか、飲むのをあきらめようとか提案する人は出ていません。白ワインにおけるレスベラトロールの含有量は、かなり変動が大きいのに対し、レスベラトロールのサプリメントは通常、標準化されています。上記の研究で、調査開始時にしか尿サンプルを取らなかったということは、9年という調査期間を通した摂取量の変化を無視したことになります。こうした代謝産物は非常に短寿命であるため、1回の検査だけでは、長期間のワイン摂取量を示すことができません。摂取量によっては、赤ワインに含まれるアルコールが被験者の健康に悪影響を及ぼしたと考えることもでき、それによって結果が偏った可能性もあります。
レスベラトロールは、フリーラジカルの生成ならびにLDLコレステロールの酸化を抑制する抗酸化物質です。また、炎症や血小板凝集も抑制します。炎症も血小板凝集も、循環器疾患の危険因子です。一般的に、レスベラトロールのサプリメントには、赤ワインと比較して10~20倍ものレスベラトロールが含まれています。この研究の批判者の一人であるビル・サルディによると、この調査で、ワインの摂取量が最も多かった被験者グループは、喫煙していた可能性が3倍以上高く、このことが、レスベラトロールには効果がないとする報告結果に至った要因とも考えられます。

実践的ガイドライン
私は、ワインを適量飲むことに異議はありませんが、それが長期間の健康維持に有益であるというデータが十分明白であるとは思いません。つまり、すでにワインを飲む習慣があるのでないかぎり、健康面で、それを飲み始める強力な理由というものはありません。私は、危険因子に対する効果を調べた動物実験や実験研究の結果にもとづき、レスベラトロールの標準化サプリメントを摂る価値はあると思っています。サプリメントの通常用量に含まれるレスベラトロールの量は10~50 mgです。(私は、イタドリ由来のカプセルを毎日1つ摂っており、これには37 mgのレスベラトロールが含まれています。)




女性における心疾患リスクと運動不足との関係

オーストラリアで行われた新しい研究で、心疾患の予防には身体活動が重要であることが明示されています。この研究は、調査開始時に22~27歳であったグループから、調査終了時に85~90歳であったグループまで、女性を15の年齢グループに分けて調べたもので、喫煙、高血圧症、体格指数(BMI)、身体活動度など、心臓死に対する様々な危険因子の関与度を調べました。

被験者グループの大きさは、最高年齢グループの3,901人から、最低年齢グループの9,608人まで、様々でした。ここで分析されたデータは、オーストラリアの女性を1996年から2011年まで追跡したある長期研究から得られたものでした。結果として、最低年齢のグループでは、喫煙が、心疾患の発症に最も大きく関与していました。30歳未満のグループの場合、心疾患は滅多に見られないものの、喫煙によって、心疾患のリスクが6倍以上高くなっていました。 (Brown WJ, et al., Comparing population attributable risks for heart disease across the adult lifespan in women. Br J Sports Med. 2014 May 8. doi: 10.1136/bjsports-2013-093090. [印刷物に先行した電子出版].)

一方、31歳以上のグループでは、90歳に至るまで、身体活動が最も大きな危険因子となっており、喫煙、高BMI、高血圧症を上回っていました。中間年齢層のグループでは最多のBMI(過体重または肥満の女性)が見られましたが、それでも運動不足ほど有意な危険因子ではありませんでした。この論文の筆頭著者は、ロイターヘルスによるインタビューにて、適度な身体活動を1日1時間でも行うことにより2,600人以上の女性の死を遅らせることができるかもしれない、と述べています。

米国でもオーストラリアでも、心疾患は、女性の死亡原因の1位となっています。中程度の量の身体活動をするだけでも、心疾患のリスクが下がる可能性はあります。もちろん身体活動は、他の危険因子にも影響を及ぼし、BMIを下げ、血圧のコントロールにも役立ちます。

実践的ガイドライン
身体活動は、健康的な食事、リラクゼーション、ならびにサプリメントを含む、完全な健康プログラムの重要な要素です。健康になるため、マラソンをしなくても良いのです。エレベータを使わずにもっと階段を昇ったり、駐車場の奥に車をとめて歩くという方法でも役立つのです。家事や庭仕事をしたり、郵便局に自転車で行くのも、有益な運動となります。読書をして時間を過ごすなら、また、テレビを見るのでも、エアロバイクをこぎながらできます。どんなささいなことも役立つのです。私は、毎日1時間かけて海辺を歩くのが好きで、天候が許せばそうしますが、そうでなければジムのトレッドミルを使います。
  

2014年06月17日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2014年5月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2014年5月号クルクミンの炎症軽減効果

今月の話題
クルクミンの炎症軽減効果
減塩による死亡率低下
スタチン薬の使用と脂肪摂取量の増加との関係
脂肪分の多い食事は乳ガンのリスクを高める
運動は慢性閉塞性肺疾患の合併症を減らす






クルクミンの炎症軽減効果

クルクミンは、南アジア料理によく見られるスパイスでありカレーの材料でもあるターメリックの一成分です。ターメリックは、ショウガの仲間です。これは、炎症の低減に役立つことで知られていますが、アルツハイマー病を予防する効果やその進行を遅らせる効果があるかもしれないことが、最近の研究で示唆されています。ある新しい研究では、クルクミンが肥満者に特有の効果をもたらすことが示唆されています。

肥満は、炎症ならびに免疫活性化の増大を伴います。人の場合もラットの場合も、過量の腹部脂肪組織があると、PAR2という炎症性タンパク質が増加します。脂肪細胞は、レプチンやアディポネクチンなどのホルモンを産生する内分泌器官でもあります。肥満者の脂肪細胞は一般より大きく、インスリン抵抗性を助長する様々な物質も生み出します。

クルクミンは、炎症マーカーであるサイトカインIL-1s、VEGF、IL-4などの血清値に影響を及ぼし、その有意な低下をもたらしますが、抗炎症性サイトカインの値は下がりません。最近発表されたこの研究では、30人の肥満者を2グループに分け、片方では500 mgのクルクミンを1日2回、片方では対照としてプラセボを与えました。この処置を4週間続けた後、2週間の休薬期間を設け、その後、両グループを入れ替えて、さらに4週間処置を行いました。

クルクミン療法により、一部のマーカーや抗炎症マーカーは影響を受けませんでしたが、炎症促進性マーカーには有意な低下が見られました。(Ganjali S, et al., Investigation of the effects of curcumin on serum cytokines in obese individuals: a randomized controlled trial. ScientificWorldJournal. 2014 Feb 11;2014:898361. doi: 10.1155/2014/898361.) 食事で、またはサプリメントとしてクルクミンを摂ると数々の効果が得られることは、以前の諸報告によって示唆されています。様々な疾患に対する数々の効果を見るには、下記の論文が良いでしょう: Aggarwal BB, Harikumar KB, Potential therapeutic effects of curcumin, the anti-inflammatory agent, against neurodegenerative, cardiovascular, pulmonary, metabolic, autoimmune and neoplastic diseases (抗炎症剤であるクルクミンによる、神経変性疾患・循環器疾患・肺疾患・代謝性疾患・自己免疫疾患・腫瘍性疾患に対する潜在的治療効果). Int J Biochem Cell Biol. 2009 Jan;41(1):40-59.

実践的ガイドライン

完全な健康プログラムでは、体重管理が重要な部分となります。体重を減らすプログラムは、成功しないことで有名です。減量の策略などありません。ただ、健康に良い食事をして、適度な運動をすることです(食事については、これまで何度も書いてきたように、新鮮な野菜と果物、全粒穀物、マメ科植物、種子類およびナッツ類をたくさん摂り、糖分や脂肪分の多い加工食品、ならびにほとんどの獣肉と全脂肪乳製品を避けることです)。過体重や肥満の人は、クルクミン(ターメリックの標準エキス)500 mgを1日2回摂るのが良策です。これは、標準体重の人にも役立つ可能性があります。





減塩による死亡率低下

食事での塩分摂取については、様々な見方がされていますが、全体像としては、加工食品およびほとんどの外食品に添加されている過量の塩を避けるのが良策のようです。これが重要なのはとくに敏感な人のみという報告も一部ありますが、このことははっきりわかっていません。一つの問題として、一般的な添加量では、新鮮な自然食品の本当の味が分かりにくくなります。また、血中ナトリウム濃度を薄めるために水の必要摂取量が増えます(その結果、排尿が増えて、カリウムやマグネシウムなどのミネラルが腎臓を介して失われます)。2009年に公表されたメタ分析では、塩分摂取量が増えると脳卒中および循環器疾患のリスクが高くなるという明確な関連が示されています。(Strazzullo P, et al., Salt intake, stroke, and cardiovascular disease: meta-analysis of prospective studies. BMJ. 2009 Nov 24;339:b4567. doi: 10.1136/bmj.b4567.)

1日に必要なナトリウムの量は500 mg未満です(気候が温暖な地域に住んでいて、激しい運動をしない場合は、1日115 mgで済むこともあります)。この程度のナトリウムなら、未加工の自然食品に含まれているナトリウム以外に追加摂取しなくても、容易に摂ることができます。米国での一般的なナトリウム摂取量は、1日3,000~13,000 mgです。温暖な気候のもとで運動して大量に汗をかく人なら、必要量はもっと多いかもしれませんが、それでも、こうした平均摂取量よりは低いでしょう(その場合、カリウムやマグネシウムなど、他のミネラルの必要量も多くなります)。

英国健康調査(Health Survey for England)によるデータを使用した新しい研究では、血圧、脳卒中による死亡率、および虚血性心疾患による死亡率に対する、塩分摂取量の関係が示されています。2003年から2011年までに、脳卒中による死亡率は42%、虚血性心疾患による死亡率は40%低下しました。また、この期間では血圧にも有意な低下が見られました。この分析には31,692人の被験者に関するデータが含まれ、英国では、この調査の開始時に、塩分摂取量を減らすためのプログラムが実施されました。

上記の調査期間中に、喫煙率は19%から14%に低下し、果物と野菜の摂取量はわずかに増加し、コレステロール値に少量の低下が見られました。しかし、死亡率の減少に関連していた最も有意な変化は、一般集団にて塩分摂取量が15%減少したことでした。これに対応して血圧が低下したと関連付けられました。(He FJ, et al., Salt reduction in England from 2003 to 2011: its relationship to blood pressure, stroke and ischaemic heart disease mortality. BMJ Open. 2014 Apr 14;4(4):e004549. doi: 10.1136/bmjopen-2013-004549.)

実践的ガイドライン

できるだけ未加工食品を摂ることが最善の方法と思います。果物や野菜に含まれるカリウムとナトリウムの比率は、75:1から400:1超の範囲にありますが、北米でよく見られる食事では、この比率が逆転しているため、カリウムよりナトリウムの摂取量が多くなります(ナトリウム:カリウム比は最低でも2:1)。これに対し、天然で未加工の自然食品に含まれるカリウムとナトリウムの比率は10:1です。

家庭料理の味を引き立てるには、食塩の代わりに、数々のハーブやスパイス(ショウガ、カレー、オレガノ、タイム、クミン他、多数)を使ったり、レモン果汁やライム果汁を使いましょう。サラダをたくさん食べましょう。でも、市販のドレッシングはかけないように(私は、ニンニク、亜麻仁油、ライム果汁、オレガノ、クミンを使って、自分のドレシングを作ります)。








スタチン薬の使用と脂肪摂取量の増加との関係

スタチン薬は、これまでに販売された最も収益性が高い薬の一つとなりました。この薬は、実際にコレステロール値を下げますが、筋肉痛や、軽度~重度の筋炎、糖尿病のリスク増加など、副作用もあります。一部の研究によると、スタチン薬による治療は心疾患と脳卒中のリスクを下げる可能性があるということですが(すべての研究で示されているわけではありません)、スタチン薬には抗炎症作用があることがその理由の一つとも考えられます。(スタチン薬に伴う費用やリスクを負わなくても、コレステロール値を下げ、循環器疾患や炎症を軽減する、もっと良い方法はあります。) それなのに、食生活を改善するよりもスタチン薬を摂るほうを選ぶ人が多いようです。

新しい研究で、スタチン薬の使用とカロリー摂取量との関連付けを行い、スタチン薬を使用していないグループのカロリー摂取量と比較したものがあります。この研究グループは、米国健康栄養診断調査(NHANES)によるデータを用いて、20歳以上の成人27,886人の代表サンプルを評価しました。これは、24時間思い出し法(過去24時間に飲食したすべての内容を聞き出す方法)による食事調査を行い、カロリー摂取量と脂肪摂取量を測定したものです。最初の1999-2000年期では、スタチン薬を使用していないグループより、使用しているグループのほうが、カロリー摂取量が低く、有意な差がありました。2009-2010年期までに、スタチン薬使用グループにおける脂肪とカロリーの摂取量は約10%上昇しました。(Sugiyama T, et al., Different time trends of caloric and fat intake between statin users and nonusers among US adults: gluttony in the time of statins? JAMA Intern Med. 2014 Apr 24. doi: 10.1001/jamainternmed.2014.1927. [印刷物に先行した電子出版])

スタチン薬を摂っている人々は、その薬によって「守られている」ためにそれほど健康的でない食事を摂っても良しとする一種の「免許」を持っているように感じていることが、上記の結果から示唆されます。しかし、血清コレステロール値が高くなること以外にも、質の悪い食事選択に伴う問題はたくさんあります。塩分摂取と体重増加に伴う疾患リスクには、スタチン薬は対処していません。(この調査では、スタチン使用グループの体格指数=BMIが、上記の10年間で1.3ポイント増えていました。)

スタチン薬を摂る(または摂らない)よう医師が勧めるための正式なガイドラインについては意見が分かれています。ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンという医学雑誌には、患者にスタチン薬を処方することを勧める医師や、処方しないよう勧める医師による事例史が掲載されました。その記事の後に、Dr. Jeffrey Bloomという医師が以下のコメントを寄せています。
「一般に認められている利益相反の数は、スタチン薬が勧められたどうかに正比例している。Dr. Ansellが挙げている開示件数は、Dr. MoraとDr. Krumholzよりもはるかに少ない。Dr. Ansellはスタチン薬を推奨しておらず、他の二人は推奨している。国による最近のコレステロール教育プログラムのガイドラインが、いかに製薬業者の支援を受けたものであるか、ほとんどの医師は再考していない。(BMJ 2013; 347 doi: http://drjanson.us5.list-manage.com/track/click?u=7e82fc89c6b5c0826ec92641d&id=758951ba1d&e=fa991dc683) 以前のガイドラインに準じたスタチン薬使用では、死亡率の減少は見られなかった(OR(オッズ比)1.01) (Lancet 2007;369:168-9)。新しいガイドラインも似たようなもので、過剰治療につながるおそれがあるため、こうしたガイドラインが施行される前に慎重な再分析を行う必要がある(Lancet 2013;382 (9906):1680.)。」(The guidelines battle on starting statins. Comments. N Engl J Med 2014; 370:1652-1658 April 24, 2014DOI: 10.1056/NEJMclde1314766.)

あるニュースソース(情報源)では、研究執筆者であるDr. Sugiyamaの発言が引用されていました。「… 脂肪、とくに飽和脂肪を多く摂るほど、コレステロール値が高くなる…(中略)…過体重の場合も、糖尿病と[高血圧]のリスクが高くなる…(中略)…目標は、患者の心血管系リスクを下げることであり…(中略)…ステーキにバターを塗ることを患者に認めることでない」

実践的ガイドライン

血管疾患予防の大半は、(上記のような)正しい食事を選択し、運動を行い、ストレスを軽減し、喫煙を避け、サプリメントをいくつか摂ることにかかっています。一部の人ではなく、全集団について、血管疾患が遺伝的なものでないことはほぼ間違いありません。西洋式の食事習慣によって、高血圧症、心疾患、脳卒中、糖尿病および肥満の率が高くなったためであり、遺伝的特徴はそれほど大きく変わっていません。ただし、一部には、コレステロール異常になりやすい遺伝的傾向がある人や、その一因となり得るホルモン変化を生じる人もいます。








脂肪分の多い食事は乳ガンのリスクを高める

脂肪分の多い食事を摂ると、一般的なほとんどのタイプの乳ガンについて、女性の発症リスクが高くなることが、新しい研究によって示唆されています。以前の研究では、入り混じった結果が出ており、1999年に公表された論文では、脂肪摂取量と乳ガンについて統計的に有意な関連は示唆されていませんが、そのデータが示していた関係は、もう少しで有意な域に達するものでした。2003年に公表された別の研究では、閉経後の女性における動物性脂肪摂取量と乳ガン発生率との関係が実際に示されていました。その研究は、26~46歳の被験者90,655人を調べ、8年間追跡したもので、動物性脂肪の摂取量が多いほど、乳ガンのリスクに28~54%という有意な増加が見られました。(Cho E, et al., Premenopausal fat intake and risk of breast cancer. J Natl Cancer Inst. 2003 Jul 16;95(14):1079-85.)

最初に述べたつい最近の研究は、エストロゲン受容体陽性(ER+)、プロゲステロン受容体陽性(PR+)、およびヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)という各サブタイプの乳ガンを発症する予測因子として、脂肪摂取量を調べた前向き研究でした。337,327人の女性を調査対象として11.5年間追跡したところ、この追跡期間中に10,062人の乳ガン患者が見られました。(Sieri S, et al., Dietary fat intake and development of specific breast cancer subtypes. J Natl Cancer Inst. 2014 Apr 9. [印刷物に先行した電子出版])

総脂肪摂取量と飽和脂肪摂取量が多いと、全体的にER+PR+タイプの乳ガンのリスクが20%高くなるという関連が見られました。脂肪摂取量が上から5分の1にあったグループでは、下から5分の1のグループと比較して、リスクが28%高くなっていました。また、飽和脂肪摂取量が多いほど、HER2-タイプの乳ガンのリスクが高くなっていました。乳ガンの大部分は、ER+タイプ、PR+タイプ、HER2-タイプのものです。

女性栄養介入試験(WINS)では、ある研究グループが、初期の乳ガンがある48~79歳の女性2,437人を対象とした無作為化臨床試験を1987年に開始しました。こうした女性に低脂肪食を実践させれば無再発生存率が高くなるという仮説の検証を試みたもので、その結果、低脂肪食の介入によって体重の減少ならびに疾患再発率の低下がもたらされたと、研究グループは判断しました。(Blackburn GL, Wang KA, Dietary fat reduction and breast cancer outcome: results from the Women's Intervention Nutrition Study (WINS). Am J Clin Nutr. 2007 Sep;86(3):s878-81.)

この試験について、介入開始から5年後に研究グループがまとめた以前のレポートによると、低脂肪食を摂っていたグループでは、対照グループよりも、最終的に平均6ポンド(約2.7kg)体重が少なくなっていました。脂肪として摂っていたカロリーは、低脂肪食グループでは約330カロリー、対照グループでは450カロリーでした。腫瘍が受容体陰性であるグループと比べてER+およびPR+のタイプであるグループのほうが上記の効果がはるかに大きいことに、研究グループは注目していました。(Chlebowski RT, et al., Dietary fat reduction and breast cancer outcome: interim efficacy results from the Women's Intervention Nutrition Study. J Natl Cancer Inst. 2006 Dec 20;98(24):1767-76.)

実践的ガイドライン

動物性脂肪の少ない食事をすると、乳ガンの予防に役立つ可能性が高いようです。おいしいエスニック料理はたくさんあるので(バーベキューだけじゃありません!)、それを利用すれば簡単に実践できます。飽和脂肪ならびに総脂肪摂取量を最小限に抑えるというのは、健康的な食事方法の正当な部分です。新鮮な果物と野菜、豆類を摂り、精製穀物ではなく全粒穀物だけを摂り、それに種子類とナッツ類を加えれば、実に簡単に、栄養のあるおいしい食物をいろいろ摂ることができます。





運動は慢性閉塞性肺疾患の合併症を減らす


運動には多くの効果がありますが、それを示すさらに多くのエビデンスが、新しい研究で明らかにされています。メディケア(米国の高齢者・障がい者向け公的医療保険制度)における最近の変更により、病院は、患者が合併症を生じることがなく、また、30日以内に再入院することがないように、十分に徹底的な処置を患者に施すよう注意することの重要性を認識するようになりました。肺気腫や慢性気管支炎など、慢性閉塞性肺疾患がある患者は、管理のために何度も入院することがよくあります。この新しい研究の研究グループは、平均72歳の患者4,596人を対象として、30日以内の再入院率を調べ、各自の身体活動度に関連付けました。調査期間は2年間でした。

全体としての再入院率は18%で、そのうち59%は、退院後15日以内のものでした。患者の評価では、一週当たりの中程度または強度の身体活動の実施時間(分)が調べられました。この時間が週1~149分であったグループでは、30日以内に再入院する可能性が約34%低くなっていました。(Nguyen HQ, et al, Associations between physical activity and 30-day readmission risk in chronic obstructive pulmonary disease. Ann Am Thorac Soc. 2014 Apr 8. [印刷物に先行した電子出版]) この時間が149分を超えていたグループでも、ほぼ同じ効果が見られました。残念ながら、様々な身体活動度を対象とした再入院率の報告はありませんでした。

実践的ガイドライン

慢性閉塞性肺疾患は通例、喫煙や、慢性感染症歴、ぜんそく歴に関係しています。症状を誘発するほどの激しい運動をするのでないかぎり、定期的な中程度の身体活動が役立つことがあります。ウォーキングやサイクリングは、基本的な運動として良く、多くの効果が得られます。
  

2014年06月17日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2014年4月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
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2014年4月号マグネシウムによる炎症マーカーの低下

今月の話題
マグネシウムによる炎症マーカーの低下
コレステロールとアルツハイマー病との関連
シナモンと、インシュリン、肝疾患
脂肪肝疾患に役立つプロバイオティクス
眼疾患に対するルテインとゼアキサンチンの効果
歩くことが股関節部の骨折を防ぐ





マグネシウムによる炎症マーカーの低下

マグネシウムは、300を優に超える酵素活性に関与しており、神経、腎臓、心血管の健康にとって重要なものです。食事性のマグネシウムは不足していることが多く、加工食品を摂る食事ではとくに不足しています(たとえば、玄米には、白米の約4倍のマグネシウムが含まれています)。アーモンド、カシュ―、葉野菜、ピーナツ、全粒小麦、豆乳、ブラックビーンズにはマグネシウムが多く含まれていますが、鶏肉、獣肉、ブロッコリー、リンゴには少量しか含まれていません。

新たな科学論文レビューによると、食事でマグネシウムを多く摂ると、血清中のC反応性タンパク(CRP)値が低くなるという関連が見られています。CRPは炎症の指標であり、CRP値が高いことは、循環器疾患の危険因子の一つとなります。このメタ分析を行った研究グループは、32,918人の被験者を含む7つの横断的研究から得られたデータを調べました。また、被験者にマグネシウムのサプリメントを与えた5つの介入研究のレビューも行いました。横断的研究のレビューによると、マグネシウムの摂取量が最も多かったグループと比較して、その摂取量が最も少なかったグループでは、CRPが高値である可能性が49%高くなっていました。(Dibaba DT, et al., Dietary magnesium intake is inversely associated with serum C-reactive protein levels: meta-analysis and systematic review. Eur J Clin Nutr. 2014 Feb 12. doi: 10.1038/ejcn.2014.7. [印刷物に先行した電子出版])

上記介入研究のレビューでも、マグネシウムサプリメントが血清CRP値にもたらす効果が見られました。しかし、マグネシウムにこうしたCRP値の低下効果があろうと、炎症の発生源を突き止め、それに対処することが重要です。高CRP値の原因として考えられるものに慢性歯肉炎があり、これは循環器疾患のリスク増加との関連も見られています。もちろんその他にも、感染症や、リウマチ性疾患、他の自己免疫疾患など、炎症の原因はたくさんあり、それらが関与しているのかもしれません。また、食品中の糖化最終産物(AGE)と呼ばれる物質への暴露や(これについては前号で触れました)、アレルギーによる可能性もあります。

炎症が少なくなると、血清CRP値の低下という形で反映され、それによって、高血圧症を含む様々な慢性疾患、心臓発作、脳卒中、腎疾患、ならびにアルツハイマー病と糖尿病のリスクが下がる可能性は高いのです。

実践的ガイドライン

マグネシウムを多く含む上記の食品を摂って、毎日約400~500 mgのマグネシウム摂取を目指しましょう。含有量の詳しいリストは、NIH(米国国立衛生研究所)のOffice of Dietary Supplements(栄養補助食品室)による下記サイトに掲載されています。
http://drjanson.us5.list-manage.com/track/click?u=7e82fc89c6b5c0826ec92641d&id=a5ed3d0bec&e=fa991dc683
私は、心臓を健康に保つため、毎日200~400 mgを追加摂取しています。吸収が良いのは、アスパラギン酸マグネシウムという形態です。クエン酸マグネシウムもよく吸収されますが、お腹が緩くなる可能性がこちらのほうが高いかもしれません。CRP値が高い場合は、原因を見つけて対処しましょう。





コレステロールとアルツハイマー病との関連

アルツハイマー病の原因であると証明されているわけではありませんが、β-アミロイド(アミロイドβやAβとも言う)の沈着は、アルツハイマー病の重要な開始過程の一つのようです。脳内のβ-アミロイド値に対する、血清コレステロール値ならびに脂質画分の関係を調べるため、新たな研究が行われました。この研究グループは、脳卒中外来から74人の患者を集め、その平均年齢は78歳でした。そのうち、3人が軽度の認知症で、33人は正常、38人に軽度の認知障害がありました。

この研究では、PIBと呼ばれる放射性標識化合物ならびに陽電子放出断層撮影法(PETスキャン)を用いて、脳内のβ-アミロイド沈着量を測定しました。そして、アミロイドーシス(アミロイド症)を生じやすい大脳皮質領域におけるPIB滞留を測定することができました。PIB指数には、LDL-コレステロールとHDL-コレステロールの両方に対し、それぞれ独立した関連性が見られ、LDL-コレステロール値が高いほどPIB指数が高く、HDL-コレステロール値が高いほどPIB指数が低いという関係がありました。(Reed B, et al., Associations between serum cholesterol levels and cerebral amyloidosis. JAMA Neurol. 2014 Feb 1;71(2):195-200.)

総コレステロール値には、PIB指数との関連は見られませんでした。また、スタチン薬による治療を受けた場合でも、PIBとの関連性に変化はありませんでした。脳内β-アミロイドとコレステロールとの関係パターンは、循環器疾患に見られるものと同じである、と論文執筆者は結論付けています。また、彼らの研究結果は、以前の剖検報告、疫学的研究結果、ならびに動物実験と生体外実験の両方による結果と一致している、と論文執筆者は述べています。

実践的ガイドライン

以前にも言いましたが、コレステロール値を下げるためには、薬物療法よりも、健康に良い食事と運動プログラムを実践して健康的な脂質状態を維持することのほうが重要です。スタチン薬は、製薬会社に最大級の利益をもたらす薬の一つですが、私は、コレステロール値を下げる手段としてのスタチン治療に賛成していません。健康的な脂質状態を維持し、アルツハイマー病などの退行性疾患を含む多種多少な慢性疾患を防ぐためには、アジア式や地中海式の食事法と、有酸素運動プログラムを組み合わせて実践する方法が最大のチャンスをもたらす可能性が高いのです。ターメリックというスパイスのクルクミンという成分には、アルツハイマー病の発生率低下との関連が見られています。クルクミンには、抗炎症作用もあります。私は、クルクミン含有量が1カプセル当たり550 mgとなるよう標準化されたターメリックのサプリメントを1日1~2回、1カプセルずつ摂っており、また、カレー料理もよく食べます。その他にも、(スタチン薬による副作用や出費を被ることなく)血清脂質値の改善に役立つサプリメントはたくさんあります。中でもナイアシン(ビタミンB3)は最良の部類に入り、私は、持続放出型のものを1日2回、500 mgずつ摂っています。







シナモンと、インシュリン、肝疾患

肝障害の原因として世界で最も多く見られるのは、非アルコール性脂肪肝疾患です。この疾患は、ほとんどの場合、過体重または肥満である、糖尿病がある、コレステロール値が高い、トリグリセリド(中性脂肪)値が高い、という状態に関係していますが、こうした危険因子のいずれにも関係していない場合もあります。非アルコール性脂肪肝疾患は、肝臓の腫脹をもたらすことがあり、それが肝硬変として知られる瘢痕に至り、結果としてガンに至る可能性もあります。それより重症の型は、非アルコール性脂肪性肝炎と呼ばれ、これも同じ原因に関係しています。どちらの病気も、無症状の場合がありますが、倦怠感、脱力感、吐き気、腹痛、食欲不振を伴うこともあります。

特効のある医学的治療法は知られていませんが、糖尿病を抑制することや、インスリン抵抗性と酸化ストレスに対処することなどが、治療法として勧められています。非アルコール性脂肪肝疾患がある患者では、シナモンがインスリン増感剤(インスリンの抵抗性を改善するもの)として作用することが、新しい研究によって示唆されています。この研究では、50人を対象として二重盲検プラセボ比較試験を行い、毎日、その半数に、1錠当たり750 mgのシナモンを含むカプセルを2錠、残りの半数にはプラセボのカプセル2錠を与え、これを12週間続けました。 (Askari F, et al., Cinnamon may have therapeutic benefits on lipid profile, liver enzymes, insulin resistance, and high-sensitivity C-reactive protein in nonalcoholic fatty liver disease patients. Nutr Res. 2014 Feb;34(2):143-8. doi: 10.1016/j.nutres.2013.11.005. Epub 2013 Dec 6.)

シナモンについては、これまでにも、糖尿病患者における糖の抑制効果を調べる研究がいくつか行われました。その一つでは、シナモンのサプリメントによって、総コレステロール値に最大26%の低下が見られました。この研究では、患者の全員に、バランスの取れた食事を実践する方法と身体活動を生活に取り入れる方法について助言しました。処置グループ(シナモンを与えたグループ)では、空腹時血糖値、総コレステロール値、トリグリセリド値、肝酵素値およびCRP値に有意な低下が見られました。処置グループとプラセボグループの両方において、LDL-コレステロール値の有意な低下が見られましたが、これはおそらく、食事と運動に関する助言を受けた結果と思われます。

実践的アドバイス

シナモンはインシュリンの活性を高めるため、糖尿病患者は、治療量のシナモンを摂る場合、用量を調節する必要があり得ることを知っておかなければなりません。粉末度にもよりますが、小さじ1杯のシナモンの量は3グラム程度と考えられます。上記の研究にて与えられた用量はその半分、つまり1.5グラムでした。私は、スムージーを作るときは大抵、シナモンを入れ、果物のデザートにかけることもよくあります。オートミールなどのシリアルや、そば粥にかけてもよいでしょう(そばの実は、本当の穀物でなく、「種実」の一種であり、ヒマワリの種と同様で、小麦とは関係なく、グルテンは含みません)。







脂肪肝疾患に役立つプロバイオティクス

非アルコール性脂肪肝疾患に関する別の研究が、つい最近、American Journal of Clinical Nutrition(米国臨床栄養雑誌)に発表されました。この疾患に対するプロバイオティックスの効果を調べたこの研究は、プロバイオティクスに腸内フローラ(intestinal flora 腸管内細菌叢?)と腸肝軸に対する調節作用があるという理由で提案されたものでした。52人の患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ比較試験にて、その半数にプロバイオティクスのカプセル、残りの半数にプラセボのカプセルが1日2回、28週間にわたり与えられました。どちらのグループにも、低カロリー食と身体活動の勧告に従うよう、助言がなされました。

この調査期間が終了した時点で、どちらのグループにも、いくつかの改善が見られましたが、これはおそらく食事と身体活動に関連があると思われます。しかし、効果が高かったのは、(プロバイオティクスを摂った)処置グループのほうで、プラセボグループと比較して、肝酵素値の減少率が3~5倍高くなっていました。また、CRP値の低下率も2倍高く、繊維化スコアにも有意な低下が見られました。(Eslamparast T, et al., Synbiotic supplementation in nonalcoholic fatty liver disease: a randomized, double-blind, placebo-controlled pilot study. Am J Clin Nutr. 2014 Mar;99(3):535-42.)

実践的ガイドライン

プロバイオティクスには、腸管内に常在している多数の善玉菌が含まれます(腸内細菌を数に入れるなら、体内には、ヒト細胞以外のものがヒト細胞の10倍もあります)。これは、消化、代謝、および疾患予防において、大きな役割を果たしています。最もよく見られるプロバイオティクスは、ラクトバシルス・アシドフィルス(アシドフィルス菌)とビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(ビフィズス菌)ですが、他にもたくさんあります。私は、15種類の善玉菌が1カプセルに350億個含まれているサプリメントを1日2回、1カプセルずつ摂っています。こうした善玉菌は、多くのヨーグルトに含まれており、そうしたものには、(単に「生きた菌を使って作った」だけでなく)「生きた菌が入っている」という表示がラベルにあります。しかし、ほとんどの味付きヨーグルトは、健康にとっては糖分が多すぎるもので、また、菌数のばらつきがかなり大きい場合もあります(私は時々、自家製のプレーン無脂肪ヨーグルトを使います)。その他にも、自家製のザウアークラウト(塩漬けして発酵させたキャベツ)などの発酵食品にも、乳酸菌が含まれています。市販のザウアークラウトはほとんど、殺菌処理されており、それによって乳酸菌も死んでしまいます。





眼疾患に対するルテインとゼアキサンチンの効果


加齢性眼疾患研究(AREDS)に携わっている研究グループが、その被験者に関する新しいレポートをつい最近公表しました。これには、加齢性黄斑変性を発症するリスクがある50~85歳の被験者4,203人に関する情報が含まれています。同じグループによる以前のレポートによると、試験を行った処方(ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、亜鉛および銅)によって、視力の維持、ならびに黄斑の状態悪化の予防に効果が見られたということです。

この新しい研究では、上記の当初処方と、それにルテイン(10 mg)とゼアキサンチン(2mg)が入ったサプリメントを加えた処方との比較を行いました。また、β-カロテンの代わりに、このルテインとゼアキサンチンの組合せを用いた場合の分析もしました。喫煙者の場合、β-カロテンによって肺ガンのリスクが高まる恐れがあることが他の研究で示されているためです。また、上記のサプリメントにオメガ3系脂肪酸のサプリメントを加えた試験も行いました。被験者の追跡期間は平均4.9年でした。(Age-Related Eye Disease Study 2 (AREDS2) Research Group, Secondary analyses of the effects of lutein/zeaxanthin on age-related macular degeneration progression: AREDS2 Report No. 3. JAMA Ophthalmol. 2014 Feb 1;132(2):142-9. doi:10.1001/ jamaophthalmol.2013.7376)

β-カロテンと比較して、ルテインとゼアキサンチンを含むサプリメントの場合、後期の加齢性黄斑変性になるリスクが18%、血管新生型の加齢性黄斑変性になるリスクが22%低くなっていました。調査開始の時点で両眼に早期疾患があった被験者グループでは、ルテインとゼアキサンチンの組合せを摂った場合、後期の加齢性黄斑変性になるリスクが24%低くなっていました。こうした効果は、AREDSにおける前述の当初処方による効果にさらに加えて見れらたものです。

実践的ガイドライン

β-カロテンは、抗酸化栄養素であるカロテノイド族の一つにすぎません。他のカロテノイドも重要であることは明らかです。ルテインとゼアキサンチンは、網膜に蓄積します。この2つは、緑の葉野菜、とくに、ケール、ホウレンソウ、スイスチャード、コラードグリーンに含まれています。私は、10 mgのルテインと0.5 mgのゼアキサンチンを含むサプリメントを1錠摂っている他、緑色の野菜もたくさん食べています。緑色の野菜を摂ることは、他の栄養効果もあるため、サプリメントよりも重要です。





歩くことが股関節部の骨折を防ぐ


運動が骨の強化に役立つことは知られていますが、男性における股関節部骨折の予防にも役立つことが、新しい研究によるエビデンスで示唆されています。この研究では、医療従事者追跡研究から得られたデータ、ならびに、歩いている時間、座っている時間、その他10種類の活動に費やしている時間の回答データを分析しました。50歳以上の男性35,996人を対象として24年間追跡し、2年ごとに、上記の全活動について調べました。

この24年間に、事故や「衝撃傷害」とは無関係である股関節部骨折の報告は490件ありました。歩行時間が長いほうが骨折リスクは低くなっており、1週当たりの歩行時間が4時間のグループでは、1週当たりの歩行時間が1時間未満のグループと比較して、43%のリスク低下が見られました。また、早歩きの場合は、のんびり歩く場合と比較して、このリスクが47%低くなっていました。(Feskanich D, et al., Physical activity and inactivity and risk of hip fractures in men. Am J Public Health. 2014 Apr;104(4):e75-81.) この研究では、早歩きと比べて、激しい活動をした方が効果が高くなるという結果は見られませんでした。実践的なガイドラインは、このレポートを見れば自明と思われます。
  

2014年05月15日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2014年3月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2014年3月号ビタミンB群による脳卒中リスク低下の可能性

今月の話題
ビタミンB群による脳卒中リスク低下の可能性
獣肉由来のAGEとアルツハイマー病のリスクとの関係
菜食がもたらす血圧/脳卒中リスクの低下
ビタミンCのガン患者への効果
マルチビタミン剤は白内障のリスクを下げる




ビタミンB群による脳卒中リスク低下の可能性

ホモシステインは、非タンパク性アミノ酸で、その代謝には、ビタミンB群が酵素補助因子として補助的に関与しています。血中ホモシステイン値が高い状態では、血栓、心臓発作、脳卒中、内皮細胞損傷、炎症との関連が見られています。最近行われたメタ分析(以前の複数の研究を調べたもの)に、ビタミンB群の補給によるホモシステイン値の低下効果、および脳卒中のリスク低下について調べたものがあります。ここで使用された臨床試験結果は2012年より前に公表されたもので、14の無作為化対照試験が含まれ、被験者総数は54,913人でした。(Ji Y, et al., Vitamin B supplementation, homocysteine levels, and the risk of cerebrovascular disease: a meta-analysis. Neurology. 2013 Oct 8;81(15):1298-307.)

全体的に見て、脳卒中の相対リスクが7%低くなっており、これは、統計的に有意な数字です。しかし、この効果には数々の可変要因、たとえば、個々人の吸収率、当該栄養素の結果的な血中濃度、各患者における高血圧や腎疾患の有無などが影響していました。ホモシステイン値を下げるための治療では、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸が与えられるのが一般的です。以前の研究では、葉酸だけでホモシステイン値が25%下がる可能性があることがわかっています。Journal of the American Medical Association(米国医師会雑誌)に掲載されたレビューによると、葉酸にビタミンB12のサプリメントを加えた場合、さらに7%の低下が見られたということです。

ホモシステイン値の低下と、脳卒中あるいは心臓発作との関連が見られなかった研究も一部ありましたが、その原因は上記の可変要因による可能性があります。もっと大規模な対照試験を用いれば、ホモシステインと血管疾患との関係を明らかにできるかもしれません。とはいえ、こうしたビタミンサプリメントは安価な上に極めて安全性が高いので、さらに進んだ研究が発表されるまで、リスクがある人はビタミンB群のサプリメントを摂るのがおそらく良策でしょう。
実践的ガイドライン

ビタミンB群の通常用量として、葉酸は1,000~5,000 μg(1~5 mg)、ビタミンB12はメチルコバラミンの舌下錠という形で1,000~5,000 μg(これ以外にどのような形態のコバラミンでも役立つかもしれません)、ビタミンB6(ピリドキシン)は50~100 mgです。ホモシステイン値を下げるために、もっと高価な補酵素形態のビタミン剤(ピリドキサル-5-リン酸など)を摂る必要はありません。




獣肉由来のAGEとアルツハイマー病のリスクとの関係

特定の食品の調理時に生成される化学物質によって、アルツハイマー病のリスクが高くなる可能性があります。そうした食品には、とくに獣肉製品がありますが、フライならほぼ種類を問いません。この化学物質、つまり糖化最終産物(AGE)には、糖尿病、心疾患、脳卒中、腎不全など、慢性退行性疾患の発症または進行との関連が見られています。糖化とは、糖分子がタンパク質に付加されることです。これは、正常な代謝の過程でも少量発生しますが、食品の摂取によってかなりの量が加わると、細胞の柔軟性が低下し、慢性疾患や早期老化を生じやすくなります。

ある新しい研究では、マウス実験にて、メチルグリオキサール(MG)というAGEを多く含む食事を与えたグループ(MG+)を、標準的な餌を与えたグループ(REG)、ならびに、その餌よりMGが特異的に少ない餌を与えたグループ(MG-)と比較しました。MG+グループのマウスには、メタボリックシンドロームの発症が見られ、脳内のアミロイドβ、ならびに認知障害が多くなっていました。こうした変化は、アルツハイマー病に見られるものです。アルツハイマー病では、特に保護作用が高いSIRT1という生存因子の活性が抑制されますが、AGEの摂取によって、これがさらに抑制されます。(Cai W. et al., Oral glycotoxins are a modifiable cause of dementia and the metabolic syndrome in mice and humans. PNAS 24 February 2014, online doi: 10.1073/pnas.1316013111.) この論文執筆者は、高齢者における高AGE値と認知障害との相関関係にも触れています。他の場合なら、マウスのデータが必ずしも人間に置き換えられるとは限りませんが、これを裏付けるデータが他の文献にもあることを考えれば、置き換えられないことはなさそうです。

また、AGEは、酸化ストレスおよび炎症の増加の一因ともなります。食事性のAGEと、糖尿病および循環器疾患を関連付けた以前の研究では、未調理食品と比較して、加熱食品では食事性のAGEが10~100倍多くなると論文に記載されています。また、脂肪とタンパク質を多く含む動物性食品は、AGEの含有量が多く、調理時にさらにAGEが形成されやすいとも示されています。一方、野菜や全粒穀物、果物など、炭水化物を多く含む食品は、AGEの含有量が比較的少なく、調理しても少ないままです。 (Uribarri J, et al., Advanced glycation end products in foods and a practical guide to their reduction in the diet. J Am Diet Assoc. 2010 Jun;110(6):911-16.e12. doi: 10.1016/j.jada.2010.03.018.)

AGEは、未調理の食品にも見られ、とくに、獣肉、全脂チーズ、熟成チーズには多く含まれます。牛肉とチーズに続いて、鳥肉、豚肉、魚、卵にも、最高レベルのAGEが含まれています。フライや乾式加熱調理(あぶり焼き、トーストなど)によってこうした食品中のAGE量が増えることは、食品がこうした調理で「茶色っぽくなる」ことからもわかります(パンの耳もその一つです)。AGEは、バター、クリームチーズ、マーガリン、マヨネーズにも多く含まれています。一方、ナッツ類は、含有量の順番ではずっと下のほうにあります。全粒パンを含む全粒穀物、野菜、果物、牛乳などは、脂肪を加えて調製されていないかぎり、AGEの含有量が最も少ない部類に入ります。
実践的ガイドライン

獣肉を全く摂らないことをお勧めしますが、摂るなら、煮るまたは蒸すという方法で調理しましょう(ベースライン値まで下がるわけではありませんが、湿式加熱によってAGEの増加率は劇的に下がります)。菜食の調理時も、バターや油など、脂肪を加えて作るのは避けましょう。AGEへの暴露の影響を避ける上で、低糖食を摂るという方法は有効であり、また、抗酸化作用のあるサプリメントを摂るという方法も役立つ可能性があります。私は、クラフトフェア(訳注:職人が作った物が売りに出される定期市)に参加するたび、揚げパンやファンネルケーキを売る商人を見て嘆かわしく思い、網焼き肉や揚げた肉と一緒にこうした物を食べている人々を見て失望します(こうしたショーでは、アーティストより食べ物売りのほうがはるかに多く稼ぎます)。






菜食がもたらす血圧/脳卒中リスクの低下

菜食には、アルツハイマー病のリスクを下げる可能性だけでなく、他にも効果もあります。新しいメタ分析では、菜食に、血圧低下との関連が見られています。この研究グループは、258の研究を分析し、包含基準を満たしているものとして、32の観察研究と7つの臨床試験を選びました。この対照試験の参加者総数は311人、32の観察研究の参加者総数は21,604人でした。 (Yokoyama Y, et al., Vegetarian diets and blood pressure: a meta-analysis. JAMA Intern Med. 2014 Feb 24. doi: 10.1001/jamainternmed.2013.14547. [印刷物に先行した電子出版])

対照試験の場合、菜食の摂取により、収縮期血圧が平均4.8ポイント、拡張期血圧が平均2.2ポイント低くなっていました。観察研究の場合、菜食の摂取により、収縮期血圧が平均6.9ポイント、拡張期血圧が平均4.7ポイント低くなっていました。上記の結果はすべて、何でも摂る食事(omnivorous diet)と比較したものでした。こうした減少率が長期間続くとすれば、心臓発作のリスクが10%、脳卒中のリスクが14%低くなる可能性があります。この程度の改善率では、超高血圧への対処方法としては十分ではありませんが、投薬治療を追加せずに対処する上で役立ちます。これに、運動やリラクゼーション療法、体重管理、サプリメントを組み合わせれば、患者が薬を全く避けることができる可能性は大いにあります。

実践的ガイドライン

植物性食品中心の食事は、体重管理にも役立ちますが、血圧管理にも効果があるというのは、こうした食事を摂る気になるもう一つの理由となります。食事における添加塩の摂取量を大幅に減らすことも重要と思われます。血圧にもっと深刻な問題がある場合に私が勧めているサプリメントは、ビタミンC(1,000~5,000 mg/日)、マグネシウム(400~600 mg/日)、コエンザイムQ10(ユビキノールを200 mg/日)、ニンニク(無臭ニンニクを500~1,500 mg/日)、ホーソン(標準エキスを250~500 mg、1日2回)、およびビタミンE(200~400 IU、γ-トコフェロールを含むもの)です。






ビタミンCのガン患者への効果

ビタミンCを用いたガン治療に関するLinus Paulingの諸研究では、進行ガン患者におけるいくつかの有意な効果ならびに寿命の延長が示されています。追跡研究の執筆グループは、Paulingが誤っていると示唆していますが、彼らは、Paulingが自己の研究で概述したプロトコルに従っておらず、Paulingの結論を全面却下したのは正当ではありません。多くのガン患者におけるビタミンCの効果を示しているもっと最近の研究がありますが、こうした新しいプロトコルで用いられた量は、当初の用量よりもはるかに多く、完全に異なるメカニズムによって作用している可能性が非常に高いと思われます。

化学療法を受けているガン患者に対し、医師は通例、抗酸化作用のあるビタミンサプリメントを摂らないよう警告します。ガンの化学療法薬の多くは強力な酸化剤として作用するため、抗酸化剤を摂ると、薬の抗ガン作用を妨げる可能性がある、というのがその理論です。理論的には筋が通っているようですが、上記の研究は、抗酸化作用のあるビタミン剤が化学療法の妨げとならないことを示しており、これらはむしろ、ガンを殺す効果を高めると同時に、副作用も軽減します(副作用は、体を衰弱させ、非常に不快な場合があります)。

抗酸化サプリメントには、生存率を高め、ガンの再発率を下げる効果もあるようです。 (Nechuta S, et al., Vitamin supplement use during breast cancer treatment and survival: a prospective cohort study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2011 Feb;20(2):262-71) この研究で、4,877人の女性について、ビタミンC、ビタミンEおよびマルチビタミン剤の使用状況を調べたところ、ビタミン剤を摂ったことがないグループと比較して、死亡率は全体で18%低く、再発リスクは22%低くなっていました。ビタミンCの使用期間が3カ月を超えていた場合は、死亡率に44%、再発率に38%の低下が見られました。また、ビタミンEの使用期間が3カ月を超えていた場合では、死亡率に48%、再発率に43%の低下が見られました。いかなる抗酸化サプリメントであれ3カ月を超えて使用していた場合は、死亡率が40%、再発率が33%低くなっていました。

以前のレポートで、進行ガン患者にビタミンC(アスコルビン酸、つまり単なるビタミンC)を点滴投与した結果を示したものがあります。1回の点滴で35~100グラムの大量投与を行うと、赤血球と局部組織がビタミンCで飽和されます。ビタミンCは、これほど高濃度になると、抗酸化剤というよりむしろ、局部的な酸化促進剤として作用するので、それによって、ガン細胞には有毒である過酸化物の局所産生が増えます。正常細胞は、カタラーゼと呼ばれる酵素を生成し、これが過酸化物の毒性を中和するため、正常細胞は、カタラーゼが欠けているガン細胞のように過酸化物の影響を受けることはありません。(経口ビタミンC剤では、こうした組織飽和をもたらすほど十分に吸収することができません。)

私の同僚であり、カンザス大学メディカルセンターに勤務しているJeanne Drisko博士は、(私と同じく)何年も前から、こうした点滴による高用量ビタミンC療法を用いており、転移性ガンがある患者の場合でも、優れた結果が見られています。彼女は、進行性卵巣ガンの患者が予想よりはるかに長く生きた事歴をいくつか報告しています。この最新の報告によると、彼女たちのグループは、人間およびマウスの卵巣ガン細胞に直接、ビタミンCを滴下しました。そうした高濃度のビタミンCによって、DNA損傷と細胞エネルギー減少による細胞死が誘発されました。これを化学療法薬(カルボプラチンおよびパクリタキセル)と組み合わせたマウス実験では、卵巣ガンを抑制し、かつ、化学療法に伴う毒性を低減するという相乗的な作用が見られました。(Ma Y, et al., High-dose parenteral ascorbate enhanced chemosensitivity of ovarian cancer and reduced toxicity of chemotherapy. Sci Transl Med. 2014 Feb 5;6(222):222ra18. doi: 10.1126/scitranslmed.3007154.)

実践的ガイドライン

従来療法の実施の有無にかかわらず、ビタミンCを点滴投与したガン患者における好結果を私も見てきました。この方法を健康的な食事ならびに他のサプリメントと組み合わせれば、化学療法の副作用を劇的に軽減できる可能性があります。用量は、組織を飽和状態にするのに要する量に基づくため、患者によって異なりますが、一般的には35~120グラムで、通常の投与頻度は、最初は週1~2回、その後は患者の反応によって徐々に減らしていきます。




マルチビタミン剤は白内障のリスクを下げる


白内障は、目の水晶体が混濁するもので、視界に曇りを生じることがあります。この混濁の原因の一つは、糖とタンパク質が結合したもの(糖タンパク質)が水晶体に沈積することです。白内障のリスクは、喫煙、糖尿病、アルコールの過剰摂取、食事性糖質の過剰摂取、および紫外線への暴露(紫外線を遮るメガネをかけずに日光を浴びすぎること)によって増加します。新しい研究によると、マルチビタミン剤を摂ることにより、白内障の形成リスクが低くなる可能性があります。

この研究は、50歳以上の男性医師14,641人を、11.2年という治療・追跡期間にわたって追跡したもので、被験者には、デイリー・マルチビタミン剤もしくはプラセボのいずれかを与えました。調査の終了時点で確認された白内障の数は1,817例で、マルチビタミンを与えたグループでは872例、プラセボグループでは945例でした。白内障のリスク低下率として、この9%という数字は統計的に有意なものでした。加齢性黄斑変性の発生率には差がありませんでした。(Christen WG, et al., Effects of multivitamin supplement on cataract and age-related macular degeneration in a randomized trial of male physicians. Ophthalmology. 2014 Feb;121(2):525-34. doi: 10.1016/j.ophtha.2013.09.038. Epub 2013 Nov 20.)

ほとんどのマルチビタミン剤は、加齢性黄斑変性の予防に役立ついくつかの栄養素を十分な量含んでいません。こうした栄養素には、亜鉛、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、銅などがあり、加齢性黄斑変性のリスクを25%下げる可能性があります。ルテインとゼアキサンチンのほうが、β-カロテンよりもさらに良いかもしれません。ビタミンB群に関する以前の無作為化試験では、加齢性黄斑変性に対する有益な効果が見られています。

実践的ガイドライン

視力を維持するためには、添加した食事性糖質を摂らないようにし、果物と野菜を豊富に含む食事を摂りましょう。フラボノイドであるケルセチンは、糖タンパク質複合体の形成を防ぐのに役立つことがあるので、私は、毎日400~1,200 mgのサプリメントを摂るよう勧めています(ケルセチンは、細胞からのヒスタミン遊離を少なくすることにより、アレルギーにも役立つ可能性があります)。高品質のデイリー・マルチビタミン/ミネラルを摂ると良いでしょう。定期的な運動は、目への血液循環を維持するのに役立ちます。日光に長時間さらされる場合は、紫外線を遮るコーティングがなされた保護メガネをかけましょう。  

2014年04月23日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2014年2月号

ヘルシーリビング


*ドクター・ジャンスンが米国において執筆しているニュースレターを翻訳したものです。日米の食文化、栄養療法あるいは規制の違いにより、日本では入手が不可能な商品についても、原文に忠実に翻訳しておりますことをあらかじめご了承ください。
*また当社はヘルシーリビングにおいて特定商品の医学的な効果効能を説明したり、批判したりする立場にはございません。
尚、ヘルシーリビングに書かれているハーブ、ビタミン類を、ご自身で摂取される場合は、個々の商品の注意書きに従って下さい。


2014年2月号誤解を招くL-カルニチン関連の研究とニュース

今月の話題
誤解を招くL-カルニチン関連の研究とニュース
パーキンソン病および多発性硬化症へのビタミンDの効果
ビタミンEがアルツハイマー病の進行を遅らせる
血管疾患を予防する地中海式食事法  続きを読む

2014年04月10日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2014年1月号

ヘルシーリビング


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2013年12月号サプリメントは安全で有効か

今月の話題:
・サプリメントは安全で有効か
・乳ガン死亡率および男性の全ガンリスクに対するマルチビタミン剤の効果
・有意な結果が得られないよう意図された研究
・食事の改善によって高齢者の生活の質が向上  続きを読む

2014年04月10日

ドクターからの『毎日健康ニュース』2013年12月号

ヘルシーリビング


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2013年12月号ポリフェノールによる死亡率低下

今月の話題:
・ポリフェノールによる死亡率低下
・リコピンは収縮期血圧を下げる
・食事でマグネシウムを多く摂ると下がる死亡率
・身体活動は心疾患のリスクを低くする
・ナッツ類は死亡率とすい臓ガンのリスクを下げる
・ニンニクの血圧低下効果  続きを読む